第48回 「支援制度がないから勉強しない」という社員の話

スキルアップ目標として資格取得の話題になったとき、会社の支援制度がないと「ではやらない」という社員が数多くいるそうですが、今は自分のキャリアを自分で考えていかなければならない時代です。

「支援制度がないから勉強しない」という社員の話

ある会社のマネージャーと面談をしている中で、「部下の人材育成」という話題になりました。
その人は技術系部門のマネージャーですが、かなり専門的な知識が要求され、仕事に直接つながるような資格がいくつもあるような仕事にかかわっている人です。

このマネージャーが自分の部下との面談で個人目標を考えるような場面では、必ず何らかのスキルアップ目標の話題になります。資格取得の話になることも多いようですが、そこで決まって部下から言われるのが、「会社として資格取得の支援はしてくれないのですか?」ということだそうです。

この会社では、資格というのはあくまで個人に帰属するものなので、もしもその人が辞めてしまえば会社には何も残らないことから、資格者が業務上の必須要件であるなど「業務命令で資格を取らなければならない」という場合を除いて、あえて金銭的な支援や時間的な配慮はしないという考え方をとっています。

マネージャーが部下に対してこの説明をすると、「そうであればお金もかかるし業務も忙しいので、資格取得に取り組む余裕はない」という人が多いそうです。「会社がお金を出してくれるならばやりますが……」というのだそうです。このマネージャーは「やはり支援制度が必要なのでしょうか」といい、会社に要望すべきなのかを悩んでいます。

これは私の経験上のことですが、このように「資格取得支援をしてほしい」と要望されて、では会社で支援制度を作ったからといって、それが効果的に働くかといえばあまりそうとはいえません。会社として見たときに業務上のメリットが少ないと思われるような、単に自分が取りたい資格であったり、ただ「取りやすいから」といった理由で資格取得に取り組んでいたりします。さらにその資格を取って会社からお金をもらった途端に辞めてしまうような人もいます。
だからといって支援対象の資格を絞り込むと積極的な取り組みは減りますし、自分の都合しか考えないような人もなくなりません。

社会人になってからの勉強というのは、少ない時間の中でよくやっていると感心するような人がいるかと思えば、そういうことは全くしないという人もいます。最近は勉強熱心な人が増えてきたことを感じますが、それでも「特に何もしない」という人の方が、今でも比率は高いです。
そういう人は、仕事にかかわることに対して、仮にそれが自分のキャリアアップやスキルアップにつながることであったとしても、プライベートの時間は一切使いたくないという考え方であることが多いです。

この資格取得や研修受講のように、会社がおこなう人材育成について、最近ではその捉え方によって実際の取り組み方に大きな違いが出てきています。
会社側の見方として、最近の傾向で見えるのは、「人材育成は投資である」という考え方の強まりです。投資であれば常に何らかのリターンを考えますから、投資効果が大きいと思われる対象に向けて集中的に実施します。

会社として「成長の見込みがある人材」の方が投資効果は高いと考えて、必然的にそちらの優先順位が高くなります。最近は階層別などの全社一律の研修よりは、テーマや受講者を限定した選抜研修の方が増えているのも、こういうことからだろうと思います。

これに対して「会社が支援してくれないのか」という考え方は、どちらかといえば福利厚生に近いものになります。社員の生活向上に近い視点であり、そこには何かのリターンが必要という考え方はありません。
「会社が行う人材育成」といったとき、会社と社員の間で一番認識が食い違うのは、たぶんこんなところなのだと思います。

ここからはあくまで私の主観になりますが、今はもう会社が社員の生活を確実に守ってくれる時代ではありません。そんな中で、仕事に関する知識やスキル向上について自分の時間は一切使わないとなると、裏を返せば仕事に関する全てのことを会社に依存していることになってしまいます。これは自律したキャリアを放棄しているということであり、そうすることのツケは結局自分自身に降りかかってきます。

私がいろいろな人にお伝えしているのは、「勉強しないで仕事をすること」は、「練習しないで試合に出ること」と同じだということです。トレーニングを一切しない中での能力向上は、会社でいえばOJTのみでの業務習得ということですが、それにはおのずと限界があります。

仕事とプライベートのけじめは絶対に必要なことですが、その一方、かたくなに「仕事は仕事」と決めつけてしまうのは、今の時代ではあまり得策でないように思います。
「会社が支援してくれないから勉強しない」では、もう通用しない時代になっています。

次回は9月26日(火)更新予定です。

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この記事の著者

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小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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