第22回 「年上が苦手」という社長のお話

経営者の仕事として、「人と会う」ということがあると思います。いろいろな知見を集めて経営に活かす、仕事につながる人脈を作る、表に現れないさまざまなことの情報収集、その他多くの意味があります。
経営者の周囲には、さまざまな思惑を持った人が集まり、それが必ずしも好ましい人物ばかりとは限らないので、どんな人と会うかには十分な注意が必要です。ただ、用心深くしているばかりでは、何も始まりません。世の中の多くの経営者は、多くの人と出会い、さまざまなつながりで付き合いを広げ、それが自社のビジネスの良い影響となるようにと、日々活動していると思います。

そんな中、もう十数年前なので私がまだ企業人事にいる頃のことですが、当時知り合った会社の社長に「年上の人が苦手」という方がいらっしゃいました。ご自身がはっきりとそう言ったわけではありませんでしたが、出入りする場所や団体、その他お付き合いがある相手を見ていると、自分よりも年上と思われる人がほとんどいません。

当時40才くらいの方でしたが、年上で付き合いがあるのは同郷の知人、仕事でたまたま懇意になった取引先、趣味を通じた友人など、ごく少数です。周りから見えないだけかと思い、いろいろと聞いてみても、やはり年上との付き合いはとても少ないようでした。

そのかわり、自分よりも5才、10才年下の人たちとの付き合いは大好きなようで、若手経営者の会などという会合に、オブザーバーとして参加したり、若い知人を集めて飲み会をやったりということを頻繁にしていました。自社に採用していた社員も若手ばかりでした。

経営者としてあまり良い傾向ではないと思ったので、私からは、いろいろな業界団体や参加できそうな会合、アドバイスを得られそうな先輩経営者などを紹介していましたが、どれもその場限りか、数回の付き合いで終わってしまって長続きしません。その後、私がコンサルタントとして独立してからも何度かお会いしましたが、基本的な姿勢は変わりません。

その理由は、とにかくご本人の性格ゆえのことだったと思います。年上相手だと、必要以上に張り合って主張してしまったり、反対に不自然に媚びてみたり、相手との距離感が一定しません。
一方、年下相手では、おおらかで頼りがいのある、気前が良い社長という振る舞いです。ただ、それは周りの人とのレベルが圧倒的に違うからであり、ちょっと批判的な見方をすれば、自分を持ち上げてチヤホヤしてくれるので、気分も居心地も良いというように見えました。

この社長と、最近久しぶりにお会いする機会がありました。当然ですが、以前とは比べ物にならない貫録と落ち着きです。昔話も含めていろいろお話ししましたが、もう当時の「年上が苦手」というような様子は全くなく、いろいろな年代の方々と幅広く付き合っておられます。

「年上との付き合いが少ないことを心配していた」という話をすると、ちょっと苦笑いをしながら、「ホントにそうでした。でもこの年になってようやく、相手の年令がどうかということが気にならなくなりました」とおっしゃっていました。やはりご自分でも苦手意識があったようです。

この社長の場合、自分が経験を積んで周りといちいち張り合う必要もなくなり、自分が一番年上になってしまうことが増え、年上の人間が周りに少なくなり、年月が経つなかで自然と苦手意識はなくなっていったようです。ただの結果論なのかもしれませんが、時間の経過や年齢を重ねることで、自然に解決していきました。

こういう苦手意識は、直そうと頑張る人もいますが、苦手な人が無理して取り組んでも、なかなか結果につながりません。あえて無理をせず、手を下さずに成り行きを見守る方が良い場合があるのは確かです。
そもそもは、「経営者は広い交遊を持たなければならない」という、私の思い込みから始まったことですが、実はこれが一番よくないことだったのかもしれません。

次回は7月28日(火)更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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