第70回 「改革、改善の取り組み」が進みづらい理由と進める方法の話

新しい発想の取り組みが重視されるようになっている一方で、保守的な意識から改革がなかなか進まないという話もよく聞きますが、新しいことを始めるためには考えなければならないことがあります。

「改革、改善の取り組み」が進みづらい理由と進める方法の話

変化が激しい環境の中、過去にとらわれない新しい発想による取り組みが重視されるようになっています。その一方で、変化に向けた取り組みが、なかなか進まないという様子も耳にします。

そんな中、ある会社の社長から、こんな話を聞きました。
自社の社員に「改革しようという意識が足りない」と言います。ミーティングなどを通じていろいろ促しても、提案制度のような仕組みを作っても、そういった行動や提案がほとんど出てこないそうです。どちらかというと「変化」を嫌がり、何とか現状維持で済まそうとしているように見えるとのことで、「この保守的な姿勢を何とか変えられないか」とおっしゃいます。この社長がいうような「現場が変化をしたがらない」という問題は、実際よく目にするところです。

ただ、こちらの社員から話を聞くと、この「変化を好まない」「保守的」という様子とは、少し違った印象です。
仕事上の問題や改善方法などは、みんなそれぞれに考えていて、必ずしも現状維持を望んではいません。「こうすれば間違いが少なくなる」「こうすればもっと効率的にできる」という話がいろいろ出てきます。
そこで「なぜそのことに取り組まないのか」と尋ねると、「今の業務をこなすことに精いっぱいで、とにかく時間がない」と言います。よくある言い訳のように思ってしまいますが、実際の仕事ぶりを見ていると、確かに余裕のなさが見て取れます。人員不足、手順や手続きのムダ、スキルの問題など、いろいろな要素がありますが、手すきでサボっているような人は誰もおらず、一概に言い訳と切り捨てられる感じではありません。

この会社の仕事柄として、毎日コンスタントに正確な生産物を提供しなければならない業種であるため、どうしても「その日の仕事を正確に確実にこなすこと」が最優先される傾向があり、他のことに取り組む余裕が、時間的にも精神的にもないようです。
この様子を社長に伝えると、「それは工夫がないから」「効率が悪いだけ」と言い、あくまで当事者たちである社員たちの意識の問題と見ているようです。そうやってすくみ合ってしまっているために、お互いに身動きが取れなくなっています。

こんな様子を見ていて、以前あるところで聞いた「新たな取り組み」に関する話を思い出しました。
それは、「何かやめたいことがあるならば、やめた部分を埋める新しいことを始めなければならないし、何か新しいことが始めたいならば、今までやっていた何かをやめなければできない」というものです。
この時は“禁煙”が例として出され、「たばこをやめようと思ったら、それまで吸っていた時間を何かで埋めなければやめられない。だからガムをかんだり飴をなめたりすることで、その時間を埋めようとする」とのことでした。

私がなるほどと思ったのは、その逆に新しいことを始めようとするときの話で、「みんな新しいことは積み上げ、上乗せばかりで考えるが、与えられている時間は有限であり、“始めること”と“やめること”をセットで考えなければ、新しいことはなかなか始められないし、始めても続けられない」といっています。

考えてみると、私はここ最近、仕事や執筆などで自宅でも机に向かう機会が増えましたが、その代わりにテレビを見る時間が圧倒的に減りました。
いつも懇意にしている社長とたまたま話していた中で、この社長は「最近ちょっと面白いゲームにはまってしまい、読書する時間が減ってしまった」と言っていました。「勉強するために睡眠時間を削る」などというのも、たぶん同じようなことでしょう。

一言で言ってしまえば、物事の優先順位づけですが、この「何かを始めるには何かをやめる」ということは、実は多くの人が無意識のうちにやっています。逆に今までやっていたことを何一つやめられなかったとしたら、きっと何か新しいことを始められなかったり、始めても続けられなかったりするでしょう。

ここで思うのは、「何かをやめること」が意識的におこなえば、「新しく始めること」に取り組める確率が上がるだろうということです。
前述の会社でも、今までやってきたことから「やめられるもの」「捨てられるもの」を先に考えると、「新しいこと」への取り組みは意外に進められるように思います。
実際にそうやって促してみたところ、今までの動きとは少し変わってきたようです。

ちょっと視点を変えるだけで、人の行動は変わります。「新しいことを始めるには、まずやめられることから考える」というのは、改革、改善意識を行動につなげやすくする、意外に良い考え方ではないでしょうか。

次回は7月23日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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