第9回 上手な現場教育に取り組んでいる工場の共通点

みなさま、こんにちは。今回は現場教育についてご紹介したいと思います。

現場教育と聞いてどのようなことを思い浮かべますか?
安全教育や新しい機材、工具の使い方教育、保全教育、作業方法に関する教育、改善のための教育などさまざまな教育が現場で行われていることと思います。
ここでは現場での「技(わざ)」の教育についてご紹介します。

上手な現場教育に見られる特徴1…技を「技術」と「技能」とに分けて捉えている。

諸説ありますが、我が国では明治時代までモノを作る能力を「技(ワザ)」のある、なしで判断していたそうです。
(技があるから、よいものが作れる。技を身に着けるなど。)
その後、生産現場の西洋化が進み「技」は「技術」と「技能」とに分かれました。(図1)

図1:技術と技能

古来より技は人から人へ伝承されてきました。いわばコミュニケーションと経験とで伝承されてきたと考えられますが、機械に対してのコミュニケーションは機械への指示で行いますし、機械には経験による情報の蓄積は望めません。
したがって、技の中から機械に指示できることを行っていった結果、技の体系化の過程で「技術」ができ、機械に指示できない(人にしかできない)「技能」に分岐したのではないかと考えられます。

技術、技能ですが一言でいえば以下のようになります。
「技術」は数値化、可視化ができるもので、学習による蓄積ができる。
「技能」は数値化、可視化ができない(難しい)もので、経験でのみ蓄積できる。

教育が上手な現場では、現場の「技」を技術と技能に分けて、技術をしっかり伝えています。
そして、現場における「技」の技術・技能の比率を知り、効果的な教育内容を検討することも重要です。
あるクライアント様(自動車部品製造)では技術7割、技能3割であり、現場の作業レベルを5段階とした場合
1(初心者)~3(一般)までは、ほぼ全てが技術要素であり、4(上級)、5(熟練)となるにしたがって技能の比率が高くなります。
この現場では技術、技能の比率を意識して教育を行ったことで、一般レベルまでの現場教育は従来の半分程度の時間で行えるようになったとのことでした。

後で触れますが、技術が得られて、初めて技能を向上させることができるので、技術伝承は非常に重要です。

上手な現場教育に見られる特徴2…「技術」を分かりやすいコンテンツにしている。

例えば、熟練者が行っている技術を伝えるために行う方法として、初心者と熟練者の比較を行うことがあります。
文字だけのマニュアルではなく、動画を使って両者の比較をすることで(図2)より短い時間で理解を深めることができます。

(図2:「OTRS10」での動作比較の例)

上手な現場教育に見られる特徴3…特に伝えたい「重点」を明確にしている。

現場での作業はいくつもの動作が組み合わさったものです。可視化されている技術であったとしてもその情報量が多すぎると理解が難しいものになります。
対象となる作業の中でもポイントとなる動作を見極めて、ピンポイントで教育することが短時間での技術伝承には重要です。
熟練者と比較し、最も動作時間に開きがある作業をポイントと定める方法もよく使われています。(図3)

(図3:「OTRS10」での比較分析<時間差の大きな動作の分析>)

上手な現場教育に見られる特徴4…コンテンツ作りに時間をかけない。

技術は可視化できると説明しましたが、実際に分かりやすいコンテンツにするには手間がかかります。
動画での教材は字幕を入れたり、作業要素ごとに編集したりしますし、作業マニュアルでは文字だけでなく写真を入れることも多くあるでしょう。こういった作業を手書きや表計算ソフトなどで行うことを見かけることがありますが、パソコン操作に費やす時間は(製造において)付加価値のない時間=ムダと考えます。
「OTRS10」はビデオ取り込みから、動画コンテンツ、作業マニュアルの出力まで一貫して行うことができるので、コンテンツ作りのムダを削減することができます。

上手な現場教育に見られる特徴5…技能伝承も視野に入れた技術伝承を行う。

技術と技能は混ざらないようにする。と先に書きましたがそれはあくまで教育を行うときのことです。
熟練者の動作を記録するときにちょっとした工夫で、技術以上の情報をコンテンツ4化することができます。
その工夫とは、音声の収録と動作と紐づけた文字記録です。

音声の収録
方法1…自分の動作について話しながら作業してもらい、考えを言葉として表現してもらう。
方法2…記録した動画を動作ごとにインタビューし、言葉として表現してもらう。

動作と言葉の紐づけ
音声で分かったこと、発話の内容などを動作シーンに紐づけて記録する。(図4)

得られた言葉は暗黙知から発せられたものです。暗黙知の全てが形式知化することはありませんが、いわゆるカンやコツを理解するには適した方法であり、これを通じて、暗黙知の一部が他の作業者に説明できる状態になります。

(図4:「OTRS」コメント機能<動作と文字を紐づけることができます>)

トヨタ生産方式(TPS:Toyota Production System)に取り組まれている現場では「作業標準表を自分の手で作成する」ことを実践されていると思います。TPSでの標準作業表には暗黙知から得られた情報を記載し、形式知化、データ化し、共有する仕組みになっており、ここで紹介している「OTRS10」を使った「言葉と動作を紐づけること」も同様の実践内容です。

暗黙知と形式知での例え話

たとえば、長嶋監督みたいにね、「ガーンといけ」「バーンといけ」というのではなく、野村監督のように、「どうしたらヒットが受けるか」「グリップの位置はどうこう」といった「ID野球」などは、見事なまでに、みずからのノウハウ(暗黙知)を言語化(形式知化)した例だと思うのです。
(「自分の“もやもや”をはき出すことが次の一手に──野中郁次郎一橋大学名誉教授×青野慶久」(サイボウズ式)より引用※1)

分かりやすい例えですね。野球も製造もよい結果を出すためには、技術を理解し、そのうえで理解した技術を使いきるスキルを身につけて、発揮することが必要です。

このスキルこそ「技能」です。
人間のものづくりにおいて技術とは切っても切り離せないものであり、伝えることが難しい(属人化しがちな)です。

技能伝承を行ううえでの課題
少し古いデータですが、製造業での技能伝承を扱った資料(図5)がありますのでご紹介します。

図5:技能継承に関するアンケート調査 平成17年10月名古屋商工会議所資料※2より作成

この調査では、技能継承(伝承)を行ううえで指導人材の不足、育成する時間的余裕がないなどリソース不足が挙げられています。

リソース不足であっても上手に現場教育に取り組んでいるケースでは、ITを上手く活用されています。

IT活用で技術伝承にかかる時間を短縮し、経験やコミュニケーションを必要とする技能伝承を進める、記録化してゆくことが、自社の競争力の源である技術優位を保つ秘訣であると考えます。

今回紹介したケースを参考に、皆様の現場改善が進むことを願っています。

引用
※1……https://cybozushiki.cybozu.co.jp/articles/p1422.html
※2……http://www.nagoya-cci.or.jp/koho/chosa/succession.html

次回は12月8日(木)更新予定です。

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