ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
第22回 運送業のデジタル化策について~(9)自動配車機能~
大手メーカーのTMSに実装されていた自動配車機能が、近年アップデートされ導入を検討されることが多くなってきました。どのような考え方で、どのような使い方をすべきか、考えていきたいと思います。
運送業のデジタル化策について~(9)自動配車機能~
前回のコラムでは、運送業の出退勤ツールについてお話をしました。
運送業の方々に「出退勤の時間はしっかりと取られていますか?」と聞くと大半の企業では、「できています。デジタコで出庫と帰庫の時間を取っているので」と回答されますが、それだけではダメということでしたね。「出庫と帰庫」だけではなく、「出勤と退勤」の時間もしっかりと記録しましょう。
今回は、運送業のデジタル化策で「自動配車機能」についてです。
一昔前に大手メーカーのTMS(Transport Management System:輸配送管理システム) に実装されていた自動配車機能ですが、近年アップデートされた機能が世の中にリリースされ、導入を検討されることが多くなってきた機能です。どのような考え方で、どのような使い方をすべきか、考えていきたいと思います。
まずは80点の配車計画をシステムでつくる
「今まで人間が勘と経験でやってきたような配車をシステム化する」、自動配車機能の初期目的はここにあるでしょう。配車業務は、荷主、ドライバー、道路状況、費用、納期など、さまざまな検討要素があり、また会社の経営方針によっても「配車のクセ」が変わります。そのクセを理解しているのが、その会社の配車担当者であると考えてよいと思います。
- この納品先の次には、どの納品先に行くことが多い
- この納品先ではどのくらいの待機時間がある
- 空の◯◯を引き取らなければいけない
- 前日にこの納品先に行ったあとは疲れているから、あの納品先は配車しないほうがいい
- あの納品先に行ったあとには、緊急で◯◯の仕事が出る確率が高いから、一時的に空車にしておこう
考え出したらきりがありませんが、文字に起こせるということはルール化できると考えてもよさそうです。ただし発生確率が高いという理由で、配車材料に挙げられていることもありますし、全ての検討要素がそもそも正しいとも限りません。そのような配車材料を全て検討していると、「やっぱり自動配車はウチには合わないなあ」という話になってしまいます。
そのため、まずは自動配車機能を動かすために必要な要素だけを取り込み、ルール化してみることからスタートしてみるとよいでしょう。それだけでも定形の配車計画(いつも決まっている配車のパターン)の80%は完成するのではないでしょうか。
メリットは計画作成の高速化と、属人化脱却
80%できると下ごしらえは完成です。次の20%は味付けの段階に入りますから、入れ替えたり、追加がある場合は差し込んだりという作業では社内ノウハウの出番になります。下ごしらえがしっかりできていると、あとはどうしたらいいかという話が理解しやすくなりますので、配車係の引き継ぎや教育が行いやすくなります。最も時間がかかる大きな枠組みの配車計画の作成が数分の1の時間でできるようになり、とても合理的です。これが自動配車機能を活用するメリットの一つだと思っています。
また、昨今の自動配車計画システムは、過去のそれよりも格段にレベルが上がっています。AI的な「最適化」のレベルが違います。これによって残りの20%の範囲もITの提案を受けることができます。ぜひ一度活用していただきたいツールです。
ただ前述のとおり、配車業務は、荷主、ドライバー、道路状況、費用、納期、緊急性など、さまざまな検討要素がありますから、100点満点を出すことは難しいかもしれません。しかし、まずはシステム化へのチャレンジを早く行うことで将来の100点にどんどん近づいていくことは間違いありませんね。
次回は6月3日(金)更新予定です。