第23回 運送業のデジタル化策について~(10)中小運送業のデジタル化度合い~

前回は、自動配車機能の現実的な活用方法について解説しました。今回は、中小運送業でのデジタル化について検討します。なかなか進まない状況にあるデジタル化の背景には、大きく二つの理由があるようです。

運送業のデジタル化策について~(10)中小運送業のデジタル化度合い~

前回のコラムでは、自動配車機能の現実的な活用方法について話しました。

配車業務は、「組み合わせ最適化」という数学的な要素と、配車係・荷主・依頼先・納品先・ドライバーとのコミュニケーションによるアナログ的な要素の二つからなる多元的な解になります。そのため100点満点を取るのが難しい業務です(そもそも100点満点は各社によって違うでしょうし)。だからこそ100点を狙った配車システム導入ではなく、決まったパターンを組み合わせてすばやく整理・整頓し、まずは80点の答えを出して、そこに味付けをしていくという流れがおすすめです。現在、市場に出ている配車システムだと体感90点以上出るかもしれませんね。

現時点では中小の運送業にはデジタル化が必要ない?

中小運送業の事務所では「DX」以前にデジタル化が進んでいません。そこには大きく二つの理由があるようです。

一つは事務職のITリテラシーが低い場合が多いということ。
Excelを基本レベルで使うことができる人材がいない事務所もあります。基本レベル以上で使えるのであれば、その発展ツールである、ノーコードアプリ(最近のはやりのデジタル化推進ツールで、これはプログラムを書くことができなくても、簡単な操作でアプリケーションが作成できるというツールです)を使うという展開もできますが、ちょっとハードルが高いですね。
使えればさまざまな台帳、集計表などを、誰にでも使えて共有できるツールを作成することができるのですが、逆の見方をするとExcelなどの表計算ソフトを使える人が入社するだけで大きく流れが変わるかもしれません。

もう一つは、顧客からの業務の依頼や、顧客への報告がFAXや電話の場合が多いことです。
つまり、現時点ではデジタル化する必要がないということです。それで十分に業務はこなせていますし、今、ペーパー管理しているものをデジタル化したところで、人数も変わらないしデジタル化すること自体が手間だという結論に至ってしまうのです。

しかし近い将来は、この状態では困ることになりそうです。

顧客、協力会社のデジタル化が進んだときに、自社はどうあるべきか

  • 顧客からは業務依頼がCSVデータで飛んでくる、メールに添付されてくる
  • 顧客、荷主への報告はデータテーブルの状態にて、CSV形式で報告するようにと指示される
  • 協力会社からも業務依頼は、データでくださいと言われる
  • 納品が完了したら、受領(じゅりょう)データと完了報告を30分依頼以内にしてくださいと言われる

近い将来、こういった依頼は普通にありそうです。周囲の企業のデジタル化が進むと、自社も合わせざるを得なくなってきます。

上記の内容は取引条件にも指定されることがあるかもしれません。そのような環境になったときに、すぐにデジタル業務に変化するのは至難の業ですし、人材もすぐには育ちませんし、入社もしてきません。だから今のうちにデジタル化のスタートを切っておく必要があるのです。

デジタル化は今なら60~80点で良い

どんなシステムを活用するときでもそうですが、始めからシステム導入結果に100点満点を期待すると、期待はずれになることが多くなります。物流に関連する業務では、特にそのように感じるのではないでしょうか。業務のインプット、アウトプットに紙ベースの業務が多いからです。これはデータにできても、これはお客さんがFAXで送ってくるからだめだ、みたいな感じになります。

前述したように、今は周囲が対応できていなくても、近い将来は必ず周辺の企業もデジタル化が進みます。そうなったときに、「最もデジタル対応力が高い会社になっている」、それを目指すべきではないかと思います。

次回は6月17日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社AppLogi 代表取締役

廣田 幹浩

国内大手コンサルティング会社SCM&ロジスティクスソリューショングループ グループマネージャー職を経て現職。300社を超える荷主向け物流効率化、数100社超の運輸・配送関連経営コンサルティングの実績をベースとして、2018年に株式会社AppLogiを設立。最新の運輸・配送関連クラウドアプリケーションを提供する。
株式会社AppLogi

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