第24回 運送業のデジタル化策について~(11)中小運送会社のDX化された状態を想像してみる~

前回は、中小運送業のデジタル化度合いについて解説しました。今回は、DX化された状態を想像してみます。デジタル化、DXはなんのために行うのでしょうか。

運送業のデジタル化策について~(11)中小運送会社のDX化された状態を想像してみる~

前回のコラムでは、中小運送業のデジタル化度合いについてお話しいたしました。

運送業の現場では、「事務職のITリテラシーが低い場合が多い」「顧客からの業務の依頼や、顧客への報告がFAXや電話の場合が多い」ということから、デジタル化すること自体が必要ないと感じられている企業が多いのが実情です。ただ今はそれで良くても、顧客、協力会社のデジタル化が進んだときに、周囲の企業についていけなくなることが懸念されますので、今から始めておきましょうというお話でした。

今回は、中小運送会社のDX化された状態を想像してみる、というテーマでお話ししたいと思います。

デジタル化は生産性向上のため

これからの日本社会は、人はいないけど、速く、かつ多くの業務を行うという、職場の「生産性向上」が求められます。これは少子高齢化時代の到来に起因する人不足が大きな要因ではあるものの、そもそも日本は諸外国と比較し、生産性が低いといわれてきました。これはIT導入率の低さも起因しているようで、中小企業のIT導入率は約60%で、残り40%の企業は非実施で検討もしていないというアンケート結果もあるようです。

しかしながら、人不足は現実に目の前にあって、かつ働く時間がきびしく制限される今では、このままの状態ではいけません。「生産性向上」策が必要です。手間のかかる集計や、属人化されている業務を仕組み化・自動化・高速化していかなければ、企業がどんどんブラック化し、人の採用もままならなくなってしまいます。そうならないためにも、IT導入は経営の必須課題となります。IT導入は仕組み化、業務の自動化・高速化そのものですので。

その準備段階として、紙で行っている業務をデータ上で行えるようにデジタル化することが必要です。まずはデータで仕事をすることに慣れるということが大事です。それができていくとIT化しやすくなってくるため、このあとは「省人化」「スピードアップ」につながっていきます。少ない人数で速く、かつ多くの業務が処理できるようになります。

デジタル化、つまるところDX化はなんのためにやるのかと聞かれると、業務の「省人化」と「スピードアップ」ということになるのではないでしょうか。

中小運送会社のDX化を想像してみる

ちょっといろいろと想像してみましょう。もちろんこれだけではないですし、私の思い付きであることはご承知ください。

1.配車業務

  • 受注オーダーをお客様がWeb画面に入力、配車可否の回答はWeb上またはメールで自動返信。メールの場合はWeb画面に自動取り込み
  • 確定したら勤務予定データの出勤予定になっているドライバーで、かつその納品先の納品履歴データを確認し、対応可になっているドライバーから配車引当していく
  • 配車が確定したら、予定配車データとしてドライバーのスマートフォン(スマホ)アプリに送信
  • ドライバーが確定を押すと配車確定→当日は位置情報等の動態管理機能で状況確認。納品完了後は受領書の画像データを添付して納品完了報告

などなど

2.車両管理

  • 車両台帳の情報をデジタル化
  • 車検、点検、オイル交換、ローテーションなどの管理は全てプッシュ通知による管理
  • 整備工場への入庫通知と、ドライバーへの通知もプッシュ通知
  • 走行距離データ、給油データから燃費データを管理
  • 燃費が悪くなってきたらダッシュボードへアラート発信

などなど

3.経理業務

  • 配車完了済みデータから請求データへ変換。料金未完了の配車データはダッシュボードで管理
  • 料金データが全てOKになっていたら、請求書を自動作成(送信ではない)し内容を確認して、送信ボタンを押したら、メールに請求書のPDFが添付されお客様担当者へ送信
  • 入金がされていない請求書はダッシュボードにアラート発信

などなど

4.給与計算

  • 勤怠管理をスマホアプリで管理(出勤日数、残業時間)
  • 特定の日になったら給与明細を自動作成(確定ではない)。担当者が内容を確認し、社労士さんにデータ送信、社労士さんが内容を確認後、確定ボタンを押すと給与明細がドライバーの指定したメールアドレスに送信される

などなど

まだまだいっぱいありそうです。

ここでの話の前提は、全てがデータで流れていることです。これをしようと思うと、やはりデジタル慣れしておく必要がありますね。

目指すは事務職一人体制

事務仕事はルーティン業務が多くを占めます。一つ一つは大変な業務が多いですが、前工程と後工程とをよく分析すると、なくせる業務が見えてきます。よく分析したときに見えてくるボトルネックで、よくあるのが「所定の用紙に書いてある内容を〜する」というものなのです。

これをなくすことができれば業務は一気に遅滞なく流れていきます。突き詰めると事務職一人で全ての業務をまかなえるようになるかもしれませんね(お休みをとるのも忘れずに)。

次回は7月1日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社AppLogi 代表取締役

廣田 幹浩

国内大手コンサルティング会社SCM&ロジスティクスソリューショングループ グループマネージャー職を経て現職。300社を超える荷主向け物流効率化、数100社超の運輸・配送関連経営コンサルティングの実績をベースとして、2018年に株式会社AppLogiを設立。最新の運輸・配送関連クラウドアプリケーションを提供する。
株式会社AppLogi

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