第25回 運送業の2024年問題について考える~(2)「2024年問題」にも関連する未払い残業訴訟問題~

前回は、中小運送会社においてDXが浸透した状態を想像しご紹介しました。今回は、「2024年問題」にも関連する未払い残業訴訟問題についてお話ししたいと思います。

運送業の2024年問題について考える~(2)「2024年問題」にも関連する未払い残業訴訟問題~

前回のコラムでは、中小運送会社のDX化された状態を想像してみようというお題で考えてみました。
運送業のDXの行き着くところは事務作業「0」。しかしながら、さすがに人の対応を0にすることはできませんので、目指すは「事務職一人体制」というところで話を落ち着けてみました。全てがデータで流れる体制ができ上がるのならば、想像することができますね。

今回は、もっぱら業界内で話題の「2024年問題」にも関連する未払い残業訴訟問題についてお話ししたいと思います。

2024年問題より前に、運送業界で深刻な「未払い残業問題」

まず、2024年問題についてですが、これは一般業種に約5年遅れて運送業にも適用が開始される働き方改革法、その中でもとりわけ影響が大きいといわれる、残業の上限規制が年間960時間となることによって発生する課題の総称です。

どのようなことが発生するかというと、

  • 行政処分事業所の増加による輸送車両台数の減少
  • 残業時間の上限規制が原因で発生する輸送車両台数の減少

上記によって「物流が止まる」という懸念と、

  • 大規模な料金改定

による物流コストの増大が懸念されます。つまり、現状のトラック運転手の業務は長時間労働であるから、ほとんどの運送会社では対応できなくなるのではないか、ということです。これに対応するために運送業各社は管理体制の強化を行っているところです。

この問題は確かに大事なのですが、その裏ではもっと大問題が既に発生しています。
未払い残業問題です。歩合やさまざまな手当をドライバーに支給をしているけれど、残業手当は支払っていなかったという企業が、ドライバーから過去3年分の残業手当を請求されるというものです。
長時間労働でかつ、1日の出退勤があいまいになりやすい運送業ですが、残業時間という捉え方の概念が薄く、残業時間を計算している会社は多くありません。

つまり、2024年問題に対応するために残業時間を960時間以内に抑えなければならないということより先に、残業時間を管理するという最初のハードルを越えなければいけないのです。残業時間をちゃんと付ける、というところから始めないといけないということですね。

未払い残業代訴訟(時効)はいずれ5年になる

実はこの未払い残業代訴訟(時効)は、検討段階では「5年」で話が進んでいたそうです。

  • 労働者側は「5年」を主張
  • 経営者側は「2年」を主張

その結果、間を取って「3年」という対応を国は行っています。ただこの3年は「経過措置」の対応になっていて、「未払いなどの請求期間は当面の間は3年」「施行5年経過後の状況を勘案して検討する」と発表されています。いずれ5年になると思っていた方がよいでしょう。

残業代訴訟の時効は2年から3年に延長され、既に3年の対象期間に入っています。今後は5年に延長されることを考えると、2024年問題ではなく2022年問題といっても過言ではありません。

2024年問題、未払い残業問題の共通点は「出勤時間と退勤時間」の明確化

既に本コラムで掲載していますが、運送業では出勤時間と退勤時間があいまいになりがちです。繰り返しですが出庫時間と帰庫時間は厳密にいうと、出勤時間と退勤時間ではありません。この箇所から見直す必要があります。ここの時間を確認できるようにし、正確な時間を把握できなければ、実は2024年問題には対応しようがないのです……。まだ十分に間に合います。

次回は7月15日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社AppLogi 代表取締役

廣田 幹浩

国内大手コンサルティング会社SCM&ロジスティクスソリューショングループ グループマネージャー職を経て現職。300社を超える荷主向け物流効率化、数100社超の運輸・配送関連経営コンサルティングの実績をベースとして、2018年に株式会社AppLogiを設立。最新の運輸・配送関連クラウドアプリケーションを提供する。
株式会社AppLogi

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