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第26回 運送業の2024年問題について考える~(3)運賃高騰問題
前回は2024年問題と、2024年問題より前に既に発生している「未払い残業問題」についてお話ししました。実は2024年問題は「運送業の給与規定改定問題」とも言い換えることができます。今回も同様に2024年問題の周辺で発生する問題について検証していきます。
運送業の2024年問題について考える~(3)運賃高騰問題
前回のコラムでは、物流関連業界で取り沙汰されている2024年問題について、2024年問題より前に既に発生している「未払い残業問題」についてお話ししました。よくよく考えてみれば、「残業の上限時間が決まる」ということが問題の本質なのに、残業時間が算出されていないという根本的な問題があることを理解できると思います。よって2024年問題は「運送業の給与規定改定問題」ともいえるのではないでしょうか。
今回も同様に2024年問題の周辺で発生する問題について検証していきたいと思います。
2024年の最悪の状況は「運べない」、一般的な状況では「運賃値上げ」
「運べない」この最悪な状態に陥る場合は、運送会社のドライバー(個人)が年間960時間の残業時間のリミットを超え、そのドライバーが業務を停止せざるを得ない状況になることです。
働き方改革法では月間の残業時間の上限は規定されていませんが、年間の上限は960時間までと規定されています。だからといって100時間の残業が毎月続いていたら、10カ月後には1,000時間近くとなり、後の2カ月は運行できないことになります。このドライバーの代わりのドライバーがいなければその業務は停止することになります。さすがにその仕事はその人しかできないということではいけないので、このあたりの対処は各社検討しているとは思います。
しかしながら、運送会社のドライバーが30人在籍していて20人がその状態に陥っていたら、会社として業務を受けられないことになります。この状態になると、これは大変です。しかし、この状態に近くなることが想定されるのが2024年問題です。そうならないために運送会社が考えなければならないのは、増員によって規定時間内に残業時間を薄めていくことです。この残業時間を薄めるということは一人一人の残業時間を減らす、つまり残業手当を減らすことです。
運送会社のドライバーの給与平均は、インターネットの情報からでは380万円、実際には400万円~450万円ぐらい、長距離が多いドライバーだと600万円前後でしょうか(当社統計より)。業務内容から考えると決して高い収入とはいえません。当然ここには残業手当も含んでの総額ですから、ここから減額されるとなると離職の増加が懸念されます。必然的に運賃値上げの基調になりそうです。
しっかりと時流適用しようとしている運送会社は、2024年までに値上げを検討
当社では数百社の中小運送会社さんへ労務管理アプリケーションを提供しており、ちゃんとやろうとしている運送会社さんに使っていただいていると思っています。2024年問題への対応について質問すると、皆さん決まって言われるのは「適正運賃化」「値上げ」という回答が返ってきます。ちゃんとやろうとすると費用はかかって当然だ。しかし、あまり高額な運賃値上げを荷主にお願いしなくてもいいように、今、管理を強化しているということなのです。
ここからいえるのは、2024年問題対応で全国的に運賃は上がることが予想されます。しかしながら、しっかり対策をして管理レベルを上げてきた運送会社については適正運賃への改正を要求するでしょうし、全く管理していない、もしくは管理を諦めた運送会社については「動けなくなる」「高額な運賃値上げ」といった選択肢になってしまうことが想定されます。
どちらになりそうなのか、どうすべきなのか、荷主サイド、運送会社サイド、双方よく検討していかなければいけません。
次回は7月29日(金)更新予定です。