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第27回 運送業のデジタル化策について~(12)運送業DXの本質はアナログ対応を増やすこと
前回は、2024年問題の周辺で発生する問題について考察をしました。今回は、運送業のDX、特にアナログ対応の重要性について検討していきます。
運送業のデジタル化策について~(12)運送業DXの本質はアナログ対応を増やすこと
前回のコラムでは、物流業界の2024年問題に関連して発生するであろう運賃高騰問題についてお話しさせていただきました。2024年から運送業に適応される働き方改革法が遵守できず、行政指導が入る運送会社と、問題にしっかりと時流適用しようとするために値上げを検討する運送会社と大きく二つに分かれるのではないかという話でした。
何はともあれ猶予期間(一般業種に対して開始に5年の猶予があり2024年からスタート)があるわけですから、法を遵守する方を選択しなければいけません。体制を見直し、給与体系を見直し、意識を見直す必要があります。大変ですが、あと1年半あります。がんばりましょう。
今回は久々に運送業のデジタル化策についてです。一段上に上がって運送業のDXについてお話ししようと思いますが、行き着くところはアナログ対応を増やすことが成功要因のようです。
DXの本質は業務の高速化と効率化
あらためてDXとは、Digital Transformationの略です。
Dが「Digital」なのは分かるが、Xは何なんだという方のために→「X≒Trans」という意味らしいですね。Transは交差するという意味があるため、交差を1文字で表す「X」を使うようです。かっこいいですね。
このDXですが、デジタル技術を活用して業務を改善していくことです。業務を改善していくことは、スピードアップ、品質アップ、原価低減などを指しますので、業務の高速化と効率化ともいえるでしょう。うまくDXできると、受注→計画→運用→集計→共有など、業務の一連の流れがデータで一気に流れていき、業務がどんどん効率化されていき、仕事そのものの精度とスピードが高まっていくことになります。やらない理由はありません。
ではそのあとは、どうするのでしょうか?
個人の力量は高くなくてもよいのかというとそうではありません。DX化は業務が効率化されるのですから、生産性が高まっていく構造です。
つまり、個人個人の観点で見ると楽になるのではなく、きつくなるはずです。そのため個人のレベルも上がっていかないとついていけなくなります。つまり個人に対してはDX化された業務のスピードに対応していく設計力、報告・連絡・相談のタイミング、そして指導力といったコミュニケーション力がより必要となってくると考えられます。実はDXは個人にとってはきついものなのです。
アナログ(リアルコミュニケーション)の時間が重要
個人を鍛えるには、やはり直接指導です。業務の内容はマニュアルで教えることはできても、考え方は人間が教えた方がうまくいくと思います。そのため、DX化で効率化された時間をアナログ(リアルコミュニケーション)に使い、指導の時間を増やす。こういった取り組みが主流になってくるのではないかと思います。
静岡県にあるY運送は、SaaS、スマートフォンアプリ、そしてGoogleのアプリケーションを組み合わせ、業務スピードの向上に挑戦している運送会社です。
可能な限り手書きの業務をやめ、業務の初期段階からデジタルデータ化された業務の流れをつくって合理化を図っています。そのため、2024年問題はあまり不安がないとのこと。素晴らしいですね。
また、新しいツールへの取り組みも非常に積極的です。一般的に新しいことばかりやり続けると社内で反発が起こりそうなものですが、Y社では新しいものへの受け入れ体制ができています。
その理由は、DX化でできた時間をアナログ(リアルコミュニケーション)に使っているから。なぜこれをやらないといけないか、将来どういう体制で業務を行っていくべきかを伝え、また新しいツールに対する知識、そのようなものをインプットする時間をしっかりと確保しています。これはとてもよい流れだと感じています。
この流れができた後で強い武器(IT)を与えると、期待値以上の効果が見込めます。なぜなら理解して業務を行った場合、1.6の二乗倍の力が出るといいます。
仕組みを運用する個人の方が重要という一般的な話のようにも聞こえますが、DXを開始するときにはこういったコミュニケーションの時間を増やさないといけないということはルール化できそうですね。
次回は8月12日(金)更新予定です。