第31回 運送業の改善基準告示対応~(11)改善基準告示内容が変更に~

前回のコラムでは、「デジタル人材の活用」についてのお話をしました。今回は、運送業にとって大切なルール、改善基準告示の内容が変更になるというニュースが入ってきましたので、説明しておきたいと思います。

運送業の改善基準告示対応~(11)改善基準告示内容が変更に~

前回のコラムでは、「デジタル人材の活用」についてのお話をしました。
ポイントはその人材のデジタル知識が高いことが重要ではあるが、そもそもデジタル人材の意見を受け入れられるかどうかのほうが大切というところでした。仕事、人付き合い、習慣、何にでも言えることですが、そもそも生き物はパターン化された行動を崩すことを嫌がりますから、正常な反応であることは確かです。しかし人間社会は進化のスピードが速いため、無理やり変化することが求められます。デジタル環境の場合は、主義主張や思想ではなく、便利になって他人も効率が良くなるものですから、まずは受け入れることから始めないと全体最適になりませんね。

さて今回は、運送業にとって大切なルール、改善基準告示の内容が変更になるというニュースが入ってきましたので、説明しておきたいと思います。

今一度、運送業の「改善基準告示」とは

トラック運転者の労働条件の改善を図るために、厚生労働省労働基準局から告示された「自動車運転者の労働時間などの改善のための基準」のことを指します。略して「改善基準告示」です。
前回のコラムよりうまくまとめたいと思うのですが、

  • 年別・月別・(週別)・日別に
  • 拘束時間・休息期間・運転時間の制限を設定

しているルールのことです。

 
拘束時間3,516時間293時間13時間
休息期間8時間
運転時間連続4時間まで、および2日平均で9時間まで

運送業の「2024年問題」で取り沙汰される残業時間の上限とは、少し角度が変わり毎日の運行についてのルールになります。
この改善基準告示のルール内容、長距離運行の場合において、順守できているドライバー(企業)が少ないのが現実です。何回かお伝えしていますが、そもそも始まりの時間(出勤時間)と終わりの時間(退勤時間)とが不明確になりがちな業種ですから、その時間がしっかりとした運用がなされていないとそもそも改善基準告示を管理すること自体が難しいのが現実です。

しかしこれは「管理できればよい」ことではなくて、「管理しなければならない」ことですので、ぜひ積極的に取り組んでいただきたいと思います。開始時期は未定ですが、その改善基準告示のルールが変更になるようです。

全ての時間は短縮の方向へ(2022年9月時点<案>)

 
新・拘束時間(案)3,516時間→3,300時間へ
(216時間短縮)
293時間→284時間へ
(9時間短縮)
13時間(延長する場合16時間)→13時間(延長する場合15時間)
(延長の場合1時間短縮)
新・休息期間(案)8時間以上→1時間以上(2時間延長)
* 継続9時間を下回らないよう
新・運転時間(案)連続4時間まで、および2日平均で9時間まで
  • * 出典:第9回労働政策審議会労働条件分科会自動車運転車労働時間等専門委員会トラック作業部会より

日別の管理が非常に厳しくなりそうです。というのも、当社のアプリケーションからの統計データでは、長距離運転手の1日平均拘束時間は約12.5時間で、アプリケーション導入時点では約15.5時間となっています。つまり、管理されていない状態では、日の拘束時間上限15時間は大半が超過してしまうのではないかと思われます。休息期間については、拘束時間の裏返しですから、拘束時間がしっかりと守れないとこちらもエラーになります。

年間、月間の管理は数字が大きく、「いけそうな気がする」のですが、当然ながら年間、月間の数字は日の数字の積み重ねですから、やはり日別のマネジメント力がものを言います。1日単位のマネジメント、分単位のマネジメントが必要となってくるのはご想像のとおりです。

あれこれ考えるとおかしくなりそうですが、まずは現時点の改善基準告示の制限数値を守ることができる体制構築が必要ですね。

次回は10月14日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社AppLogi 代表取締役

廣田 幹浩

国内大手コンサルティング会社SCM&ロジスティクスソリューショングループ グループマネージャー職を経て現職。300社を超える荷主向け物流効率化、数100社超の運輸・配送関連経営コンサルティングの実績をベースとして、2018年に株式会社AppLogiを設立。最新の運輸・配送関連クラウドアプリケーションを提供する。
株式会社AppLogi

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