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第12回 運送業の改善基準告示対応~(1)拘束時間の管理~
運送業には管理すべき義務のある項目がたくさんあります。今回は運送業に合わせた「拘束時間」と「休息期間」の管理、いわゆる「改善基準告示」の管理について考えてみたいと思います。
運送業の改善基準告示対応~(1)拘束時間の管理~
前回まで運送業のデジタル化についてお話をしてきました。運送業には今回お話しさせていただく「改善基準告示」など、管理すべき義務がある項目がたくさんあります。これをしっかりと管理していくには社内がデジタル化されていない、もしくはデジタルに慣れていない状態だと、とても大変な管理業務が人間の手にかかってくることになります。
ぜひ前回までのデジタル化項目を実施していただき、今回からお話をさせていただく、改善基準告示の管理にも活かしていただければと思います。
運送業の改善基準告示とは?
トラック運転者の労働条件の改善を図るために、厚生労働省労働基準局から告示された「自動車運転者の労働時間などの改善のための基準」のことを指します。略して「改善基準告示」です。運送業の方でも意外と知らない方がいらっしゃって、びっくりすることが多いのですが、一般的な所定労働時間、残業時間管理と同じぐらい、運送業にとっては重要な管理項目となっています。
簡単にいうと、運送業に合わせた「拘束時間」と「休息期間」の管理をしなさいといっています。管理しなければならない項目はたくさんあり、五月雨式に挙げていきますが、後でしっかりとまとめますので、ご心配なくお読みください。
運送業は「拘束時間」を重点管理
運送業以外の業種は既に働き方改革が進められていますが、重点的に管理しなさいといわれているのは「時間外労働」で、これを減らしなさいといわれています。つまり「労働時間」をしっかり管理しなさいという指示です。
ちなみに労働時間とは、
「拘束時間」-「休憩時間」 = 労働時間
で算出されます。
9時間の拘束時間で1時間休憩があったら、労働時間は8時間ですね。一般的にはこの計算で理解できると思います。
ところが運送業の場合は、「拘束時間」を重点的に管理しなさいといわれています。これは休憩を小刻みに取りつつ長時間働く運送業に合わせた管理であると考えられます。
先ほどの労働時間の算出式に運送業を当てはめてみると、
「拘束時間」 16時間 - 「休憩時間」 3時間 =「労働時間」 13時間
となっているようなケースが多いです。
つまり休憩は取れているけど(一概にはいえませんが)全体の拘束時間が長くなり、しっかりと継続した睡眠が取れないことなどが問題であると捉えられています。 この拘束時間は、年・月・日で限度が決められています。
3,516時間・293時間・16時間・13時間が覚えておかないといけない時間
まずは月間の限度からいきましょう。月間の拘束時間は293時間までが限度となります。ちなみに年間の拘束時間の限度は、3,516時間です。
月293時間×12カ月=3,516時間だからですね。
293時間を所定労働日数で割ると、1日の拘束時間が出てきますが、
23日出勤だと、293時間÷23日≒12.7時間
25日出勤だと、293時間÷25日≒11.7時間
となります。
ここから、1日の拘束時間の限度が算出されています。運送業のドライバーは拘束時間13時間以内が基本です。 もし超えることがあったとしても1日の限度は16時間です。これを超えると減点対象です。
休息期間は継続8時間以上取らないと減点
「休息期間」と「休憩時間」とは別物です。休憩時間は業務内に取る自由な時間で、休息期間は勤務と次の勤務との間にある自由な時間のことを指します。つまり家で寝ている時間が一番想像しやすいですね。これを前の日に出勤した時間から24時間以内に8時間確保できなければ、改善基準告示上、減点1となります。
あれ? 24時間で考えると拘束時間16時間を超えると、自動的に休息期間も8時間未満になるじゃないかと思いますよね? そうです。
先ほどの拘束時間16時間オーバーで減点、休息期間8時間未満で減点とダブルで減点ということになります。
このようになってしまいますので、まずは基本拘束時間をしっかりと守り、休息期間を8時間確保できるように、何をすべきか考えるというのが、「改善基準告示」の基本ベースとなります。もうお分かりだと思いますが、最低でも1時間単位でマネジメントができなければいけないということです。そのためにさまざまなデジタルツールを活用し、現実的に管理できるようにしなければいけません。
現実的にどう守っていくのか、次回も一緒に考えたいと思います。
次回は1月7日(金)更新予定です。