第56回 アメリカと日本のドライバーの時間管理の違い(1)

前回のコラムは、「時間外労働制限」など、ドライバーが法を理解していなければ守れないというお話でした。法律を労使ともに理解し、業務を行うことが重要です。さて今回は、アメリカのドライバーの時間管理についてお話しさせていただきたいと思います。

アメリカと日本のドライバーの時間管理の違い(1)

前回のコラムは、結局のところ「時間外労働制限」「改善基準告示」など、確実に法を遵守するためには、ドライバーが法を理解していなければ守れないというお話でした。法について、事務所は理解しているけど、ドライバーが理解していない(伝わっていない)運送会社がとても多く、ドライバーは一生懸命運行しているのに違法な運行をしていたという結果になっていることがあります。法律を労使ともに理解し、業務を行うことが対策の第一歩です。伝えられていない管理者の皆様は伝わるまでしつこく話しましょう。

さて今回は、アメリカのドライバーの時間管理についてお話しさせていただきたいと思います。

日本とアメリカの運行管理の法規制

まずは日本とアメリカの運行管理の法規制について比較をしてみましょう。

 日本アメリカ
拘束時間1日(原則):13時間
1日(最大):16時間
(15時間超は週2回まで)
1カ月:293時間
1年間:3,516時間
1日:14時間
(運転可能な時間枠)
8日間の勤務時間:70時間
(会社が毎日稼働の場合)
7日間の勤務時間:60時間
(会社が毎日稼働ではない場合)
運転時間1日:9時間(2日平均)
1週:44時間(2週平均)
1日:11時間
連続運転時間連続運転時間4時間に対して30分の中断
(10分以上/回で分割可)
連続8時間運転した場合30分の中断
休息期間継続8時間以上連続10時間
休息期間
分割休息の特例
休息期間合計:10時間以上
(継続4時間以上/回)
(一定期間における全勤務回数の分の1)
最低2時間、7時間で分割可
合計10時間

出典:自動車運転者の労働時間等に係る海外調査結果(厚生労働省・PDF)より抜粋

国土の広さ、道路状況、運行距離、さまざまな点で違いがありますので単純に設定数値だけの比較はできませんが、1日の長さと人間の健康リズムは変わりませんので考え方は同じで良さそうですね。

特徴として、アメリカは1日の最大拘束時間は14時間と日本の16時間より短いものの、1日の運転時間は日本より長いと見てとれます。

日本とアメリカ、どちらのルールが厳しいのか

拘束時間を比較する際に、日本では「原則」「最大」と2段階設けられているところに対し、アメリカは設定が一つというところ、また、運転時間は日本では2日平均、アメリカでは1日といった尺度の違いがあり、どちらが厳しいとかいう単純な比較はできません。しかし、アメリカのルール設定には考え方の厳しさを感じます。

拘束時間一つをとってみても感じます。例えばアメリカは14時間経過するとそれ以上働くことはできません。違法状態になります。日本の場合は、拘束時間が原則13時間と、最大拘束時間16時間と設定されていますから、頭の中では13~16時間と想像されていそうです。原則13時間と決められているのだから、本来、13時間経過するとそれ以上働くことはできないと言いたいところですが、実はあと3時間働けると思ってしまいます。

これは日本のトラック運送事業の実情を鑑みたうえで配慮された設定だと思われます。しかし実際に運用しようとすると16時間の方に照準を合わせて運行計画を立ててしまう会社も多いようです。

アメリカのようにはっきりと時間が決まっていれば、「ここから罰則」という線が引かれてルール遵守目標からルール死守に変わると思うのですが、現状を考えて見ると違反者だらけになりそうで難しそうです……。

次回は10月20日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社AppLogi 代表取締役

廣田 幹浩

国内大手コンサルティング会社SCM&ロジスティクスソリューショングループ グループマネージャー職を経て現職。300社を超える荷主向け物流効率化、数100社超の運輸・配送関連経営コンサルティングの実績をベースとして、2018年に株式会社AppLogiを設立。最新の運輸・配送関連クラウドアプリケーションを提供する。
株式会社AppLogi

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