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第65回 IT点呼・遠隔点呼の活用
前回のコラムでは、給与システムを選ぶ際のポイントについてお話をしました。さて今回のコラムは、今後ますます運送の現場で活用されていくであろうIT点呼・遠隔点呼についてお話しします。
IT点呼・遠隔点呼の活用
前回のコラムでは、給与システムを選ぶ際のポイントについてお話をしました。運送業は基本給以外に歩合給として出来高系データを基にした手当を支給する場合が多くあります。実態に合わせた評価から手当を支払おうとするのはとても良いことだと思うのですが、いかんせん、計算に手間がかかるのが困るところです。
全てを自動計算する仕組みは難しいとしても、せめてExcelなどで作成した内容を取り込めるシステムであれば、かなり手間が減りそうですね。
さて今回のコラムは、今後ますます運送の現場で活用されていくであろうIT点呼・遠隔点呼についてお話しさせていただこうと思います。
IT点呼・遠隔点呼とは?
「点呼」は、運送業が業務開始前に実施しなければいけない法律で決められている業務です。原則は対面で実施しなければいけないものですが、これを機器・システムを用いて、モニター越しに離れた場所からドライバーに対して点呼を行うこともできます。
2022年4月以前にこれを実施するためには、「輸送の安全及び旅客の利便の確保の確保に関する取組が優良であると認められる営業所」として認められている必要があり、具体的には、
- 公益社団法人全日本トラック協会が認定しているGマークを保有しているか
- もしくは下記の4条件を満たしているか
- 営業所を開設してから3年が経過していること
- 過去3年間、自らの責に帰する重大事故を発生させていないこと
- 過去3年間、規定の行政処分又は警告を受けていないこと
- 地方貨物自動車運送適正化事業実施機関が行った直近の巡回指導において、総合評価が規定以上であること
というもので、かつ「国土交通大臣が認定した機器」でしか運用することができませんでした。ちなみにこの条件で運用される仕組みのことを「IT点呼」と呼んでいます。まとめると、「Gマークを保有していて、専用機器を保有している場合のみ可能」という仕組みでした。
Gマークを取得していなくても遠隔点呼は実施できる
2022年4月より「遠隔点呼」という仕組みが運用できるようになりました。これはGマークを保有していなくても、専用機器を保有していなくても、離れた場所から点呼を行うことができます。
IT点呼 | 遠隔点呼 | |
---|---|---|
営業所の要件 | Gマーク認定営業所及び一定の要件を満たす優良な営業所 | いずれの営業所でも実施可能 |
範囲 | <営業所内>営業所と当該営業所の車庫間又は当該営業所の車庫と当該営業所の他の車庫間 | <営業所内>同左 |
<営業所間(注1)>営業所と他の営業所間/営業所と他の営業所の車庫間/営業所の車庫と他の営業所の車庫間 | <営業所間(注2)>同左 | |
時間の制約 | 1営業日のうち連続する16時間以内(ただし営業所内は制約なし) | 制約なし |
必要な機器・システム | 国土交通大臣が認定した機器 | 要件を満たすカメラ、モニター、生体認証機能、映像・音声共有、点呼結果・故障の記録・保存機能を有する機器・システム、アルコール検知器 |
環境条件 | なし | 監視カメラの設置、環境照度の確保、通信環境・通話環境の確保 |
運用時の順守事項 | なし | 運行管理者の確認事項、機器故障時の点呼体制整備、個人情報の取扱い等 |
- (注1)トラック事業者であって同一事業者内かつGマーク認定営業所間のみ
- (注2)同一事業者内、またはグループ企業間(100%株式保有による支配関係にある親会社と子会社又は100%子会社同士)
ポイントは、いずれの営業所でも実施可能というところと、カメラ・モニターや記録する仕組みなど、必要な機器を市販されているものから選定できることです。もちろん運用ルールなどを明記し守れる体制を作ることが必要であり、各営業所でドライバーの運転者台帳などを確認できる体制も必要です。社内体制を変えることで遠隔点呼が実施できるようになるのであれば、これはとても合理的な仕組みです。これもデジタル化が進んでいてこそできる仕組みです。
次回は4月5日(金)更新予定です。
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