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第75回 運送業の運送契約書面化の義務化への対応(1) 運送契約のデジタル化
前回のコラムでは、データ共有シリーズ第六弾として「位置・動態情報」のデータ共有についてお伝えしました。今回は、改正された物流関連2法の大きな変更点である「運送契約書面化の義務化」について、深掘りしていきたいと思います。
運送業の運送契約書面化の義務化への対応(1) 運送契約のデジタル化
前回のコラムでは、データ共有シリーズ第六弾として「位置・動態情報」のデータ共有についてお伝えしました。
トラックの位置情報を共有することで、多くの業務を合理的にします。IT化が進んでいく中で運送業から見れば「商売道具の動き」、荷主から見れば「進捗(しんちょく)管理」がうまくできることで日本の物流は大きく変わっていきます。荷主の観点、運送事業者からの観点、双方から見て大きなメリットがありますね。
今回は、改正された物流関連2法の大きな変更点である「運送契約書面化の義務化」について、デジタル化の観点から深掘りしていきたいと思います。
物流関連2法とは
2024年4月26日に参議院本会議で可決、成立し、5月15日に公布された法律です。物流関連2法とは、「物流総合効率化法」「貨物自動車運送事業法」の二つの法律を指します。
- 物流総合効率化法(物効法)
「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」から、「物資の流通の効率化に関する法律」に改称。荷主および物流事業者に対し、物流効率化に対する取り組みを定めた内容が盛り込まれている法律 - 貨物自動車運送事業法(貨物事業法)
トラック事業者の事業遂行における取り組みを定めた法律
大きくはこの二つの法律となっており、本コラムは運送事業者向けにお伝えしていますので、(2)の内容について、詳細をお伝えしていこうと思います。
運送契約書面化の義務化
今回の法改正においては、特に労働環境や効率性の改善に焦点を当てており、その中で「契約条件の明確化」は非常に重要な要素です。この問題に対処するために、政府は「物流産業における多重下請構造の是正」を検討していて、その一環として「契約条件の明確化」が進められています。
「契約条件の明確化」には、元請運送事業者が実際の運送を担当する事業者の商号・名称などを荷主に通知することが義務付けられています。これは業務の透明性を高め、責任の所在を明確にするための重要なステップです。また、荷主や運送事業者が運賃・料金などの条件を記載した電子書面(運送申込書や引受書)を交付することが明記されています。
この書面は、一般的に「配送依頼書」と呼ばれており、従来の紙ベースのやりとりからデジタル化へと移行することが求められています。
法律の文面としても下記のように記載されています。
- 荷主、運送事業者は、それぞれ運賃・料金などを記載した電子書面(運送申込書/引受書)を交付することを明記
- 元請運送事業者は、実運送事業者の商号・名称などを荷主に通知することを明記
この配送依頼書のやりとりは、荷主と運送会社との間でだけではなく、元請運送会社にも義務がありますから、運送会社間でのやりとりも必要になります。メールの活用や電子FAXなどの仕組みに変えるなどの仕組みが必要になってきます。
デジタル化への対応が運送事業者に与える影響
運送事業者にとって、配送依頼書のデジタル化は新たなシステム導入や従業員のトレーニングが必要となるかもしれませんが、これらの初期投資は長期的な利益につながります。効率化された業務プロセス、削減されたコスト、そして法的なリスクの軽減は、事業の競争力を高める要因となります。
また、デジタル化された配送依頼書のやりとりは、荷主との関係をよりスムーズにし、信頼性を向上させる効果も期待できます。こうしたデジタル化の流れに迅速に対応することが、事業の持続的な成長を支える鍵となりそうです。
次回は9月13日(金)更新予定です。