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第7回 運送業のデジタル化策について~(4)位置情報・動態管理~
今回は最近利用が増えてきているトラックの位置情報を管理する「動態管理」についてお話しします。
運送業のデジタル化策について~(4)位置情報・動態管理~
ここまでのコラムでは、運送業に必要な書類のデジタル化についてお話ししてきました。「デジタル運転者台帳」「デジタル車両台帳」「デジタル納品先カルテ」については社内に既にある資料に対してデジタル化する取り組みですから、すぐにでも取り組めそうですね。
続けて、今回は最近利用が増えてきているトラックの位置情報を管理する「動態管理」についてお話しします。
動態管理システム(アプリ)とは?
GPSを搭載した端末(スマートフォン含む)を活用して、車両の位置情報を取得するシステムです。AppleのiPhoneをお使いの方は「iPhoneを探す」というアプリをお使いになられたことがあると思いますが、あのアプリに自社の全てのトラックが表示されているようなイメージです。
利用できる環境は
- デジタコに搭載されている動態管理機能を利用する
- スマートフォンで動態管理アプリを利用する
- シガーソケットなどを利用した専用端末を利用する
この3点が多いようです。
どれも長所短所があり、どれがオススメとは一概に言いにくいのですが、車載器に全ての機能を集中させたい場合は、(1)のデジタコに搭載されている機能がよいでしょう。デメリットは情報取得の間隔が約5~10分と少々長めといったところです。
また、位置情報と合わせて運行指示をしたいとか、デジタル化した資料をドライバーに共有したいとか、今後のDX化を見据えた体制を作ることを想定するのであれば、(2)のスマートフォンの動態管理アプリを選ぶのがよいでしょう。デメリットはスマートフォンを準備する必要があることと月額通信料金がかかることです。
すぐに動態管理を始めたいのであれば、(3)のシガーソケットなどを利用した専用端末を利用するのがよいでしょう。何よりシガーソケットなどの指定場所に差し込むだけでスタートできます。デメリットはスマートフォン同様、機器代がかかることと、位置情報取得だけのものがあり、今後のDX化のことを考えると少数の機器に機能を集中させたほうがよいという考え方もありますから、注意が必要です。
リアルタイムで位置が見えることのメリット
そもそも動態管理ができると、何がよいのかを考えてみましょう。
運送会社はトラックを運用することが経営の主軸です。そのために配車担当ができるだけ短い時間で効率よく多くの仕事をこなさないといけません。効率よく運用するためには、車両の位置、業務の状況(積込・荷おろし・休憩・移動など)、経過時間を正確に判断しておくことが必要になります。その確認のためのツールは電話が大半で、進んでいる企業でもSNSのグループチャット機能の活用といったところが現状です。配車担当に必要な情報である「位置」「状況」「経過(拘束)時間」を全員分、一画面で把握することができれば、さまざまな判断がすばやくできます。この情報取得がリアルタイムに近くなればなるほど、ドライバーと直接話して聞いた内容に近づいていきます。
動態管理アプリイメージ
一度に複数のドライバーと話したのと同様の情報が画面上に流れ込んでくるのですから、これはとても効率的なツールですね。
これが今、動態管理アプリを運送会社各社が検討している理由です。
業務とどうつなげていくのか
繰り返しですが、ポイントはリアルタイム性です。リアルタイムに動態が分かれば、労務管理や改善基準告示の管理にもつなげていくことができます。例えば、納品が終了していて、その後に積込や荷卸などの予定がないが、まだ休憩が取れていないドライバーに対して的確な指示ができるようになります。
またドライバーが気付かずに「13時間、もしくは16時間の最大拘束時間を1分超えてしまった」などの「止めることができたエラー」を発生させないこともできるでしょう。
リアルタイム情報があれば、今後出てくるであろうアプリと組み合わせながらDX化がどんどん進みそうですね。
次回は10月22日(金)更新予定です。
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