第104回 2026年の運送業~デジタル記録義務化に“耐えられる会社”になるための実践ステップ~

これまでのコラムでは、「記録はあるのに証拠にならない」「業務がつながっていないと違反リスクが高まる」ことを整理してきました。今回は、2026年以降も「監査・処分・訴訟に“耐えられる記録体制”」を構築するための実践的ステップと導入順序を提案します。

2026年の運送業~デジタル記録義務化に“耐えられる会社”になるための実践ステップ~

これまでのコラムでは、「記録はあるのに証拠にならない」「業務がつながっていないと違反リスクが高まる」ことを整理してきました。今回は、2026年以降も「監査・処分・訴訟に“耐えられる記録体制”」を構築するための実践的ステップと導入順序を提案します。

準備には約2年必要

記録のデジタル化は、機器やシステムの導入よりも運用フロー・役割分担・社内教育がボトルネックになります。

  • 点呼記録をデジタル化しても、入力ミスや抜けがあれば無効
  • 勤怠管理をクラウド化しても、現場が使いこなせなければ意味がない
  • 運行指示書を作っても、日報と整合していなければ証拠にならない

こうした運用の質を変えるには、定着期間が必要です。2026年4月の本格的な監査強化まで既に残り半年を切っていますが、今からの着手でも最低限の体制整備にはまだ間に合います。ただし、「段階的に慣れていく」猶予は残されていないと捉えるべきです。

導入優先度:この順に進めるとスムーズ

優先順位・記録項目理由
1. 点呼記録法的義務であり、かつ改ざん・抜けのリスクが高い。紙台帳では証明性に弱点
2. 勤怠・拘束時間管理284時間/月、3,300時間/年を守る証拠の要。未管理で即違反
3. 運行指示書荷主・ドライバー・自社間での指示内容を明文化する重要書類
4. 整備記録重大事故・故障時の責任回避に直結。タイムスタンプ化が重要
5. 運転日報労基対応・給与連動がベストだが、構造構築後に整備すれば十分

「やりすぎない」ことも重要

全てを同時に電子化すると、現場は必ず混乱します。

  • 最初は記録の対象を絞る(点呼/勤怠のみ)
  • 現場の「記入者」を明確にし、教育内容を限定する
  • フォーマット変更は半年単位で実施
  • システム選定では「記録検索」「修正履歴」「即時出力」の3要素を基準化

完璧より、現場で動く仕組みが優先です。

証拠がある会社は、仕組みがある会社

記録義務によりどの会社もが記録は持っています。しかし、「証拠として通用する形で残せているか」と問われると、多くの会社が沈黙します。

  • 紙やExcelではなく、業務として成立する構造を作ること
  • 属人対応ではなく、仕組みとして維持できる記録環境を整えること

それが2026年以降の運送業に必要な視点です。「やっていないこと」は指導の対象に、「やっているが証明できないこと」は処分の対象に、その違いを乗り越えるためのラスト6カ月です。

次回は11月21日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社AppLogi 代表取締役

廣田 幹浩

国内大手コンサルティング会社SCM&ロジスティクスソリューショングループ グループマネージャー職を経て現職。300社を超える荷主向け物流効率化、数100社超の運輸・配送関連経営コンサルティングの実績をベースとして、2018年に株式会社AppLogiを設立。最新の運輸・配送関連クラウドアプリケーションを提供する。
株式会社AppLogi

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