第84回 運送業の2025年4月以降の対応戦略

前回のコラムでは、待機時間ルールの概要と今後の目標についてお話ししました。運送業に関係するプレーヤーはしっかりと内容を理解しておかなければいけないものであることを再認識しました。さて、年が明け2025年を迎えましたので、運送業が市場に対応していくための戦略について一緒に考えてみたいと思います。

運送業の2025年4月以降の対応戦略

前回のコラムでは、待機時間ルールの概要と今後の目標についてお話ししました。コラムを書くにあたり、ガイドラインに掲載されている内容を復習しましたが、現状と対策、ルールと今後の目標が明確になっています。運送業に関係するプレーヤーはしっかりと内容を読み込み、理解しておかなければいけないものであることを再認識しました。

さて、年が明け2025年を迎えましたので、運送業が市場に対応していくための戦略について一緒に考えてみたいと思います。振り返りやすくするために箇条書きで進めてみようと思います。

働き方改革と効率化との両立が鍵

2025年3月末はその過渡期の重要な節目となるでしょう。運送業各社の労働時間管理への意識の高まりから、車両手配の難しさは現実のものとなってきています。運送業の経営は、自社車両・協力会社車両の両方の運用で構成されていますから、自社だけがうまくいっていても、協力会社がうまくいっていなければ、全体として運用は厳しいものとなります。

2025年4月から運送業界はどのような施策を講じ、持続可能な経営を実現していけばよいのでしょうか。2025年問題の本質は、ドライバーの労働環境の改善と同時に、事業運営の効率化を図ることにあります。これには次の二つの視点が不可欠です。

1. 拘束時間・労働時間の徹底管理

ドライバーの拘束時間を明確に把握し、業務の配分を見直すことが求められます。運行管理システムをはじめとしたデジタル化を推進し、業務のリアルタイム化を進めて実働時間の適正化を図る必要があります。

2. 適正運賃の交渉と導入

荷主事業者との交渉を通じて、拘束時間削減や残業規制に見合った適正な運賃を確保することが重要です。業務の効率化や労働環境の改善には一定のコストが伴うため、それを適切に反映した運賃体系を築く必要があります。つまり収入の確保が必要なことを再認識する必要があります。

ドライバーの給与制度の見直し

働き方改革の影響で残業時間が大幅に削減される中、ドライバーの収入減少を防ぐための給与制度の見直しは避けて通れない課題です。従来の「時間外労働や長距離運行による割増賃金」を前提とした賃金体系から、次のような新しいアプローチへの転換が必要です。

基本給の底上げ

ドライバーが安定した収入を得られるよう、基本給を引き上げる検討が必要です。残業時間が削減されても生活水準が維持できる給与体系を整えることで、安定感が醸成されます。

インセンティブ制度の導入

効率的な運行や安全運転への取り組みを評価するインセンティブ制度を導入することで、ドライバーのモチベーションを高めることができます。例として、燃費改善、安全運転日数、配送完了率に応じた報奨金などが挙げられます。

固定給+歩合制の柔軟な組み合わせ

基本給を一定額確保しつつ、収受運賃や、走行距離、稼働日数に応じた歩合給を加える仕組みを採用することで、成果に応じた公平な報酬が実現します。

テクノロジーを活用した業務改善

  • デジタルプラットフォームの導入
    配車業務や貨物のマッチングに特化したプラットフォームを活用することで、荷主とのやりとりを効率化し、空車率の低減を図ることが可能です。
  • 従来の受注方法だけではなく、受注手段を多岐にもっておくためにもデジタルプラットフォームの情報が必要です。

ドライバーの働きやすい環境作り

労働環境の改善は、ドライバーの採用や定着率を高めるうえで最も重要な要素です。2025年以降、運送業界は次の取り組みを強化すべきです。

福利厚生の充実

休憩施設の整備や給与体系の見直しを行い、ドライバーが長く安心して働ける環境を提供することが必要です。

教育とキャリアアップ支援

ドライバーのスキル向上を目指し、安全運転研修や資格取得支援を積極的に行うことで、職業としての魅力を高めます。

中小運送事業者の連携

2025年以降、特に中小運送事業者は単独での対応が難しい場合も多いでしょう。そのため、地域や業界内での事業者間連携を強化し、共同配送や設備の共有を進めることが重要です。これにより、コスト削減や効率化を図りつつ、規制対応を行う基盤を整えられます。

未来を見据えた取り組みを

2025年4月以降、運送業界はより厳格な労働時間規制と向き合う必要があります。しかし、これは業務効率化やテクノロジー導入の促進を通じ、業界全体が発展する好機でもあります。経営者としては、法令順守をベースに持続可能な成長戦略を描き、ドライバーと荷主、双方にとって価値あるサービスを提供していくことが求められるでしょう。

次回は1月31日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社AppLogi 代表取締役

廣田 幹浩

国内大手コンサルティング会社SCM&ロジスティクスソリューショングループ グループマネージャー職を経て現職。300社を超える荷主向け物流効率化、数100社超の運輸・配送関連経営コンサルティングの実績をベースとして、2018年に株式会社AppLogiを設立。最新の運輸・配送関連クラウドアプリケーションを提供する。
株式会社AppLogi

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