第79回 運送会社の安全教育DX(1) 運送業に特化した法定12項目研修

前回のコラムでは、米国の運送管理システムの概要に関して説明しました。デジタルツールを活用した「安全教育DX」は、効果的かつ効率的な教育方法として注目されています。本コラムでは、安全教育DXの意義とその内容について説明します。

運送会社の安全教育DX(1) 運送業に特化した法定12項目研修

前回のコラムでは、米国の運送管理システムの概要に関して説明しました。システムの内容をまとめると、貨物の配送計画、運行管理、車両の追跡、コスト管理、顧客対応など、運送業務全般をサポートする機能を有するシステムで、トラック輸送の効率を高めるための機能が盛りだくさんです。日本では2024年問題に関連してルート最適化のためのアプリケーションが昨今、注目されていますが、さすがは合理化大国、既に成熟した機能がそろっているようですね。

今回は、運送業から切っても切り離せないドライバーの安全教育についてお話ししていこうと思います。デジタルツールを活用した「安全教育DX」は、効果的かつ効率的な教育方法として注目されています。本コラムでは、安全教育DXの意義とその内容について説明します。

ドライバーの安全教育は法律で実施が定められている

道路交通法や労働安全衛生法の規定に基づき、運送会社のドライバーに対する安全教育は法律で義務付けられています。法的な要件により、ドライバーは定期的に安全に関する教育を受けることが必要であり、事業者はその実施を確実に行う責任があります。この義務は、ドライバーの安全意識向上と事故防止に直接つながるため、厳格な管理が求められます。

実施しなければならない教育は法定12項目と呼ばれている12項目

ドライバーに対する安全教育には、法定12項目と呼ばれる重要な内容があります。この12項目は、運行の安全確保のために必要な知識や技術を網羅しており、事業者が必ず実施しなければならないものです。

具体的には、運転技術の向上や車両点検、事故対応など、安全運行に不可欠な内容が含まれています。これらの項目は、法的基準に基づいて設計されており、ドライバーが安全に業務を遂行するための重要な指針となります。
12項目の概要は下記の内容になっています。

  1. トラックを運転する場合の心構え
  2. トラックの運行の安全を確保するために遵守すべき基本的事項
  3. トラックの構造上の特性
  4. 貨物の正しい積載方法
  5. 過積載の危険性
  6. 危険物を運搬する場合に留意すべき事項
  7. 適切な運行の経路及び当該経路における道路及び交通の状況
  8. 危険の予測及び回避並びに緊急時における対応方法
  9. 運転者の運転適性に応じた安全運転
  10. 交通事故に関わる運転者の生理的及び心理的要因とこれらへの対処方法
  11. 健康管理の重要性
  12. 安全性の向上を図るための装置を備えるトラックの適切な運転方法

一般的な指導および監督の実施マニュアル

運送業者向けには、国土交通省より「実施マニュアル」が用意されており、トラック事業者はこれを基にドライバーの教育を行うことが推奨されています。国土交通省の「運転者に対する教育」ページに参考資料として、安全教育マニュアル「自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う一般的な指導及び監督の実施マニュアル」が各業態別に掲載されています。

運転者に対する教育(国土交通省)

このマニュアルには、安全運行に必要な手順や指導方法が具体的に示されていて、特に事故防止や危険予測に関する教育が重視されています。また、トラック特有の運行環境やリスクに対してどのように対処すべきかも詳しく解説されています。

指導教育の目的

安全教育の最大の目的は、ドライバーが安全に業務を遂行できるようにすることです。具体的には、交通事故の未然防止、労働災害の削減、そして運送会社の社会的信用を守ることが挙げられます。また、ドライバー個々の知識と技術を向上させ、迅速かつ適切な判断ができるようにすることも重要です。これにより、事故の発生を最小限に抑え、安全な運行が実現されると考えられます。

教育研修の実施方法

従来の教育研修は、講義や実地訓練を中心に行われていましたが、近年ではeラーニングを活用した「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が注目されています。
特に運送会社の場合は、ドライバーごとに運行開始・終了時間、所在地などが違い、集合研修の形をとることが難しいため、eラーニングを導入することで、場所や時間にとらわれずに学習でき、ドライバー一人一人の理解度に応じた柔軟な教育が可能となるでしょう。また、デジタルツールを使った安全教育は、教育の記録を正確に残すことができ、法的要件の証明にも役立ちます。これにより、効率的で透明性の高い教育の実現が可能となります。

次回より、このeラーニングの実施方法について、お話ししていこうと思います。

次回は11月8日(金)更新予定です。

関連するページ・著者紹介

この記事のテーマと関連するページ

運送事業者向け販売管理システム SMILE V 2nd Edition トラックスター

運送業における日報管理・請求管理から実績管理まで、一連の業務を効率化。業界の慣習に対応し、運送業の経営管理を強力にバックアップします。マスターや伝票に独自項目を追加して、オリジナル帳票の作成やデータ活用が可能です。

この記事の著者

株式会社AppLogi 代表取締役

廣田 幹浩

国内大手コンサルティング会社SCM&ロジスティクスソリューショングループ グループマネージャー職を経て現職。300社を超える荷主向け物流効率化、数100社超の運輸・配送関連経営コンサルティングの実績をベースとして、2018年に株式会社AppLogiを設立。最新の運輸・配送関連クラウドアプリケーションを提供する。
株式会社AppLogi

公式Facebookにて、ビジネスに役立つさまざまな情報を日々お届けしています!

お仕事効率研究所 - SMILE LAB -

業務効率化のヒントになる情報を幅広く発信しております!

  • 旬な情報をお届けするイベント開催のお知らせ(参加無料)
  • ビジネスお役立ち資料のご紹介
  • 法改正などの注目すべきテーマ
  • 新製品や新機能のリリース情報
  • 大塚商会の取り組み など

お問い合わせ・ご依頼はこちら

詳細についてはこちらからお問い合わせください。

お電話でのお問い合わせ

0120-220-449

受付時間
9:00~17:30(土日祝日および当社休業日を除く)
総合受付窓口
インサイドビジネスセンター

ページID:00275351