第78回 米国の運送管理システムの現状と今後の展望

前回のコラムでは、運送契約の書面化義務化に対する「運送契約のデジタル化」について、「車番連絡票」の作成に関して説明しました。今回のコラムでは、運行管理システムの先駆者である米国の運行管理システムの概要についてお伝えしていこうと思います。

米国の運送管理システムの現状と今後の展望

前回のコラムでは、運送契約の書面化義務化に対する「運送契約のデジタル化」について、「車番連絡票」の作成に関して説明しました。荷主企業や元請け事業者が実運送事業者を把握できるようにするための運送体制台帳(下請け事業者のリスト)を作成しなければならないことに関連して、必要となる帳票です。

ほとんどの運送事業者は車番連絡を日常的に行っていると思いますが、今後はデジタル化の観点から、データで送ることが通常となってくるでしょう。紙ベースの業務からデジタル化へ、いち早く変わっていくのはこのあたりかもしれませんね。

今回のコラムでは、運行管理システムの先駆者である米国の運行管理システムの概要についてお伝えしていこうと思います。

米国の運送管理システムの現状

米国の物流業界は、広大な国土と多様な産業を支える重要な基盤となっています。その中で、運送管理システム(TMS:Transportation Management System)は、運送の効率化やコスト削減、顧客対応を向上させるために不可欠なツールとして急速に進化しています。これに付随してトラックに設置される機器(日本で言うところのデジタコ)も高度化しています。

米国の運送管理システムの概要

米国のTMSは、運送の業務管理を一元化するために設計されたソフトウェアシステムで、運送業者や3PL(サードパーティー・ロジスティクス)企業などが使用しています。具体的には、貨物の配送計画、運行管理、車両の追跡、コスト管理、顧客対応など、運送業務全般をサポートする機能を提供しています。

アメリカ国内は道路網や鉄道網が発達している一方で、国内輸送量の増加に伴い、効率的な輸送管理が求められています。日本と比べ輸送距離も長いため、コストが重要視され効率性が求められ、かなり細かなマネジメントが求められます。そのため、多くの企業がなんらかの運送管理システムを導入し、輸送計画の最適化や車両の稼働率向上を図っています。

運送管理システムが提供する主な機能

米国で使用されている運送管理システムの主要な機能は下記のようなものです。昨今、国内で求められている機能と同じような内容ですが、これを基本機能として従来のシステムが持っているのですから、やはり進んでいますね。

1. ルート最適化
配送ルートの効率化を図ることで、燃費や運送時間の削減を実現。AIを活用して交通状況や天候などの要因をリアルタイムで分析し、最適なルートを提案します。
2. 車両追跡
GPS技術を用いて、貨物や車両の現在地をリアルタイムで追跡。これにより、顧客に正確な配送状況を提供できるだけでなく、運行の安全性も向上します。
3. コスト管理
燃料費、労働力、維持費などの運送コストをリアルタイムで分析し、コスト削減策を提案する機能が含まれています。これにより、企業は収益性を高めることができます。
4. 請求・決済機能
請求書発行や支払い処理を自動化することで、事務作業の負担を軽減し、精度の高い取引管理が可能になります。
5. 規制対応
アメリカの複雑な運送業に関連する規制(労働時間、車両のメンテナンス規則など)に適応するため、法的コンプライアンスをサポートする機能も備わっています。

ポイントはクラウドベースのシステム

米国ではクラウドベースのシステムが非常に多く普及しており、中小企業から大企業まで幅広い企業が利用しています。クラウド技術を活用することで、初期導入コストが低く、アップデートやメンテナンスが自動的に行われるため、システムの運用が容易です。

日本でもクラウド型運送管理システムの導入は進んでいますが、まだまだオンプレミス(社内設置型)のシステムを使うことが多く、クラウドの採用は比較的遅れていて、旧型のシステムを使いつづけている企業がほとんどです。クラウドに置き換えるにも既存のシステムをいったん捨てなければならないという大きな経営判断がボトルネックにもなっています。

米国では、クラウド技術によって小さな会社でも運送管理システムを迅速に導入し、複数拠点での運送管理がリアルタイムで可能となっているため、業務の運用が非属人化してきています。また、AIが配送のパフォーマンスをリアルタイムでモニタリングし、改善点を提案するなどの機能も発展してきているようです。

そして、サードパーティーとの連携機能がとてもやりやすくなっています。多くの3PL企業や運送会社と容易に連携できる柔軟な機能を備えています。米国の物流業界は、外部の運送サービスを利用する企業が多いため、システムは複数の運送会社やサプライヤーとスムーズに連携し、運送計画や配送状況の一元管理ができるようになっています。

日本でも大手物流会社では活用されていますが、アメリカほど広範な連携が進んでいるわけではなく、運送会社はシステムを持っているとしても請求関連システムのみにとどまっており、米国のTMSほどの統合力はまだ見られません。

まとめると、米国ではクラウドベースのシステムが多く提供されていることから、普及率が高く、運送会社にとって必要な機能が普及されているように感じます。日本も2024年問題マネジメントを原動力に革新を進めていきたいところです。

次回は10月25日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社AppLogi 代表取締役

廣田 幹浩

国内大手コンサルティング会社SCM&ロジスティクスソリューショングループ グループマネージャー職を経て現職。300社を超える荷主向け物流効率化、数100社超の運輸・配送関連経営コンサルティングの実績をベースとして、2018年に株式会社AppLogiを設立。最新の運輸・配送関連クラウドアプリケーションを提供する。
株式会社AppLogi

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