第118回 値上げできる運送会社とできない会社との決定的な違い

前回は、「運送会社が赤字荷主を見抜けない理由」というテーマで、荷主別採算の考え方についてお話ししました。今回は、「値上げできる会社とできない会社との決定的な違い」について考えてみたいと思います。

値上げできる運送会社とできない会社との決定的な違い

前回は、「運送会社が赤字荷主を見抜けない理由」というテーマで、荷主別採算の考え方についてお話ししました。売上が大きい荷主だからといって、必ずしも利益に貢献しているとは限りません。利益改善の第一歩は、どの荷主が利益を支え、どの荷主が利益を圧迫しているのかを正しく把握することです。そして荷主別採算を分析していくと、多くの会社が次の課題に直面します。

「この運賃では利益が残らない」

その事実は分かった。しかし、実際に荷主へ運賃改定をお願いしようとすると、多くの会社が立ち止まってしまいます。そこで今回は、「値上げできる会社とできない会社との決定的な違い」について考えてみたいと思います。

値上げできない会社は「お願い」をしている

燃料費の上昇、人件費の上昇、車両価格の上昇。近年の運送業界は、あらゆるコスト上昇に直面しています。それにもかかわらず、十分な運賃改定が進まず、利益を圧迫され続けている会社も少なくありません。
値上げできない会社の多くは、「運賃を上げてほしい」という思いを持っています。しかし、その説明が感覚的になっています。

  • 燃料費が上がったので厳しい
  • 人手不足で苦しい
  • 経営が大変になってきた

もちろん事実ではあります。しかし荷主も同じようにコスト上昇に苦しんでいます。そのため、自社の事情だけを説明しても理解を得ることは難しくなります。
値上げ交渉がうまくいかない会社は、交渉の場で“お願い”に終始しがちです。一方で、値上げに成功する会社は“説明”をしています。

値上げできる会社は数字を持っている

値上げに成功する会社は、感情ではなく事実を示します。
例えば、契約当初と比較して待機時間がどれだけ増えているのか。荷役作業がどの程度増加しているのか。拘束時間や稼働効率がどのように変化しているのか。こうした数字を整理したうえで、現在の運賃では持続的な輸送サービスの維持が難しいことを説明します。

荷主が知りたいのは、「値上げしてほしい」という要望ではありません。なぜ値上げが必要なのか、その根拠です。数字がある会社は、交渉の主導権を握ることができます。逆に数字がない会社は、どうしても感覚論になりがちです。その差が結果として表れてきます。

本当に伝えるべきなのは物流品質の話

値上げ交渉というと、多くの会社は売上の話だと思っています。しかし荷主から見ると、売上は運送会社側の事情です。荷主が本当に気にしているのは、自社の物流が安定して継続されることです。そのため、交渉の主語を変える必要があります。

「利益が厳しいので値上げしてください」
ではなく、
「現状の条件では将来的な輸送品質の維持が難しくなります」
という説明です。

ドライバー不足が進み、労働時間規制も強化される中で、適正な運賃がなければ十分なサービスを維持できない。その事実を伝えることが重要です。値上げ交渉は利益確保のためだけではありません。物流を維持するための対話でもあるのです。

日ごろの関係づくりが結果を左右する

値上げ交渉は、交渉の場で突然始まるものではありません。実際には、その何カ月も前から結果が決まっていることが少なくありません。
利益が出ている会社ほど、普段から荷主とのコミュニケーションを大切にしています。現場の状況を共有し、課題があれば早めに伝え、改善提案も行う。そうした積み重ねによって信頼関係が形成されます。
その結果、運賃改定の話になったときも、「突然の要求」ではなく、「以前から共有されていた課題への対応」として受け止められます。
反対に契約更新のときだけ連絡する関係では、どうしても交渉は難しくなります。

全ての荷主を守る時代ではなくなった

近年の物流環境を見ると、人も車両も十分に確保できる時代ではなくなっています。つまり、全ての案件を同じように受け続けることが難しくなっています。利益改善を進めている会社は、荷主別採算を把握しています。そのため、どの荷主との関係を強化すべきか、どの案件を見直すべきかを判断できます。
限られた経営資源をどこへ投入するのか。
これは今後ますます重要な経営課題になっていくでしょう。

まとめ

値上げできる会社とできない会社との違いは、単純な営業力の差ではありません。事実、周囲を見渡しても値上げに成功している会社の社長が必ずしも饒舌(じょうぜつ)ではないと思います。日ごろから数字を把握し、荷主との信頼関係を築き、自社の状況を客観的に説明できるかどうか。その積み重ねが結果の差となって現れます。

値上げ交渉とは、単に売上を増やすための活動ではありません。自社の物流サービスを持続可能なものとし、荷主に対して安定した輸送品質を提供し続けるための重要な経営活動です。
適正な運賃を得られる会社ほど、結果として長く選ばれる会社になっていくのではないでしょうか。

次回は6月26日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社AppLogi 代表取締役

廣田 幹浩

国内大手コンサルティング会社SCM&ロジスティクスソリューショングループ グループマネージャー職を経て現職。300社を超える荷主向け物流効率化、数100社超の運輸・配送関連経営コンサルティングの実績をベースとして、2018年に株式会社AppLogiを設立。最新の運輸・配送関連クラウドアプリケーションを提供する。
株式会社AppLogi

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