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第88回 運送業の分割休息の注意点|2024年改正ルールの解説
前回のコラムでは、「430(4時間連続運転)2024年改正ルール」というタイトルでお話ししました。今回はこちらも問い合わせの多い分割休息の取得についての注意点を新基準に合わせて、あらためてご説明したいと思います。
運送業の分割休息の注意点|2024年改正ルールの解説
前回のコラムでは、「430(4時間連続運転)2024年改正ルール」というタイトルでお話ししました。430休憩の取得については当社でもっとも問い合わせの多い内容で、スマートフォンアプリで430休憩を管理できるか? というものです。
回答としては可能です。デジタル化が進んだ時代ですから、さまざまなツールが存在します。ただ、そのツールを使うとしても、おさえておかなければいけないのは、ドライバー、管理者の双方がルールを理解しているかどうかという点です。まずは理解する、そして効率的に管理するためにツールを使うという流れはいつの時代も変わらないと思います。
さて、今回はこちらも問い合わせの多い分割休息の取得についての注意点を新基準に合わせて、あらためてご説明したいと思います。
分割休息とは?
あらためて申し上げると、運送業(トラックドライバー、バス運転者など)では、一般の業種とは異なる特別な労務管理が必要です。その一つが「休息期間(勤務間インターバル)」の管理です。
休息期間とは、終業(仕事終了)から次の始業(仕事開始)までの間を指します。これは労働時間には含まれず、十分に確保することで労働時間の短縮や健康管理にもつながります。
基本ルール
- 原則として連続11時間以上の休息が必要
- 短縮する場合でも最低8時間以上は確保する
しかし、交通渋滞や荷主の都合などで、11時間や8時間の休息時間を確保できない場合もあります。そのため、例外的に「分割休息」という方法が認められています。
分割休息のルールと条件
分割休息では、1回あたり継続3時間以上で、2分割または3分割とします。1日において、2分割の場合は合計10時間以上、3分割の場合は合計12時間以上の休息期間を与えなければなりません。
分割休息の例
- 3時間+7時間=合計10時間
- 5時間+4時間+3時間=合計12時間
ただし、始業から24時間以内に収める必要があります。
3分割した分割休息が連続すると違反になりますので、注意が必要です。
分割休息の前後には「点呼」が必須
運送業では、1日の点呼として「乗務前点呼」「乗務後点呼」が義務付けられています(長距離運行の場合は「中間点呼」も必要)。分割休息を利用する場合、通常の休息とは異なり、分割休息の開始時と終了時に点呼が必要です。そのため、点呼の回数が増えることに注意が必要です。
点呼の流れ(例)
- 乗務前点呼→業務開始
- 分割休息開始(点呼が必要)
- 分割休息終了(点呼が必要)
- 乗務後点呼→業務終了
このように、分割休息を適用すると管理業務も増えるため、会社側の適切な対応が求められます。これは意外と忘れられがちなことですので注意してください。
分割休息のまとめ
たくさんのルールを一挙に解説したので混乱していることと思います。一度、ルール全体を整理しておきましょう。
- 1回の休息時間は3時間以上必要
- 分割できるのは3回まで
- 分割回数に応じて取らなければならない休息時間が異なる
- 始業から24時間を基準として考える必要がある
- 全ての運行を分割休息で計画することはダメ
- 分割休息ごとに点呼が必要になる
- 分割休息を使用したほとんどのケースで中間点呼が必要
こんな細かいルールを一度に全て覚えきるのは困難です。なんとなくルールの全体像を覚えていただき、実際に活用されるときはまたこの記事を開いて一つずつ確認する、または運行管理用のスマートフォンアプリを利用したりしながら進めてください。
次回は3月28日(金)更新予定です。