第59回 運送業の給与DX(1)

前回のコラムでは、アメリカのドライバーの時間管理に関連して、運行管理の方法についてのまとめをお話ししました。さて今回は、時間=対価の概念がより強くなる昨今、給与体系の見直しの動きが運送業界で活発化していることについて、一緒に考察していきたいと思います。

運送業の給与DX(1)

前回のコラムでは、アメリカのドライバーの時間管理に関連して、運行管理の方法についてのまとめをお話ししました。アメリカでは全ての商用車の運行管理は電子記録が義務化されました。そこに至った経緯は、ドライバーの労働時間が長時間となっており、睡眠や食事が取れない状況で運行する状況も多く、交通事故につながっているケースもあり安全運行に問題があったこと。またその管理は紙で行われていたため、運行内容の報告に虚偽・改ざんなどが多く、正確に管理できていなかった、という状況でした。

課題の大小、背景の相違などはありますが、トラックドライバーは長時間労働の傾向が強く、安全性を確保した業務を行うためには細かなマネジメントが必要で、そのためにはデジタル化が必要であったと結論付けられそうです。日本も同様の流れとなりそうです。

さて、時間=対価の概念がより強くなる昨今、給与体系の見直しの動きが運送業界で活発化しています。どのように考えていくべきか、一緒に考察していきたいと思います。

運送業にも時間外手当は必須

「法律で決まっているのだから当たり前ではないか?」という声が聞こえてきそうです。
しかし、残業手当を同じ名称で支給している運送会社は多くなく、別名称の手当を支給している場合が多いように見受けられます。つまり残業手当を「長距離運行手当」とか、「特別手当」といった名称で支給されていると想像していただければよろしいかと思います。

2024年問題は、「残業時間が年960時間以内に規制されることで派生して起こる問題」の総称と捉えられますが、残業手当を支給していない会社は、その残業時間自体が分からない場合が多く、その残業時間を捉えるところから始めないといけませんので、その対応に苦慮されています。

しかし、これは法律で決まっている内容ですから、時間に応じて支給することは必須です。問題は今まで支給していた手当内容と残業手当とのバランスを考えたうえで、新しい給与体系をつくらないといけないことです。

運送業の給与DX

運送業の給与体系の再構築を検討するうえで、保険サービスシステム社会保険労務士法人の高橋聡先生提唱の「給与DX」の内容がとても的を射ていると思います。

まず給与モデルには、「時間系データ」と「出来高系データ」を把握、捕捉する必要があり、「時間系データ」については、時間外労働時間数、深夜労働時間数、休日労働時間数をしっかり抑えておくことが必要だと指摘されています。

また、「出来高系データ」については、ドライバー各人の「月間運賃収入」「店舗立寄件数」「走行距離数」「積み下し回数」「運行別単価・運行回数」「重量」「運送個数」などがありますが、まずは自社の運行に合った適切な出来高を選定することが必要だと指摘されています。

つまり、このデータを「デジタコから取得する」、当社のアプリのような「スマートフォンアプリから取得する」、または「別の電子記録方法を活用する」といった手段で、あまり手を掛けずに取得し、コンプライアンス対応から、給与計算までを一気通貫で行えるデジタル管理体制にすることが「給与DX」であると理解しました。

これは2024年問題対応で運送業から見た最大の問題であると感じています。
引き続き、本テーマで次回もお話しさせていただきます。

次回は12月1日(金)更新予定です。

関連するページ・著者紹介

この記事のテーマと関連するページ

運送事業者向け販売管理システム SMILE V 2nd Edition トラックスター

運送業における日報管理・請求管理から実績管理まで、一連の業務を効率化。業界の慣習に対応し、運送業の経営管理を強力にバックアップします。マスターや伝票に独自項目を追加して、オリジナル帳票の作成やデータ活用が可能です。

この記事の著者

株式会社AppLogi 代表取締役

廣田 幹浩

国内大手コンサルティング会社SCM&ロジスティクスソリューショングループ グループマネージャー職を経て現職。300社を超える荷主向け物流効率化、数100社超の運輸・配送関連経営コンサルティングの実績をベースとして、2018年に株式会社AppLogiを設立。最新の運輸・配送関連クラウドアプリケーションを提供する。
株式会社AppLogi

公式Facebookにて、ビジネスに役立つさまざまな情報を日々お届けしています!

お仕事効率研究所 - SMILE LAB -

業務効率化のヒントになる情報を幅広く発信しております!

  • 旬な情報をお届けするイベント開催のお知らせ(参加無料)
  • ビジネスお役立ち資料のご紹介
  • 法改正などの注目すべきテーマ
  • 新製品や新機能のリリース情報
  • 大塚商会の取り組み など

お問い合わせ・ご依頼はこちら

詳細についてはこちらからお問い合わせください。

お電話でのお問い合わせ

0120-220-449

受付時間
9:00~17:30(土日祝日および当社休業日を除く)
総合受付窓口
インサイドビジネスセンター

ページID:00252097