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第60回 運送業の給与DX(2)
前回のコラムでは、運送業の給与体系見直しの動きに関連して、「運送業の給与DX」と称してお話しさせていただきました。給与モデルは、出勤時間、退勤時間を記録することが重要です。今回のコラムではいかに「運送業の給与DX」を中小運送業が実現していくべきか、を考察していきたいと思います。
運送業の給与DX(2)
前回のコラムでは、運送業の給与体系見直しの動きに関連して、「運送業の給与DX」と称してお話しさせていただきました。給与モデルには、「時間系データ」と「出来高系データ」とを把握しておく必要があります。時間系データとはいわゆる勤怠データのことを指します。出庫時間と帰庫(入庫)時間だけではなく、出勤時間、退勤時間を記録することが重要です。
出来高系データとは、業務に関する定量データのことを指します。その社員にひも付く、運行内容、運賃内容などがこれにあたります。ちゃんと労務管理ができていて、運行管理もしっかりできていると給与DXにもつながっていくという答えになりそうです(それはそうですが)。
今回のコラムではいかにこの「運送業の給与DX」を中小運送業が実現していくべきか、を考察していきたいと思います。
毎日管理・記録できる項目をピックアップする
まず、時間系データから進めていきましょう。これは勤怠データのことを指していますので、出勤時間と退勤時間とが明確になっていないと残業時間が算出できません。これはいわゆる打刻によって記録されるものになりますが、実施方法としては、出勤確認時(点呼時やアルコールチェック時<出庫時ではない>)に、
- ドライバーがスマートフォンの勤怠アプリで出勤登録する
- 運行管理者がスプレッドシートや、システムなどに出勤時間を登録する
などを行い、デジタル的に記録するのがよいでしょう。ただ、ドライバー任せになると、出勤予定時間よりも早い時間に出勤登録が行われてしまう場合がありますので、社内でのルール決め、管理することが重要です。退勤も同様です。基本はこの形になるでしょう。
出来高系データは、測れる項目が前提になります。運送業で測れる項目というと、
- 走行距離
- 燃費
- 有料道路利用料
- 運賃
- 運行回数
- 配達件数
- 取り扱い重量(数量)
- 手積み・手おろし回数
などがあります。この中でスプレッドシートなどにより管理されている項目があれば、自動的に給与計算が走りだすことになります。
実際には走行距離の入力が間違えていたり、燃費に関しても社内統計上、良い悪いの判定ができるようにならないといけなかったり、ドライバーが帰ってこないと分からない内容があったりと、なかなか進めていくには難航しそうです。
そのため、まず上記の項目の中で、毎日管理・記録できる項目を自社でピックアップしてみるのがよいでしょう。それが管理・記録できれば、上記の項目は給与手当の材料として検討することができますし、給与計算もDX化することができます。
逆の言い方をすると、毎日管理できない項目が給与を決める項目になっていると、動きと連動した給与手当になっていない場合が多く、ドライバー任せの結果になってしまいがちです。これを機会に見直してみるのがよいですね。2024年問題をうまく利用していきましょう。
次回は12月15日(金)更新予定です。