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第61回 運送業の給与DX(3) デジタコ・デジタルツールをうまく使うためのステップ化
前回のコラムでは、「運送業の給与DX」の続編をお話しさせていただきました。今回のコラムは「運送業の給与DX(3)」として、給与モデルのベースとなるデータを取得するためのデジタルツールや、デジタコをうまく使うためのステップについてお話ししていきたいと思います。
運送業の給与DX(3) デジタコ・デジタルツールをうまく使うためのステップ化
前回のコラムでは、「運送業の給与DX」の続編をお話しさせていただきました。給与モデルのベースとなる「時間系データ」と「出来高系データ」を集める際、毎日管理できる、もしくは記録できる項目が必要です。給与は間違えることができないのはもちろんのこと、正確なデータでなければいけないからです。根拠となる数値は測ることができる内容で、かつ毎日管理・記録できる項目をピックアップすることが良いでしょう。月末が大変になりますからね。
今回のコラムは「運送業の給与DX(3)」として、給与モデルのベースとなるデータを取得するためのデジタルツールや、デジタコをうまく使うためのステップについてお話ししていきたいと思います。
良い機器を導入しても使っていなければ意味がない
運送業でもっとも身近なデジタル機器といえば、デジタルタコグラフ、いわゆるデジタコでしょう。チャート紙をトラックのメーター付近の機器にセットし記録する、アナタコからほぼこれに代わりつつあります。
そのデジタコですが、「積込」・「荷卸」・「待機」・「休憩」などのボタンを押下することにより、どこで、何をしていたのかが記録できるだけではなく、ドライバーが毎日書かないといけない運転日報も出力できるという優れものです。しかし、デジタコを装備している会社の約半数はまだ手書きの日報を併せて作成しているとも聞きます。そうであればなぜなのでしょうか。
記録の改ざんのために手書きにするという例はさておき、押さなければいけないタイミングでボタンを押せていないため正確な記録が取れていないことが原因のようです。「ちゃんとした内容の日報にするためには手書きの日報が必要ですから」、なるほど、これはあまりにも残念な話です。
これは運行管理のスマートフォンアプリなどを活用する場合でも同じです。結局のところ、記録することができなければ、どれだけ良い機器を導入しても意味がありません。
しかし、もともと機械操作が苦手、手書き日報の方が便利だと感じているなど、なかなかボタンを押せない人がいらっしゃるのも理解はできます。しかし、それでは給与のベースとなる運行データがDX化できないことには、給与DXが遠くなってしまいます。やはり活用を進めなければいけません。
いきなりフル活用は難しい。成功にはステップ化が必要
デジタコの全ての操作を、的確なタイミングで行うことを100人中100人にいきなり求めることは難しいため、まずは2週間、「出庫」→「休憩」→「帰庫」の操作だけを続けてもらうことをお勧めしています。当然、その間は実際の運行が記載されている手書き日報は必要となります。
これが確実にできるようになったら、次の2週間で確実に休憩時間を10分以上の休憩を合計で60分以上取れるようにしましょう。10分以上でないと休憩とみなされませんので、このルールを理解してもらうためにもこのステップは必要です。
ここまでできれば、拘束時間と労働時間はしっかりと記録できたことになります。ここからやっと「積込」「荷卸」ボタンの活用になります。このボタンを押すことができれば、運転日報を書かなくてよくなりますから、ドライバーにとってメリットが出てきますね。
今は、アナログとデジタルの境目の時代です。デジタル機器に不得手な人もいれば得意な人もいます。最終的には全ての人が活用できるようにシンプルにつくられていくでしょうが、なにはともあれ慣れは必要です。慣れるためには人に合わせたステップが必要ですね。給与DXを推進するためにも慣れは必要で、そのためのステップでもあります。
次回は1月19日(金)更新予定です。
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