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第85回 18歳
現役高校生を対象に「物流の授業」を担当した時のこと。
本音は「準中型免許を取得して、すぐにでも運送業界でトラックドライバーとして働いてほしい!」ですが……封印して、このような話をしました。
今は「高校性が就きたい職業」にトラックドライバーは圏外だと思います。
なぜなら「高校生はトラックドライバーへの関心や認識」が薄いはずだからです。
その理由は「高校生活においては直接的な接点がない」からだと思います。
しかし来春には高校を卒業されます。
大学などに進学されても、運転免許を取得して乗用車を運転するようになれば、道路上で無数のトラックを見掛けます。
すぐに会社で働くようになれば、配達や集荷などで社内にいても多くのトラックドライバーを見掛けます。
その時点で良いのです。
トラックドライバーの仕事に関心を抱いたり、正しく認識をしていただければ幸いです。
高校生の皆さん、まず今は「やりたい仕事」や「就きたい職業」に挑戦してください。
そして「やりたい仕事を達成できたら」
もしも「就きたい職業が見当違いだったら」
運送業界はいつでも皆さんのことを待っています。
トラックドライバーは「中途入社」でも大いに実力を発揮できる仕事です。
高校を卒業して就いた職業を含めて「あらゆる経験が活かせる仕事」です。
後日、業界紙で取り上げられた記事の中で、「トラックドライバーへの印象が変わった」や「職業選択肢に入りそう」との受講された高校生のコメントを読んで安堵しました。
その現役高校生向けの「物流の授業」は、運送業界の大人の人にも聞いてほしかったです。
いえ、そうではなく。
運送業界の大人の人に「現役高校生を迎える準備と条件」として、伝えるべきだと感じました。
残念ながら現時点では「圏外」であることが多い理由と、近い将来には「圏内」に入れてもらうために、今からできる努力の方法を。
現役高校生と向き合った経験を、大変おそれながら運送業界の教材や教訓に。
ある運送会社で、地元の高校を卒業したばかりの新入社員を対象に研修を担当した時のこと。
通常のドライバー研修での項目は、トラックの整備点検や運転方法・荷扱いや養生・伝票の役割と扱い・接客マナーなどですが、「18歳の皆さんに何をどのように教えるべきなのか」と悩んだとこと思い出します。
工場内や店内での仕事に従事するなら、管理監督者が近くにいるので「失敗しそうになった時には事前に注意する」ことや「教えながら育てる」こともできます。
運送業界は若い労働力を求めている反面、トラックドライバーは社外でひとりで交通事故の危険と向き合い、車内で自分で安全を確保する仕事です。
高校を卒業したばかりの18歳の社員が入社したら、社内で「誰が・何を・どのように教えるのか」を想定しなければならないことを、身をもって感じました。
思えば、過去の運送業界では社員教育の必要性は今より少なかったのかもしれません。
私がトラックドライバーの頃を含めて、免許証の資格と点数があれば、誰でもすぐにトラックドライバーになれた時代が長すぎたようにも思います。
採用時には社内で教育をする必要がない“中途入社希望の大人”や“他社でのドライバー経験者”を優先してきたことも否めません。
就業人口が減少する中、各業界ではロボットの開発と導入を進めていますが、将来的に運送業界で「運転の自動化」が進んでも「集荷や配達で人と接する仕事」はロボットには任せられません。
ドライバー不足が叫ばれる現在、社員教育で人材を育成することで、ドライバー不足を補えないだろうかと考えています。
今は育成ができる運送会社には求職者や顧客が集まり、一番に生き残れると思います。
若いドライバーを含めて事故ゼロを達成するためにも、イチから教えるのではなくゼロから教えられる風土作りが必要です。
ありがとうございました。
次回は11月14日(月)更新予定です。
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