第76回 法律を守るためにも品質を

トラックドライバーの時間に関する関係法令は、「重大事故の防止」と「ドライバー不足」の観点からも、年々“注目が高まっている”状況です。

トラックドライバーの時間に関する法令厳守に向けて、今やるべきことや、各社内でできる取り組みもあります。

そのひとつは「空車距離を短くする努力」

言うまでもなく。

ドライバーが実車か空車かを問わず、トラックに乗っていれば、拘束時間や運転時間に含まれます。

求める(必要な)水揚げ金額を売り上げるために、働く時間や走行距離が長くなっているのならば、売上の上がらない拘束時間や運転時間を短くすることで、関係法令に対応しやすくなります。

空車距離を短くするには、お客様が時間を調整してくれてでも「○○運送さんにお願いしたい」と「一番に選ばれる努力」をすることであり、その手段は運賃を下げるのではなく品質を上げることです。

しかしながら、品質には法令のような国の指針や行政の指導がなく。

各社様の社内でルールを取り決めて取り組むことしかございません。

「ドライバーが働ける時間を、もっと長くしてほしい」とのご要望も、理解できないことはないのですが…。

その話を高校の先生や高校生の親御さんが聞けば、運送業界への就職斡旋にどのような影響があるでしょうか?

月間拘束時間の293時間以内に対して、月間稼働日数を24日と想定すると…。

「月間拘束時間293時間以内÷月間稼働日数24日=1日の拘束時間は約12時間」

運送業界に若いドライバーを多く迎え入れようとする考え方とは、相反するようにも感じます。

空車距離を含む運転時間の短縮に向けた対策には「長距離輸送から地場配送」への移行が代表例ですが、これは容易なことではございません。

配車担当者は「トラックの回転率をいかに高めるか?」を考えて、時にご自身のポリシーを曲げてでも、長年培った配車スタイルを変更しなければなりません。

「売上重視ではなく利益重視」の配車スタイルが求められ、車両1台あたりの収支にも厳しく目を向けられるようにならなければ務まりません。

高速道路主体から一般道路主体等の運行経路変更により、交差点事故を含む人身事故が増えることも危惧されますので、ドライバー向け安全教育の内容も再考を求められます。

ドライバーは、荷役作業の回数増加に伴い、体力が消耗することへの対処も求められます。

それ以上に運転時間が短くなるということは、客先で地に足をつけている時間が長くなるということであり、荷役回数の増加と同時に、接客回数の増加への対応も求められます。

接車回数の増加により、バック事故防止への更なる安全確認も求められます。

客先でバック事故を起こせば信用失墜にもつながり、運賃の値上げ交渉機会が遠のくことは否めません。

運送会社にとって最大の非効率とは交通事故の発生です。

今やるべきことや、各社内でできる取り組みとして、「安全は効率」であり「安全は法律」ならば「法律は効率」と考えましょう。

法律と効率は決して相反するものではなく。

点呼は点呼簿へ記録に残すことのみでなく。

ドライバーの記憶に残る点呼にしましょう。

せっかく法律で定められた点呼の機会です。

効率よく記憶に残る点呼を実践しましょう。

そう考えれば「法律は最大の効率」です。

また、安全の確保には特効薬のようなものはなく。

すぐには効果を実感しにくい漢方薬のようなもの。

安全確保は長期戦。

「これからやります!」との、取り決める決意だけではなく。

「今日もやります!」との、取り組む熱意が必要な対策です。

長期戦で心が折れそうになった時、周囲からの「法律を守ることへの評価」が支えになるかもしれません。

法律を守ることは、ドライバーを守るための手段です。

ドライバーを守ろうとする目的を達成するための行動が、法律も守ることにも通じるはずです。

「時間×運賃=安全」

安全を確保するには適正な運賃も必要であり、運賃を上げるためには品質を上げること。

先述の通り、品質には法律も行政指導もございません。

「物流の品質とは“人の品”と“作業の質”」

特に「あいさつ」や「身だしなみ」等に代表される“人の品”を高める教育は、コストを掛けずに今すぐ社内で実践できる「安全対策」ともいえます。

ありがとうございました。

次回は7月8日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社プロデキューブ 代表取締役

高柳 勝二

運送会社の管理者育成と安全教育をサポートしている株式会社プロデキューブの代表取締役。
前職は中堅運送会社にドライバーとして入社し18年間勤務。
安全管理・品質管理・開発営業などの実務経験が豊富な物流インストラクター。
現在ではドライバーの交通事故防止による利益確保と輸送品質の向上による単価の向上で得た原資によって、働き方改革を実現するまでを事業領域として、現場を親身にサポートしている。
中小運送会社からの依頼が多い“提案型”研修は、受講されたドライバーや管理者からの「おもしろい・眠くならない・わかりやすい」との評判が口コミで広がり、各社内で開催される社員研修の外部講師として全国45都道府県で講演。
また、全日本トラック協会主催の「全国トラック運送事業者大会」における交通安全対策推進の分科会で、7年連続コーディネータを担当(2013年札幌開催:2014年福岡開催:2015年金沢開催:2016年度米子開催:2017年仙台開催:2018年高松開催:2019年千葉開催)。
2013年度:全日本トラック協会「トラック運送事業における運行管理者のあり方研究会」委員
2015年度:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会ワーキンググループ」委員
2016年度:「貸切バス運転者に対して行う指導及び監督の改正検討ワーキンググループ」委員
2016年度より現在:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会」委員
2017年度より現在:熊本県トラック協会 専門アドバイザー(企業経営・労務管理)
各都道府県のトラック協会や青年部会、支部や協同組合単位での各研修会で講演多数。
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