第11回 顧客ニーズへの対応「ネット通販編」

ネット通販は「当日配送」や「配送料無料」のキャッチフレーズで拍車が掛かり、更に拡大傾向にあるようです。

「何でも・何時でも」そして「何度でも」注文できるようになりました。

買って持って帰る時代から注文すれば配達してくれる時代。

これは運送業界にとって「新たなビジネスチャンス」との見方ができます。

しかし運送業界にとって歓迎すべきことばかりではありません。

先日、某テレビ局から取材を受けました。

それは「当日配送や配送料無料などネット通販は進化して便利になっていますが、宅配・運送業者にはどのような影響がありますか?」との内容。

ここで注目すべき点は原価コストの考え方について。

少量での多頻度配送が主流になってくると、荷主側と運送会社側の原価コストに考え方に差が生じやすい。

・荷主側の原価コストの考え方は「販売個数が増えれば運賃(コスト)が増える」

・運送会社側の原価コストの考え方は「配達件数が増えれば経費(コスト)が増える」

運送会社にとっては「個数が増えることよりも、配達件数(不在時対応を含めた配達回数)が増えればコストが増大」する傾向。

運送会社が荷主との考え方の違い(赤字)を我慢しながら取引を継続していると、荷量が増えれば増えるほど考え方の違い(赤字)が増大。

その結果、経営判断として取引を解消せざるを得ない事態も散見されます。

無理な取引を続けると運送会社では経営難から安全対策への投資が鈍り、社会的にも大きな損失につながるような交通事故が発生する可能性が高まります。

互いの法令遵守を認め合い、事業継続を高め合えるような真のパートナーシップの確立に向けて、運送会社からも明確な意思表示(求められる物流の機能に対する適正な単価を正しく提示)が必要な時代ではないでしょうか?

言い換えると、運送会社は物を運ぶ立場だけでなくモノを言える立場になるべく、社員教育に代表される企業資質の向上が求められる時代。

また、運送業界では年末等の繁忙期において顧客ニーズに応えるための臨時便対応が容易に手配できなくなってきました。

日本国内における輸送力の低下が懸念されます。

次回のコラムでは「顧客ニーズに対応できる輸送力を確保するためのドライバー育成」について綴る予定です。

ありがとうございました。

次回は11月15日(金)更新の予定です。

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この記事の著者

株式会社プロデキューブ 代表取締役

高柳 勝二

運送会社の管理者育成と安全教育をサポートしている株式会社プロデキューブの代表取締役。
前職は中堅運送会社にドライバーとして入社し18年間勤務。
安全管理・品質管理・開発営業などの実務経験が豊富な物流インストラクター。
現在ではドライバーの交通事故防止による利益確保と輸送品質の向上による単価の向上で得た原資によって、働き方改革を実現するまでを事業領域として、現場を親身にサポートしている。
中小運送会社からの依頼が多い“提案型”研修は、受講されたドライバーや管理者からの「おもしろい・眠くならない・わかりやすい」との評判が口コミで広がり、各社内で開催される社員研修の外部講師として全国45都道府県で講演。
また、全日本トラック協会主催の「全国トラック運送事業者大会」における交通安全対策推進の分科会で、7年連続コーディネータを担当(2013年札幌開催:2014年福岡開催:2015年金沢開催:2016年度米子開催:2017年仙台開催:2018年高松開催:2019年千葉開催)。
2013年度:全日本トラック協会「トラック運送事業における運行管理者のあり方研究会」委員
2015年度:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会ワーキンググループ」委員
2016年度:「貸切バス運転者に対して行う指導及び監督の改正検討ワーキンググループ」委員
2016年度より現在:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会」委員
2017年度より現在:熊本県トラック協会 専門アドバイザー(企業経営・労務管理)
各都道府県のトラック協会や青年部会、支部や協同組合単位での各研修会で講演多数。
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