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第143回 今時の高齢ドライバーへの対応
相対的に若手とお見受けする管理者に「お悩みごとは?」と尋ねてみると、指示や指導をする際の苦手な相手として「高齢ドライバー(自身より年長かつ社歴も長いドライバー)」を挙げられます。運送業界では就業者の年齢構造的にも、高齢ドライバーへの安全指導等の機会が増え続ける傾向です。高齢ドライバーに対しては、相手に応じた健康に関する話題の提供や、健康を会話のきっかけにすると、相手の聞く姿勢が良化することがあります。
今時の高齢ドライバーへの対応
相対的に若手とお見受けする管理者に「お悩みごとは?」と尋ねてみると、指示や指導をする際の苦手な相手として「高齢ドライバー(自身より年長かつ社歴も長いドライバー)」を挙げられます。
その場合の高齢ドライバーに対しては、相手に応じた健康に関する話題の提供や、健康を会話のきっかけにすると、相手の聞く姿勢が良化することがあります。
運送業界では就業者の年齢構造的にも、高齢ドライバーへの安全指導等の機会が増え続ける傾向です。
私たちも高齢ドライバーへの添乗指導を通じて、車内での会話や動作から「高齢ドライバーあるある」を多く発見しています。
若年層や新入社員ドライバーには「事故を経験したことがないがゆえの過信」を正すことがありますが、高齢ドライバーやベテランドライバーには「無事故を継続してきたゆえの過信」が垣間見えることがあります。
「会社で決めたこと」の中で「自分だけはやらなくてもよいこと」を、勝手に決めつけている人もいました。
車内での1対1の会話では、長い間、運転席から世間を見てきた本音として、「昔は今よりも気楽で今よりも稼げたのに」との愚痴や、無謀な運転や無茶な仕事を武勇伝のように語られることもあります。
もちろん全ての高齢ドライバーが対象ではありませんが、運送業界が歩んできた時代背景も重なりつつ、高齢ドライバーには特有のドライバー気質があると思います。
その気質を「がんこ」ではなく「こだわり」と表現すれば良いイメージになります。
運転時の車内では会話だけでなく、運転席下部からのエンジン音により、外部の音が聞こえにくい状態です。
だからこそ、常に助手席側の窓を「数mm(ミリ)」開けておき、風の音に交じって聞こえてくる周囲からの接近音にも、気を配らなければなりません。
このような「窓開け確認」は、左後方から接近するバイクへの巻き込み事故防止に効果的です。
「目は180度」しか見えませんが「耳は360度」聞こえますから。
トラックを運転時に死角となる左後方は、サイドミラーを目で確認だけでなく、耳で音も確認しましょう。
加齢による反応や操作の遅れを補うためには、早目の確認(認知)により操作の開始を早めることです。
また、窓開けによる耳を使った音の確認において、自車のタイヤの溝に挟まった小石を音で気付けたとの事例もありましたのでお勧めです。
今週の出張先で、タクシーを利用した際のこと。
「いかにもご高齢」とお見受けする方が運転されていました。
扉が開いて耳に飛び込んできたのは、大音量のラジオの音。
これは乗客である私が乗車した際にラジオを切られたので、一瞬の出来事でしたが……。
運転を始めてからしばらくしてからのこと。
方向指示器を戻し忘れたまま、長らく直進を続ける場面がありました。
先ほどの大音量ラジオは切っておられたので、車内には方向指示器の作動状態を示す「カチ・カチ・カチ・カチ」との作動音が響く中で、ひたすら直進をされています。
そういえば、目的地を告げた際にも、後部座席の私に対して目を合わせるのではなく、耳を向けるような仕草。
ひょっとしたら、安全に必要な聴力が低下されていたのかもしれません。
トラックドライバーも、お客様との会話において、問い掛けが聞こえていなくて返事をしなければ「無視している」と思われたり。
必要以上に何度も聞き直すことや、「えーっ?」「なんですか?」との受け答えが大きな声であればあるほど傲慢な態度に勘違いされることも危惧されます。
安全と品質の両面において、聴力にも注力しましょう。
最後に。
法令では65歳になれば適齢診断の受診が定められていますが、現場では60歳になった時点で安全教育の機会を設定されることを提案します。
ありがとうございました。
次回は3月8日(金)更新予定です。
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