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第184回 運行管理者のプロの仕事
運行管理者の本来の役割はドライバーを交通事故から守ること。プロの運行管理者の安全や伝達の技量によって、ドライバーの事故率や定着率の数値に反映されます。親身になって指導を続けるのが運行管理者の仕事です。
運行管理者のプロの仕事
運行管理業務の目的は言うまでもなく。
ドライバーの配送先へ予定どおりの到着だけでなく、ドライバーが車庫へ無事に帰着することを狙うこと。
対する取り扱い業務を含む配車担当者は、どちらかといえば出荷先や配送先への到着を追うことが多く、その点が運行管理者との最大の違いだと思います。
無事故記録を長く更新している安全な事業所には必ず「プロの運行管理者」がいます。
その仕事ぶりはトラックの現在地をパソコンの画面上で一台一台監視するのではなく、休日の過ごし方を含めて、ドライバーの心身の状態や家族を含む生活の状況にも関心を持ちながら、一人一人のドライバーと接しています。
プロの運行管理者は、ドライバーが交通事故を起こせば自身の発信や確認を含む教育のやり方を真っ先に反省し、検証して改善しようとします。
- 出発点呼時のドライバーの送り出し方を変えてみる
- 月次のドライバーミーティング資料を修正してみる
- 添乗指導時の記録表の確認項目を追加してみる
これらは「自身の運行管理業務によって、ドライバーによる交通事故ゼロを狙っている」といえます。飛行機の管制官のようなプロの運行管理者としてのプライドがあるゆえんでしょう。
プロの運行管理者は、交通事故を起こしたドライバーを責めることよりも、いつもドライバーを交通事故から守ることを優先します。
だから、事故を起こしたドライバーに対して、社内で決められた安全ルールが「なぜできないのか?」と責めるのではなく、ミーティングで「どのようにしたら実施できるのか?」を全ドライバーで議論して、全員参加で全員安全になることを優先します。
運行管理者の安全や伝達の技量は、ドライバーの事故率や定着率の数値として反映されます。
お客様が口に出さないことや警察官が取り締まらないことも、ルールに反していれば指摘をしてクレームや交通事故を未然に防止するのが運行管理者の仕事であり、その仕事ぶりはドライバーの事故率の削減に比例します。
無事故での帰着を「あたりまえ」と思わず、ドライバーをねぎらいながら「今日も無事故でありがとう」と感謝することも運行管理者の仕事であり、「明日もがんばろう」とやる気を引き出すこともドライバーの定着率に良い影響を与えます。
交通事故を起こしたいと思うドライバーはおらず、ドライバーの誰もが長く働きたいと思って今の会社に入社しているはずです。
よってドライバーの事故率を下げて定着率を上げることで、ドライバーの願いをかなえるのが運行管理者の仕事といえます。
しかしながら、運行管理者の仕事とは口うるさくなるが故に、ドライバーにとって嫌がられる(いやがられる)存在になるのが仕事中の姿かもしれません。
それでも親身になって指導を続ければ、嫌われない(きらわれない)のが運行管理者の仕事です。
なぜならば、運行管理者の役割とは交通事故を起こしたドライバーを責めるのではなく、ドライバーを交通事故から守ることが本来の役割だからです。
ありがとうございました。
次回は10月30日(金)更新予定です。
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