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第181回 教えると教わる
誰かが誰かに何かを教えることで、教わる人だけでなく教える人も成長できます。誰かに教えてもらってできるようになったことは、同時に教え方も学んでいるはずです。
教えると教わる
誰かが誰かに何かを教えることで、教わる人だけでなく教える人も成長できます。
誰かに教えようと言葉に出して説明することで、なんとなく理解や実践をしていたことを自身で把握して改善しようとしたり、自身の不明点を把握して正しく理解したりする機会になります。
誰かに正しい仕事を伝えようとしていることは、自身の仕事の姿を確認して改善していることと同じです。
だから「指導は人のためならず」なのです。
運送会社の事例として、安全の管理者に選任された人にはまず「自身が安全になれること」が利点であり、つぎに「周囲の人を安全にすること」の役目があります。
なぜなら、例として「指差呼称確認」を社内でルールにしたとすれば、最初に指差呼称確認を実践すべき人は推進役である安全の管理者だからです。
点呼での免許証の確認時や運行指示書を渡す際など、ドライバーを前にした記載事項の確認時に指差呼称確認を率先垂範できる機会があるはずです。
管理者自ら「できていない」ことは、ドライバーには指導ができません。
管理者が「率先してやらない」ことは、ドライバーへの指導として伝わりません。
だから「管理者以上のドライバーは育たず」となります。
未経験の新入社員ドライバーを迎えた運送会社において、最初の変化で多い現象は「教えることを通じて先輩ドライバーが一気に伸びる」、もしくは「教え方の不備が影響して新入社員ドライバーが思うように伸びない」かのどちらかです。
それは、素直な新入社員ドライバーは先輩ドライバーのまねをしようと努力をするからであり、言い換えると先輩ドライバーの行動の範囲内でのみ新入社員ドライバーが成長するからです。
だから「先輩ドライバーの平均以上の新入社員ドライバーは育たず」となるのです。
かつて仕事は「見て覚えるもの」と教えられたものですが、今は仕事を教える時代です。
誰かに教えてもらってできるようになったことは、同時に教え方も学んでいるはずです。
「もしも18歳の高卒社員ドライバーが入社して、あなたが運転する車両の助手席に乗っていたら、車内で何をどのように教えますか?」と社内で問うてみましょう。
まずは、先輩ドライバーの教え方がかわってきます。
つぎに、先輩ドライバーが教え方をわかってきます。
自らが「実践するプロ」が多数在籍している運送会社であっても、誰にでも「教えられるプロ」がいないのは、後進が育ちにくい職場環境の特徴です。
ドライバーが「自ら実践するためのマニュアル」も有効ですが、ドライバーが「誰でも誰にでも教えられるプログラム」を実施することも現代の職場では機能するはずです。
ありがとうございました。
次回は9月18日(金)更新予定です。
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