第31回 信頼されるリーダーのシンプルな特徴

■ リーダーシップの大前提

多くの人が、仕事や生活面で、多かれ少なかれ「リーダーシップ」を発揮する場面があるはずです。経営者はもとより、部長や課長、店舗のマネージャー、プロジェクトの責任者、あるいは部下や後輩の指導をする立場、家庭では子供を育てる親として・・など様々な役割で。人を導き、良い方向へ向けてチームを動かすために何が必要なのでしょうか。迷われている方も多いと思います。

リーダーシップにはいろいろな研究がなされています。歴史的研究、政治・社会的研究、人間心理的研究など。リーダーシップは壮大な研究対象です。しかし、ドラッカーは、まずシンプルな着眼点から「リーダーシップの本質」を定義しました。彼は、このように語っています。

「リーダーの最も基本的な条件は、『フォロワー』(信頼してついてくる人)がいるということだ」

肩書きや役職に「リーダー」がついていたとしても、心の底からその人を信頼してついていきたいと思う「フォロワー」がいない、ということがよくあります。会社でも、政治の世界でも同様です。いくら肩書きがあっても、リーダーシップの理論を体現していたとしても、結果として「フォロワー」が生まれていなければ、リーダーとは言えません。

では「フォロワー」「信頼してついて来てくれる人」は、どのような条件が整うと生まれるのでしょうか。ドラッカーは、次のように語っています。

「信頼するということは、リーダーを好きになることではない。常に同意できることでもない。リーダーの言うことが真意であると確信を持てることである。それは、真摯さという誠に古くさいものに対する確信である。」
(ドラッカー 「未来企業」より)

好かれる必要も、必ずしも全面的に同意を得る必要もない。大事なのは、自分の言っていることが「真意」であると分かってもらうことだ、と言っています。「言う事が真意である」とはどういうことでしょうか。それは、

「自分の言葉で、自分が心から思っていること、願っていること、実現したいことを語る」

ということだと思います。

■ 「心から、強く想っている」ことを伝える

当たり前のようなことですが、「心から想っていることを伝える」のは簡単ではありません。社内外でプレゼンテーションをするとき、部下を指導するとき、家庭で子供たちに教え諭す時。本当に、自分自身の内面から出てくる言葉で、本当に望んでいる事を語れているか。

「かっこいい表現や、かっこいいプレゼンスタイルで話したい」
「上司によく見られたい、低く評価されたくない」
「商売につながりやすいことを言いたい」
「人間関係や社内政治で不利にならないように話したい」
「とにかく厳しく言って、従わせたい」

など邪念が入りやすいのが現実です。単純に感情にまかせて怒ったり、叱ったりしてしまうこともよくあるはずです。
 
一方で、本当に人の話に心動かされるというのは、その人が軋轢(あつれき)や誤解を恐れず勇気をもって「真意」を伝えようとしている時だと私も思います。たとえ言葉がたどたどしくても、奇麗なプレゼンテーション資料がなくても、その人の本当の想いや葛藤があふれ出ている言葉には、多くの人が心動かされます。ドラッカーの言うように、その考えに完全に同意するとか、その人を好きになるということでなくても、「支えたい」「応援したい」と思えるはずです。それが、リーダーとして不可欠な要素なのだと思います。

■ 「真摯」な人とは、一貫して、想いや理想を貫ける人

真意を伝えるためには、まず自分自身の内面を深く、じっくりと見つめることが大切です。自分は何を目指しているのか。どうありたいか。何を目の前の人に心の底から伝えたいのか、じっくり自問することがリーダーには求められます。その上で、丁寧な言葉で、誠意をもって、相手にその想いを伝えることです。

上記のドラッカーの言葉にある「真摯さ」とは何でしょうか。本コラム第22回「今こそ、『真摯さ』について語ろう」でご紹介したように、「真摯さ」のもともとの英語は「Integrity (高潔、一貫性)」という言葉です。「一貫性」がある人というのは、自分の願うことや志、理想をぶれずに一貫して貫ける誠実な人です。場面や相手に応じて言う事の根幹を変えたり、表と裏で言っていることが違ったりすることがない人です。なので、ドラッカーは「真意を語る」ということを「真摯さ」であると言っているのです。

第22回 今こそ、「真摯さ」について語ろう

私自身も仕事柄、人前で話すことが多いです。いわば「完全アウェー」といえるような状態の現場でも、関係者の方々に語り、働きかけ、何らかの良い方向に進むきっかけを作るのが私の仕事です。日々私は「リーダーシップ」を試されています。そんな私が、いつも支えられるのが、この「真意を語る」というドラッカーの教えです。まず何よりも「心から自分が思っていることを、誠心誠意、心をこめて伝える」ということを心がけています。

ぜひ皆さんも試してみてください。ご自身が語っていること、言葉、表現は、本当にご自身が伝えたい気持ちや意図を映しているでしょうか。「真意」と言えるでしょうか。もし少しでも違うと感じたら、「自分の本当の気持ちは?真意は?」と確認してみてください。きっと、皆さんの真意が込められた言葉には「力」が宿り、多くの人の信頼を得て、物事が前に進む原動力になっていくことと思います。

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次回は7月3日(木)の更新予定です。

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