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第5回 案件獲得力を強化させるには? …潜在課題へのアプローチが売上を左右する
「案件」=問題となっている事柄。審議・検討しなければならない事柄
営業において「案件」を獲得するということは
= 自社が課題解決できる可能性がある顧客の問題となっている(検討しなければならない)事柄を獲得すること。
~ 「10社まわって、案件が1社」 ~
ある企業で、新商品を営業社員に促進させたところ10社に促進し、案件を獲得できたのが1社でした。
本当に10社中9社は「問題となっている事柄」がなかったのでしょうか?
営業社員に状況を聞いてみると
・ 「顧客が必要ないと言っていました」
・ 「悩んでいる顧客は多いけど、この商品は合わない」
・ 「予算をとってもらえない(検討してもらえない)」
・ そもそも課題が聞けていない
しかし、自分の会社のことを考えてみてください。
営業部門では、
アプローチや提案の量、営業社員スキル、業務環境や効率化、情報共有やマネジメント・・・
人事部門では、
業務効率や社員のスキルアップ、勤怠や残業管理、人事評価や昇給・昇進・・・
など、多種多様な課題を抱えていて問題のない部分がないぐらい。
それなのに、10社まわって1社しか合致する課題がない・・・
これだけいろんな課題が存在するということは、ほとんどの課題が、
・ 顧客の中で明確でない
・ 顧客自身で把握できていない
・ 顧客の中で検討する段階にまで至っていない
予算を確保し検討に至っている課題は氷山の一角に過ぎない。海面の下には膨大な量の明確でない、把握できていない、検討するに至っていない課題が潜っているのです。
氷山の一角である課題(顕在)を獲得することは当然のこととして、この膨大な量の課題(潜在)から自社にとって適した課題を獲得することが受注の前提となる案件の獲得を左右するのです。
高度成長期のように、顧客が似たような課題を抱え、多方面に投資する余力があり、競争が今日ほど激しくない時代では、「顕在課題」だけで多量の案件を獲得できたかもしれません。
しかし、今日のように顧客が多種多様な課題を抱え、投資を選別している中では、現在検討している「顕在課題」だけでは売り上げに見合う案件の獲得は難しい。
~ つまり、残りの9社からどうやって案件を獲得するかが重要 ~
そのためには、「潜在課題」を発掘し(把握させ)、顕在化(明確化)させ、検討させる営業が必要です。
参考資料:課題解決型営業のプロセス(株式会社セントリーディング Webサイト)
では、営業社員がどのようにして案件を獲得しようとしているのでしょうか?
1.商品の良さをアピールして検討してもらう
2.何か問題がないかヒアリングして獲得
3.何度も足を運んで仲良くなって(関係を作って)検討してもらう
皆さんも自社の営業社員に聞いてみてください。
ほとんどの営業社員が上記1~3のような答えをします。
ただ、これではたまたま検討している課題(顕在課題)に対する案件をラッキーで獲得できるだけです。つまり10社中の9社は捨てているということ。
潜在課題とは、
「明確になっていない、把握していない課題」「検討する段階に至っていない課題」
まず、課題を把握させ、明確にさせるプロセスが必要です。そのためには、課題の原因になっている事柄やその原因が生まれる事柄から理解させていかなければなりません。
例えば、「営業業務の効率化」という課題であれば、「営業の業務環境、体制」や、その業務環境や体制が生まれる「営業戦略や計画」「競合、市場環境」などから理解させることができます。そして、その課題を検討させるプロセスが必要です。
顧客はなぜ、その課題を検討しなくてはいけないのでしょうか?これを考え、理解させることで検討させることができるのです。
よくこんなことを営業社員から相談されます。
「コスト削減を提案しても、導入コストがかかるから売れない」
当たり前です。
コスト削減するのに、コストがかかる・・・から売れない。
顧客にとって「コスト削減」は目的ではありません。コスト削減を検討しなくてはいけない目的や必要性が他に存在するのです。そのためにコストを使うのです。
これを理解させなければ「コスト削減を提案しても、コストがかかるから売れない」という当たり前な結果になってしまいます。
もし、潜在課題に対する案件を獲得することができたら・・・
残りの9社から1~2件の案件を獲得することがでたら案件の量は2~3倍です。単純に比例するものではありませんが、案件の量が2~3倍に増えていたら売上はどのくらい増えていたでしょうか?
次回は2012年5月初旬に更新予定です。
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