第112回 業務効率という言葉でなく具体的なネタが説得力を強化する

課題や商品の必要性を理解させる……。よその会社のことを理解させ説得することは容易なことではありません。「業務効率」や「生産性」をアピールしてもなかなか理解してもらえない。今回は提案営業や課題解決型営業にとって必要な説得力の六つの要件のうち「具体性」についてお話しします。

業務効率という言葉でなく具体的なネタが説得力を強化する

「業務を効率化できます」「生産性を向上できます」「コストを削減できます」
営業現場でよく聞きます。

しかし、一生懸命に説明しても理解してくれないお客さんが多い……。

そして、営業担当者は
「お客さんの意識が低い」「現場のことを分かっていない」「他に重要な課題があるので理解してくれない」と言っている。

はじめから、「意識が高い」「現場のことを分かっている」「課題の重要性も分かっている」お客さんであれば、営業力は必要ありません。
そういうお客さんであれば、商品を説明すれば買ってくれますので……。

意識が低い、現場のことを分かっていない、課題の重要性を分かっていないお客さんが多いから理解させる力や説得する力といった営業力が必要なのです。

どうしたら理解させることができるのでしょうか?
どうしたら商品が必要だと説得できるのでしょうか?

こんな社内提案していませんか?

ある日、小売業界を担当している営業Aさんが総務部長Bさんにノートパソコンを配布してもらえるよう説得していました。
自分の会社の総務部長を説得しようと……。

営業担当Aさん
「営業社員にノートパソコンを配布してもらえませんか?」

総務部長Bさん
「なんで? 今まで配布しなくても仕事できていたんだから必要ないだろう」

Aさん
「外出が多くて、外出中に仕事する必要があるんですよ」

Bさん
「スマートフォンを配布しているだろう」
「それに今年は業績が良くないから予算をとれないよ」
「営業が売上を上げてからだろ」

Aさん
「スマホを配布してもらって外出中に連絡できるようになりましたけど、業務効率にはならないんです」
「営業は外出が多いし、社内調整も多いから外出中に仕事できるようにして業務効率を上げないと、提案活動に影響しますよ」
「売上を上げるためにもノートパソコンを配布して業務効率を向上しないと」

Bさん
「業務効率って言うけど具体的になんで必要なんだよ?」
「営業部には2台ノートパソコンがあるじゃないか。必要なときは持ち出して使っているだろう」

Aさん
「いや、外出も多いし、利用するにも社内調整が多いから負担も大きいんですよ」

なぜ必要か、具体的な理由を掲げて説得する

みなさんが会社にノートパソコンを配布してもらいたいと説得するときはどうしていますか?
もっと具体的に必要な理由を説明しながら説得しようとしませんか?

  • 1日や1週間の訪問件数や遠方に出張していること
  • 訪問先が郊外のスーパーが多く移動に時間がかかること
  • お客さんの小売り本部への提案書、各店舗への説明資料など、資料作成が多いこと
  • 提案書や説明資料は商品企画部に確認しながら作成するので時間がかかること
  • 夕方、会社に戻ってから上司や商品企画部とミーティングが多いこと

そして、

  • お客さんへの提案書の提出が遅くなって、競合他社に受注をとられてしまったこと
  • 残業が多くなっていること

を具体的に説明しながら、
外出中に提案書や説明資料の作成、社内調整をするためにノートパソコンが必要と説得しようとしませんか?

営業には説得力の要件の一つ「具体性」が必要

では、営業でお客さんを説得するときはいかがでしょうか?

「営業は外出が多いので、業務の効率化が重要です」
「外出中に仕事ができるので業務を効率化できます。生産性を向上できます」
「営業業務の負担を軽減できます」
……

社内で説得するときは
「外出中に仕事できるようにして業務効率を上げないと」ということだけでなく、
「お客さんの小売り本部への提案書、各店舗への説明資料など、資料作成が多いこと」や「提案書や説明資料は、商品企画部に確認しながら作成するので時間がかかること」「お客さんへの提案書の提出が遅くなって、競合他社に受注をとられてしまったこと」を具体的に説明しながら説得。

しかし、お客さんに対しては、「業務効率」「生産性」「負担軽減」と言うばかり。

意識が低い、現場のことを分かっていない、課題の重要性を分かっていない相手を説得するためには、現状や必要性を具体的にイメージさせなければなりません。
だから、社内では「お客さんへの提案書の提出が遅くなって、競合他社に受注をとられてしまったこと」を具体的に説明するのです。

お客さんを説得するときも同じです。

「うちの商品のメリットはコスト削減です」と説明している営業担当者が多いのですが、「コスト削減」というのであれば「何のコストがどのように削減できるのか」をお客さんの事業に合わせて具体的に説明しなければ分かりません。

どのくらいコスト削減できるのか分からないのに商品の価格が1,000万円かかると言われても、コスト削減どころか余計にお金がかかる……としか思われません。

自分や自分の会社のことではなく、お客さんのことなので具体的なことを知らない。
そのため、「業務効率」「生産性」という抽象的な言葉だけで説得しようとしている営業担当者が多く見受けられます。

「営業の業務効率化は必要ですよね」「営業業務を効率化できます」ではなく、
「小売り本部への提案書や各店舗への説明資料の作成を外出中にできるようにして、提案活動の時間を増やせるように業務効率化を進める必要がありますよね」と説明しましょう。

お客さんを説得するためには、説得力の六つの要件の「具体性」が必要です。
そのためには、あらかじめお客さんのことを具体的に聞き、調べ、想定し「例えば」のネタを準備しましょう。

説得力を強化する方法は……

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次回は9月20日(火)更新予定です。

今月のクイズ(営業のクイズ)

コミュニケーション
あなたは営業マネージャーです。
部下Aさんの売り上げが伸びない。いつも話が長くて分かりづらいからお客さんに理解してもらえないんだろう。
……どうしよう?

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この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

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