第111回 展示会では、商品紹介でなく顧客の課題について会話する

展示会に出展したのに見込み顧客を獲得できない、売上が上がらない。この原因は展示会での接客方法にあります。多くの会社が商品紹介、名刺交換に一生懸命になっています。しかし営業成果に結びつけるためには商品紹介よりも「多くの顧客と課題の会話」の方が有効です。今回は展示会での接客方法についてお話しします。

展示会では、商品紹介でなく顧客の課題について会話する

コロナ禍により在宅ワークが進み、新規開拓営業が進まない。
見込み顧客を増やそうとプロモーションに力を入れている企業が増えています。
Webやメルマガ、セミナーや展示会……。

センサーメーカーのセントコーポレーションが新商品の発売に合わせて展示会に出展していました。
今回の展示会で多くの見込み顧客を獲得したい……。

展示会当日

開場の前に全員が集まってミーティングしていました。

新商品販売部長
「おはようございます」
「この展示会で多くの見込み顧客を獲得するために、より多くのお客さんに商品を紹介するように」
「そして展示会後にアプローチできるように、より多くのお客さんと名刺交換をしてください」

「それでは、展示会の手順を説明します」
「ブースに入った人、またはブースの前で立ち止まった人には声をかけてパンフレットを渡してください」
「パンフレットを渡したら、まずは名刺交換です」
「名刺交換をしたらパンフレットの説明をして興味がありそうだったらデモに誘導してください」
「デモは、デモンストレーション担当が引き継いでください」
「接客が終わる時には必ずアンケートを記入してもらってください」

「それでは頑張っていきましょう!」

展示会中

営業担当Aさん
ブースの前でパネルを見ているお客さんがいたので、
「パンフレットをどうぞ」とパンフレットを渡した後に名刺を交換して
「当社のセンサーは検知精度が高いので……」とパンフレットを見せながら説明し
「よろしければデモンストレーションもございますので」と半ば強引にデモに誘導。
「桜井さん、デモンストレーションお願いします」とデモンストレーション担当に引き継ぎ……そして次のお客さん。

展示会後

新商品販売部長
「今回の展示会ではみなさん本当によく頑張ってくれました」
「おかげで昨年の展示会の2倍も名刺を集めることができました」
「この後の営業活動も頑張ってください」

ところが……
電話やメールをしてもアポイントがとれない。
アポイントがとれても見込み顧客を獲得できない。

営業担当Aさんがテレアポ
「先日は当社のブースにお立ち寄りいただきありがとうございました」
「ごあいさつさせていただきました○○です」
「来場者が多くて会場が混んでいたようですが、ご興味のあるブースを見ることができましたか?」
と軽く雑談した後
「あらためて、当社商品のご紹介に伺いたいのですが」

お客さん
「取りあえず、展示会でデモを見ましたので社内で検討してみます」
「必要だったらお声がけしますので、その時はよろしくお願いします」
と体よく断られていました。

なぜ、アポイントがとれないのでしょうか?
なぜ、アポイントがとれても見込み顧客を獲得できないのでしょうか?

多くのお客さんに商品を紹介し、多くのお客さんと名刺交換できたのに、セントコーポレーションは何が良くなかったのでしょうか?

みなさんも考えてみてください。

展示会でのセントコーポレーションの状況

多くのお客さんに紹介でき、多くの名刺を集めることができた。
しかし、アポイントや見込み顧客の獲得といった営業成果につながらない。

この営業成果につながらない原因を展示会自体のせいにしていることが多い……。

  • 来場者が少なかった
  • 来場者は同業他社が多く情報収集目的できている
  • 時期が良くない、お客さんが検討する時期を逃している
  • ブースの位置が悪い、パネルが悪い

……など

本当に悪いのは来場者でも時期でもブースの位置でもありません。
接客方法です。

展示会で目指すべき接客方法とは

Aさんは、より多くのお客さんに商品を紹介しました。そして、より多くのお客さんと名刺交換しました。
商品紹介、名刺交換に一生懸命になって、
お客さんのことについて聞いていません。
お客さんの課題について聞いていません。

Aさんはお客さんの課題を知りません。そして、お客さんはデモまで見ているため商品についてある程度知っています。
Aさんがテレアポでできることは「商品を紹介したい」
しかし、お客さんは「ある程度知っている」

たまたま商品を探しているお客さんであればアポイントを獲得できますが、そうでなければアポイントになりません。
展示会には商品を探しに来たという人よりも今後のために情報収集しに来ている人が多いのです。

展示会で、商品紹介でなくお客さんの課題について会話していたら、当然、お客さんの課題を知っている。
すると、お客さんの課題に対して適切な切り口(解決策や有益な情報提供など)でアポイントを獲得できます。

実際に展示会に行ってみると、お客さんの課題について聞きもせず、商品紹介ばかりしている会社がほとんどです。
業界や事業内容すら聞かれないことも多い……。

商品紹介ばかりしていると、アポイントを獲得できないだけなく、その後の流れが変わり、仮に獲得できたアポイント(商談)でも見込み顧客を獲得しにくくなるのです。

展示会で課題を聞かず商品紹介。

すると、課題を知らないので商品を紹介してアポイント獲得。
すると、課題を知らないので商談で商品紹介しかできない、課題を聞き出せない。

展示会で課題について会話。

すると、課題を知っているので課題について会話し、より具体的な課題を聞いてアポイント獲得。
すると、より具体的な課題を知っているので、商談では商品紹介でなくお客さんの課題解決の話ができる。

展示会で売上を上げたいのであれば、
「多くのお客さんに商品を紹介する」のではなく「多くのお客さんと課題について会話をする」ことが大切です。

補足

アンケートで課題を把握しようとする会社が多いのですが、接客時の会話が大切です。

アンケートで課題をチェックしても、お客さんの課題に関する情報を知らない。
展示会後のテレアポで「アンケートで……という課題にチェックされていたので、お電話したのですが」と切り出しても、その後にできることは「当社のセンサーは……」と商品を紹介することぐらいしかできません。
アンケートで課題をチェックしてもらっただけでは、お客さんと課題についての会話はできません。

展示会で見込み顧客を獲得する方法は……

「営業のアドバイス」個人・法人会員サービス

次回は8月17日(水)更新予定です。

今月のクイズ(営業のクイズ)

顧客の知識・情報
あなたはスマートフォンの営業です。
大手食品メーカーから問い合わせが入り、来週に訪問する予定。でもけっこう忙しい。
……訪問までに何をする?

関連するページ・著者紹介

この記事のテーマと関連するページ

営業支援システムテンプレート

一件一件のお客様とじっくり商談を行う、案件攻略型営業スタイルにピッタリの営業支援システムです。詳細の案件情報管理によるステップを踏んだ戦略的営業スタイル、部門・担当者ごとの予実績管理による数字の組み立てなど、大塚商会の営業ノウハウの一端を組み込んだシステムです。営業力強化に取り組みたい企業におすすめです。

営業支援システム(SFA) 営業日報管理(Daily Report)テンプレート

「営業日報を手書きやExcelで管理しており、顧客ごとの商談が分からない」「訪問件数は多いが実績が上がらない」このようなお悩みをお持ちの方向けに、おすすめのシステムです。1日の営業日報を登録するだけで、顧客ごとの商談経緯を把握でき、効率化のポイントが分かります。ルート型営業に最適です。

この記事の著者

株式会社セントリーディング 代表取締役社長

桜井 正樹

セールス・マーケティング企業で15年以上、法人向け提案型・課題解決型営業を専門にコンサルティング、アウトソーシング、教育事業に携わり、株式会社セントリーディング設立。IT企業、設備機器メーカー、販促・マーケティング会社など150社以上の営業強化を経験。
株式会社セントリーディング

公式Facebookにて、ビジネスに役立つさまざまな情報を日々お届けしています!

お仕事効率研究所 - SMILE LAB -

業務効率化のヒントになる情報を幅広く発信しております!

  • 旬な情報をお届けするイベント開催のお知らせ(参加無料)
  • ビジネスお役立ち資料のご紹介
  • 法改正などの注目すべきテーマ
  • 新製品や新機能のリリース情報
  • 大塚商会の取り組み など

お問い合わせ・ご依頼はこちら

詳細についてはこちらからお問い合わせください。

お電話でのお問い合わせ

0120-220-449

受付時間
9:00~17:30(土日祝日および当社休業日を除く)
総合受付窓口
インサイドビジネスセンター

ページID:00228538