第152回 異常が正常

人間社会に目を向けた時、「異常が正常」であることは意外と多いような気がします。今回はあえて「正常」だと思い込んでいることが本当に「正常か?!」と問い直し、「異常」とされていることが実は「正常」であるようなことを、今注目すべきキーワードに向き合いながら考えていきたいと思います。

異常が正常

こんにちは!

9月に入っても、まだ猛暑日があるような暑さが続いた2024年の夏でしたね。

ここ数年、何かといえば「100年に一度」とか「異常気象」といったニュアンスでの表現が目につきます。今年の気温だけでなく、雨の降り方、台風の進路も含めて「異常気象」が「異常」ではなくなっていくことを何度か経験していくことを通じて、慣性の法則ではないですが、知らず知らずに「正常」になってしまう「人間の“悲しい性”」を感じてしまいます。

そういう意味では「異常が標準」になってきているということになるのでしょうか。そして、人間社会に目を向けた時には、少し違う意味で「異常が正常」であることは意外と多いような気がします。

日本でも岸田文雄首相の退陣表明から、「派閥主導ではない総裁選挙」になっているわけですが、その表現自体が既に自民党の「政治はカネがかかるもの」という前提があったわけですので、時代の変化と共に、その「正常」が正常ではなく、それまでの「異常」が正常になり得るということを顕著に表していることになるのではないでしょうか……

ということで、今回はあえて「正常」だと思い込んでいることが本当に「正常か?!」と問い直し、「異常」とされていることが実は「正常」であるようなことを、今注目すべきキーワードに向き合いながら考えていきたいと思います。

民主主義におけるポピュリズムの台頭

自由民主党の総裁選挙とは比較にならない程、世界中からの注目を浴びているのが、アメリカ大統領選挙ではないかと思います。

バイデン大統領の撤退表明を受けて、代わって登場したハリス候補とトランプ候補との一騎打ちの状況なわけですが、少なくともトランプ候補は世の中の不満をあおり、そのような不満を抱いている多くの大衆を味方につけるポピュリズム(大衆迎合)の代表格とされています。

そして、現在はアメリカだけではなく、ヨーロッパを含めて各国でポピュリズムの台頭が政治の主導権を握りつつある状況があることも否めません。

いわゆる「民主主義の3原則」の論点とは異なる視点かもしれませんが、やはり「目の前の自分の損得」を起点にしていては民主主義などというのは成立しないように思います。「長期的な時間軸」や「理想を目指す」といった理念の共有が大前提にないといけないように思います。

少なくとも、相手候補とののしり合う、まるで子供のけんかのような論戦の結果に本来の「民主主義」があるとは思いづらいのではないでしょうか。

経済資本主義からの進化

同様に「経済資本主義」も現在の日本社会では、疑う余地のないくらい「標準的な考え方」であるかと思います。

「経済資本主義」は経済活動が市場の自由な競争に基づいて行われるシステムのことをさしています。ただ、これさえも今、本当に「正常なのか?」と問い直す時期に差し掛かっているのではないかと言われています。

経済資本主義は、市場の効率性や経済成長を重視し、個人の自由と競争を重視した「自由な競争」が前提ですので、結果的には「自分さえ得すれば良し」、あるいは「そのための成果(一般的には金銭的報酬)さえ上がれば良し」とされる極端な考え方に振れることもありえます。

今の日本では、ごく当たり前の「経済資本主義」でさえも、その極端さに異を唱える人たちが増えていることも事実です。

そして、彼らの提唱しているものの一つに「共感資本主義」という考え方が挙げられます。「共感資本主義」は、「経済資本主義」と比べて社会的な共感や公平性を重視し、社会的課題に向き合っていく対応が重視されています。

今回のサンプルとしては「民主主義」と「経済資本主義」を例に挙げましたが、私たちの身の周りには無意識のうちに「常識・当たり前」と疑うことのない事実が数多く転がっています。

評論家・山本七平氏の名著『「空気」の研究』では、論理や理性を超えたムードに流される日本に警鐘を鳴らしていました。今もその傾向は大きくは変わっていないのではないでしょうか。

私たちの会社の中には「業界の常識」があり、その業界にいる「私たちの会社の常識」があります。さらにいえば、その会社で育ってきた私たち社員にも、知らず知らずのうちに「私たちが縛られている常識」があります。

一般的には「バイアス」と呼ばれ、私たちの思い込みを指し示しています。その「バイアス」の影響で、私たちは「自分の異常性が異常であること」に気付かなくなってしまいかねません。だからこそ、自分自身の「業界の考えと違う“異常”」「周りと違う“異常”」から逃げずに向き合っていく必要があるのではないでしょうか……

今の「正常(常識)」が本当に正常なのか? 自らに問い、自身の主観と向き合うことが必要であり、「異常が正常」という自らの判断があるのであれば、それを貫く姿にも向き合って、本当に自分の価値観・考え方を支えている気持ちとロジックをひも解いていくことが、これからの未来を切り拓いていくことになるのではないかと思います。

引き続き、よろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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