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第64回 「当たり前のことを当たり前にする」~2016年度日本経営品質賞受賞企業に学ぶ~
今回は上記受賞企業トップの方のスピーチを中心に、今、「優れた経営」と呼ばれている会社が、今の時代に何を考え、どんな方向に向かっているのかをご紹介させていただきたいと思います。
「当たり前のことを当たり前にする」~2016年度日本経営品質賞受賞企業に学ぶ~
皆さん、こんにちは。
三寒四温の日が続いていますが、体調はいかがでしょうか。
毎年2月に日本経営品質賞の表彰式と顧客価値経営フォーラムが開催されていますが、久しぶりに参加させていただく機会に恵まれ、昨年度受賞企業3社の経営者によるお話を聞かせていただきました。
2016年度 日本経営品質賞 受賞企業 紹介
今回は上記受賞企業トップの方のスピーチを中心に、今、「優れた経営」と呼ばれている会社が、今の時代に何を考え、どんな方向に向かっているのかをご紹介させていただきたいと思います。
経営品質への地道な取り組み
今回の受賞企業3社の経営者は、いわゆる、サラリーマン社長、2代目社長、創業者と、同じ経営者とはいえ、そのキャリアは三者三様という方々でした。
当然、経営品質に取り組むきっかけや思いは異なっています。
一方、こうした経営者としての出自は異なる3名の方の考え方において、共通している視点・切り口があったことも事実です。
一つは、3社とも「経営品質」に取り組まれて12~13年の時間を費やしてきて、今回の受賞という成果につながったということです。その間に、それぞれの会社の取り組みを継続して進めていくうえで紆余曲折があったわけですが、どの経営者も「腰を据えて」「腹をくくって」「我慢をして」という類いの表現をされていたのが印象的でした。
特にピアズさんは創業12年のスタートアップ企業であり、設立3年目に「経営品質に取り組もう」と社内に宣言、展開したときに「当時11名いた社員のうち8名が退職してしまった」という壊滅的な状況に陥ってしまったそうですが、それでも「創業時の志」にこだわって、目先の売上・利益に流されないようにあらがってきたという壮絶なご経験をお話しされていました。
従業員にとって、幸せな会社づくり
もう一つは、やはり「働きがい」というキーワードです。
日本全薬工業・高野社長は「全社員がとことん考え、行動する企業風土に」とおっしゃっていました。カワムラモータース・河村社長は「社長の、そして社員の“自己変革”のために経営品質がある」と表現されていました。
ピアズ・桑野社長は「“働きやすさ”よりも“働きがい・やりがい”でモチベーションを高める」し、そのために「無意味な常識に囚われず“意味のある非常識”を追求し価値のある社会活動を行う」という考えに基づいて、あらゆることに挑戦している、としていました。
また、過去の受賞企業も登壇されたわけですが、
第62回 改めて考える「経営者としての考え方・従業員の働き方・生き方」(ERPナビ)
こちらでもご紹介させていただいた西精工・西社長も「従業員満足から従業員幸福への価値の進化」の取り組みと成果を熱く話していました。
関西を中心に「ワンカルビ」「きんのぶた」といった外食を展開しているワン・ダイニング・高橋社長も「人材育成」を「非効率の追求」と定義し「アルバイトからの正社員登用率55.9%」という驚異的な実績を紹介されていました。これは、アルバイトの学生の「満足度」が高くなければ、到底実現できる数字ではないように思います。
当たり前のことを当たり前にする
「経営品質」の概念では、ある意味、「当たり前」のことを言っていると思いますが、「当たり前のことを当たり前にする・できるようになる」ということは、実は本当に大変なことなのだとあらためて感じさせられました。
ネッツトヨタ南国・横田取締役相談役は「当たり前のことに当たり前でない情熱を傾ける」という表現をされますが、そのことを含めて、3名の経営者の方は「トップのぶれない姿勢」という表現でおっしゃっていたことも共通点の一つとして、最後に挙げさせていただきます。
その原点はピアズ・桑野社長がおっしゃっていた「曇天の上の蒼天の空を信じてきた」に集約されているのかもしれません。
私たち自身も、あらためて自分の「信じる力」を振り返ってみてはいかがでしょうか。
今後とも、よろしくお願いいたします。
次回は4月19日(水)更新予定です。
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