第2回 思いこみのチカラ

「これが理想であることはわかっているけれど、現実にはそんなことは不可能だ」と自分に言い続けていたら、何も起こせはしないでしょう。
信じていないもののために努力することはできないのです。
強烈な願望を描き、心からその実現を信じることが、困難な状況を打開し、ものごとを成就させるのです。(稲盛和夫「成功への情熱」より)

稲盛和夫ともあろう人が、そんな、非科学的な、、、と言うつもりは毛頭ない。

「人がリアルに思い描くことは必ず実現する」

この現象、日常生活の中で既に体験されている方も多いのではないだろうか。
かくいう私も幾度となく実際に経験し「思い込みのチカラ」が持つ威力に驚愕した一人である。
決していいことばかりではない。失敗の原因(足かせ)となったこともある。
今回は、この「思い込みのチカラ」と、それがもたらす「効果」「危険性」について、出来るだけ科学的に考察してみたい。

焼けた鉄の箸の熱さを知った赤ん坊に、冷たい火箸を押し付けると泣き出す。
押し付けた箇所が水膨れのようになってしまった事例もある、とのこと。これは、超常現象でも心霊現象でもない、実在する話である。

科学的に説明すると、人間の体は、傷を負うと血液が固まってかさぶたになり、その治癒の手助けをする。
やけどの跡のように見えた外傷は、「やけどを負った」という強い思い込みによって、身体が防衛反応をおこして、血液凝固等の状態を引き起こした結果らしい。
つまり「やけど」ではなく「人体の自己防衛反応」。思い込みによって引き出された結果が「実際にやけどを負った」と歪んで脳に伝わっているというメカニズムなのだそうだ。

この「歪んで脳に伝わる」という部分。言葉は悪いが、脳に一瞬「勘違いさせる」ことによって、体内の全細胞を自己防衛体制に向けて総動員させていく、という人体に組み込まれた素敵なプログラムを、うまくビジネスに活用できないものだろうか?

ビジネスに限らず、ヒトとして生活していれば、成功する時もあれば、失敗する時もある。
成功した時、失敗した時のイメージを出来るだけリアルに脳に刻み込んでおくことによって成功イメージ、失敗イメージをいつでも取り出せるようにしておく。
ポータブルなAV機器の機能説明みたいだが(笑)いつでもどこでも再生可能な状態にしておく。

同時に、成功した時はこうだった。失敗した時はこうだったと、いくつかの事象を結びつけてイメージしておく。そうすると、その(関連する)事象が出てきたら、即座に、脳が成功イメージを再生し、全身の細胞を、成功に向けた「自己防衛体制」確立に向けて勝手に総動員させる。

稲盛氏の言葉を借りると「困難な状況を打開し、ものごとを成就させる」ということが、なんと、実際にできてしまうのだ。
その為には、脳内エンドロフィンを発生させなければいけない、とか、ドーパミンやPEA等ホルモンの分泌を高めることが不可欠である、とか、専門的なご指摘があるかもしれないが、そういったホルモンの分泌を喚起させること自体が、実現イメージに対する強い思い込みによる脳の勘違いがもたらす結果に違いない。と、私は思いこんでいる(笑)

事例を紹介しよう。
バランススコアカードという業績評価の概念がある。財務的指標中心の業績管理手法の欠点を補うものであり、戦略・ビジョンを四つの視点(財務、顧客、業務プロセス、人材と変革)で分類し、その企業が持つ戦略やビジョンと連鎖された財務的指標、および非財務的指標を持つことが前提となる概念である。

可視化経営コンサルティング(株式会社NIコンサルティング Webサイト)

ここでいう連鎖に相当するのが、日課(KPI)とゴール(KGI)との「因果関係」。
「○○がこれだけできたら(KPI)必ず○○ができるはず(KGI)」という関連付けである。

うちの会社では、何年も前から、この概念を、実際の業績評価と連動させて活用している。実際にやってみて、これを成功させるカギとなったのが「思いこみのチカラ」、すなはち、いったん定義した因果関係に対する絶対的な信頼と強烈な思い込み。
強烈な、という部分がポイントで、それは「○○がこれだけできたら必ず○○ができるはず」などという生易しいものではなく「○○がこれだけできたら、絶対○○になるに違いない!」と、それこそ、火箸の熱さを知った赤ん坊のように、ひたすら純粋に。ひたすら直
線的に、強く強く思いこむことによって、すべてのパーツがゴールの実現に向けて有機的に連動し、ものの見事に、成功した。

思い込みの強い人は、”視野が狭い””近視眼的”あるいは”妄想壁がある”などと揶揄されることが多い。距離を置いて冷静に判断することがクールである。という論調の方が今日的であるのかもしれない。確かに、思い込みの強さは、時に、思考を中断させ、行動を硬直させる要因にもなる。しかし、全てとは言わない。たまには、何か一つ、できれば、期限を切って、取り組んでみるのもよいのではないだろうか。

成功のイメージを、来る日も来る日も、何度も何度も、可能な限り、リアルに思い描く。そのイメージに関連する事象(成功のシナリオ)との関係を強烈にイメージし、必ず実現する。と強く思いこむことによって、描いたイメージを描いたイメージ通りに実現させる。

稲盛和夫氏だけではない。ウォルト・ディズニーが、スティーブ・ジョブズが、その重要性を言葉として後世に残した「思いこみのチカラ」決して軽んじてはいけない、と思うのだ。

次回は2月10日更新予定です。

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この記事の著者

株式会社NIコンサルティング ビジネス企画推進部 部長

古川 豊

慶応義塾大学理工学部卒業後、専門商社のSI部門でシステムエンジニアとして、数々の基幹システム構築/運用に関わる。2000年よりパートナー営業として国内初の国産企業ポータルパッケージ拡販に従事。2005年NIコンサルティング入社。中堅・中小企業の営業改革・IT導入に携わるとともに、パートナー企業とのお互いの強みを活かした数々の「価値協創ビジネスモデル」を構築。今日に至る。石川県白山市出身。
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