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第8回 その道具は本当に合っていますか【2】
何を、どの様に作り上げているの? 製造業の特性を考える その1
前回のコラムでは、製造業において「生産管理システムを導入しているけど、うまく活用できていない」と多くのお客様からお聞きする状況を記載しました。
なぜ「活用できていない」のかを考える上で、その前に置かれている「製造業における生産管理システム」の部分について考えたいと思います。
そもそも、「製造業」は裾野の広い多様性のある業種であり、一括りで纏められるほど単純ではありません。「製造業の生産管理システム」と括って表現するのは、「スポーツの道具」と表現しているぐらいアバウトな表現だと思います。
スポーツって何?野球それともサッカー?
そして道具は何の目的で使うの?攻撃?守備?走る?投げる?蹴る?
そうです、スポーツによって使う道具はみんな違いますよね。同様に「製造業の生産管理システム」といっても簡単に一括りにできるほど単純ではないのです。
そんな製造業が活用するべき道具を考える上で、「スポーツって何?」のスポーツの部分、製造業のさまざまな種別・特性について、今回から何回かにわたり皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
簡単に切り分けできるほど単純ではないと思いますが、整理していく上で下図(図1)の様なポイントをおいて、一緒に整理していきたいと考えます。
図1
とある辞書で「製造業」を調べると、「原料に手を加え、品物をつくり上げる産業」とあります。このままでは「スポーツ」と表現しているのと変わりません。そこで、(図1)の一つ目、何をどの様に作り上げるの?の部分を、あえて「組立業」と「加工業」に分類して考えてみました。
「品物」が企業における「商品」である場合、工業的な表現ではこの「商品」は製品(=完成品)であることが一般的であると考えます。
この「商品」を製造し完成させ、世の中に販売している企業は、基本的にメーカーと呼ばれる企業にあたります。世の中にはこのメーカーと呼ばれる企業がさまざま存在し、私達の生活の中にその「商品」を供給することで、現在の消費社会を支えている構造になっています。
このさまざまなメーカーには、自動車メーカーや家電メーカー、機械メーカー、はたまた、毎日の皆さんの生活に直結する、食品メーカーや日用品メーカー等が存在します。
特に自動車メーカー、家電メーカー、機械メーカー等の企業においては、それぞれがメーカーグループとして、さまざまなサプライヤー企業とBtoBのアウトバウンドサプライチェーンをおこなうことにより、製品を完成させています。すなわち、製品を組立ている、完成品組立業です。
これらの完成品メーカーが製品を完成させるために、1製品に必要となる構成部品は想像以上に多くあります。製品を完成(=組立)するのに最も煩雑かつ重要な要素となるのは、組立てるための「物を集める」ことになってきます。
各メーカーはその物集めのために、アウトバウンドサプライチェーンを活用し、例えば自動車産業に存在する納入指示“かんばん”等を用いて、必要な時に、必要な物が揃うようにおこなう生産管理が重要になってきます。
では、その各メーカーに部品を供給するサプライヤー企業はどうでしょうか?
メーカーグループの構造は、「商品」である製品を完成させるメーカーと、その部品を供給するサプライヤーで構成されています。
この階層は単純ではなく、さまざまな末端部品に至るまで深く複雑な階層を持ち、完成品メーカーを頂上にして、裾野の広いピラミッド構造を構成しています。
この中でも、完成品メーカーのすぐ下に位置するグループ企業は、完成製品に使われるユニット完成品を製造していることが多く、生産管理の特性的には、完成品メーカー同様「組立業」の管理を必要とする企業に当たることが一般的です。
それでは、そのグループ階層において裾野の方に目を向けて行くとどうでしょう。ある階層レベルから製造の特性が変わってきます。どの様に変わってくるかと言うと、完成品メーカーに対して、一つ一つの「加工部品」を製造して納める、「加工業」になってきます。
この完成品メーカーに納入される「加工部品」は、メーカーにおける製造「商品」とは異なり、物を集めて「組立」をするのではなく、原料を投入して形をかえる=「加工」する製造形態となります。
極端な例ですと、原料は一つ、その原料にさまざまな「加工」をおこない、必要な機能を持つ形に完成させる製造形態です。
この「加工」を完成に向けおこなっていく、複数の加工レベルを持つ製造業を「加工業」と呼び、この複数のレベルを「加工工程」と呼びます。
加工業においては、原料の手配も重要ですが、それよりも煩雑かつ重要な管理の要素は、形を変え完成されていく上で存在するレベルである「加工工程」の管理になります。
つまり、完成品メーカーの納入指示要求に間に合うように、必要な物を、必要な時に納入できるよう、いつどの様に「加工」して作るか、という「加工工程」の管理が最も重要になってきます。
単純な特性比較ではありますが、このように「組立業」と「加工業」では管理の特性も違ってきます。これは、製造業において「何を管理する」ために、どのような「道具」が必要かを考える上で、最も重要なポイントの一つであることは、間違いありません。
ちなみに、食品メーカー、日用品メーカーにおいては、その「商品」の完成に向け、一社の中に「加工工程」を持ち、完成品へと「加工」されている企業が多く、特性として「加工業」の形態色が強い企業が多いと言えるのではないかと考えます。
皆さん、バットやグローブ持ってサッカーをやらないように、必要な「道具」を考えるため、次回以降も製造業の特性について一緒に考えていきましょう。
次回は12月17日(木)更新予定です。
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