第10回 その道具は本当に合っていますか【4】

どれだけまとめて作るの? 製造業の特性を考える その3

前回は、「どれだけまとめて作るの?(繰返性)」のテーマで、製造業の特性を個別性と繰返性の側面から一緒に考えてみました。今回のテーマは、「どこまで作っておくの?(製造のタイミング)」です。

さて、前回考えたことは、入口(契約・受注)が個別要素であるからといって、ものづくりがすべて個別管理されているわけではなく、製造業の管理のプロセスの中に取りまとめる(≠個別)要素がさまざまに存在している状況についてです。

この要素は、管理もしくは管理するうえでの道具選びに、非常に重要なポイントとなると考えます。
それは、「個別管理の必要性」と「個別管理(串刺し)の弊害(=まとめない管理)」の側面です。
得てして、入口となる営業部門や出荷部門の方には、「わたしの分」という個別管理要求が存在します。
しかし、製造部門においては、「あなたの分」では管理されていない事実が存在します。
では、製造部門の生産管理において重要なポイントは何か? その整理・判断が道具の選定を左右します。
生産管理において管理するポイントは、あくまで「ものづくり」です。
さて、何を管理できる道具が皆さんの工場には必要でしょうか?

前回のまとめはこれくらいにして、なぜ前回の復習のようなことから書かせていただいたかというと、実は今回の内容が一見して同じような要素だからです。
なので、前回のポイントを整理し、今回の「似て非なるポイント」を一緒に考えていきます。

「受注生産」と「見込生産」という切り分け

下図(図1)の三つ目のポイントとして、「受注生産」と「見込生産」とに分類して考えてみたいと思います。

そこで、今回、テーマをあえて、「どこまで作っておくの?(製造のタイミング)」としての側面からにしてみます。

ここで「受注生産」という表現について少し考えてみたいと思います。
そもそも、製造業のお客様に「受注生産ですか?」とお聞きすれば、ほとんどのお客様が「受注生産ですよ」とお答えになります。
そうですよね。受注(契約)が入らない物を作る製造業はいないと思いますので、広義としての製造は基本的に「受注生産」です。

では、ものづくりの現場においてはいかがでしょうか?

皆さんは受注(契約)でものづくりしていますか?

さて、製造業のさまざまなものづくりに携わる部署で業務をおこなっている皆さん。
皆さんは、受注(契約)で、ものづくり(購買、生産)をしていますか?

受注(契約)の数量や納期を見て、その内容でものづくり(購買・生産)をされている部署の方がいる場合には、生産管理の観点で、「受注生産」されていると思います。
では、そうではない場合、どうやって物をつくっている(部品を調達している)のでしょうか?

よくお聞きするお話には、見込みでものをつくって(部品を調達して)いるというものがあります。「見込生産」や「計画生産」と表現されるものかと考えます。
このような状況をさらに詳しく聞いていくと、前回のテーマにおける、まとめてつくる(部品を調達)という繰返性を背景にした状況のみではなく、受注(契約)が入る前に、受注(契約)には関連せず、あらかじめ生産(購買)している状況があるようです。

多種多様である製造業においては、この状況がさまざまの形態で存在していると思いますが、主に以下の四つが考えられます。

【1】製品の状態まであらかじめつくっておいて、受注(契約)で引き当てて出荷する。

【2】最終の製品は、受注(契約)が入ってから製造するが、その前の段階まではあらかじめつくってあるものを引き当てて製造する。

この形態は、規格仕様のある商品を顧客ニーズに合わせて受注する受注形態、BTO(Build to Order)をおこなっているメーカーにあたると考えます。

【3】受注(契約)の納期に制約があり、納期に間に合うためにあらかじめ見込みでつくって(部品を調達して)いるものを持ち、納期に間に合うように製造する。

この形態は昨今のさまざまな商流において、もしかしたら最も多い状況ではないでしょうか。
納入先である完成品メーカーや販売流通業からの納入要求が、短納期の納入指示対応となっている状況(納入要求<リードタイム)は、皆さんも周知のことと考えます。
その場合、製造業においては、納入指示に間に合うようにあらかじめ準備をしておく=見込みでつくって(部品を調達して)おく必要があります。

【4】自社の内部にさまざまな制約があり、受注(契約)とは別に計画的につくって(部品を調達して)いるものが存在し、その状況を組み合わせて(SCMして)製造をする。

この形態は、特に機械を使い、さまざまな加工をおこなっている部品加工業において、もはや宿命ともいえる状況ではないかと考えます。
機械や加工の制約により、その加工工程ごとにそれぞれ計画的な製造をされ、それをインバウンドSCMにおいてつなげることで完成までを管理している、ある意味もっとも煩雑な生産管理の形態といえるものです。
また、受注(契約)を元に「受注生産」をしている製造業においても、購買の制約条件によって買って持っている状況は、受注(契約)とは別に存在しているのではないでしょうか?

前述のとおり、前回のテーマである「どれだけまとめて作るの?(繰返性)」と一見すると同じような要素に感じますが、あえて今回テーマに上げたいのは、やはり「どこまで作っておくの?(製造のタイミング)」です。
この要素が完成に近いほど、生産管理における「見込性」が高く、また煩雑につながり、組み合わさっているほど「計画性」が要求される要素になると考えます。
生産管理に必要な「道具」を検討するうえで、この要素はやはり重要なポイントになります。

「在庫管理」という視点

製造業の特性を皆さんといろいろな側面で考えてきました。
この整理の中で見えてくる存在こそ、皆さんよくご存知の「在庫」です。
この「在庫」は、「繰返性」「見込性」の要素から考えると、当然使われるために存在するもの。いかにこの「在庫」を必要な時に、必要な量を使うかを管理することが、生産管理です。
生産管理が「在庫管理」とよくいわれる所以でもあると考えます。
もし、使うためではなく存在する(たとえば余っている)「在庫」があるとすれば、その「在庫」こそ、製造業でよく表現される「在庫」=「罪庫」になっているのではないでしょうか?

この「在庫」が、製造業のさまざまな特性の中で、使うために管理・コントロールされていることが、「在庫管理」=「生産管理」であると考えます。

私は、よくお客様の運用のご支援をさせていただいている時に、こんなお話をします。
皆さん、よく経営者からこんな声を聞きませんか?
「必要なものを、必要なだけ買って、必要なだけつくれ」
「効率よくつくれ、稼働率をあげろ」
矛盾しているようで、両方とも正解ではないでしょうか?
単純に全体を串刺して考えたら、この声は非常に難しく不可能な要求のように聞こえます。
でも皆さん、多種多様な製造業において生産管理をおこなうということは、両方の声の狭間で、いかに特性を理解して、バランスよく管理をすることではないでしょうか?
そのバランスの中に「在庫」が存在し、必要な「道具」を選定する重要なポイントになっていると考えます。

次回は、もう一つ別の側面から、製造業の特性を一緒に整理してみたいと思っています。
「在庫管理」=「生産管理」に活用する「道具」に必要なポイント何か?
次回も一緒に考えてみましょう。

次回は2月25日(木)更新予定です。

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