第12回 その道具は本当に合っていますか【6】

目的である業務改善に活用できていますか?

数回にわたり、皆さんと製造業の特性について一緒に整理をしてきました。
「その道具は本当に合っていますか?」というテーマで、皆さんが現在お使いの道具としての生産管理システムについて振り返ってみましたが、いかがだったでしょうか?
自社の業務特性に合った道具を選定し、活用できていそうでしょうか?

この章の最後に、生産管理システムを業務で使用する、最も原点となる部分にポイントを置いて整理したいと思います。

そもそも、生産管理システムをなぜ導入するのでしょうか?
実際、生産管理そのものは、システムがあるから実施するのではなく、製造業にとって収益改善を「目的」としておこなわれる計画業務であると考えます。
すなわち、物の買い方・作り方を計画(予定)することにより、収益向上を図る行為ということです。生産管理システムは、その生産管理をおこない、より収益改善を向上させるための業務改善の「道具」です。
そして、生産管理システムを活用しておこなわれる業務改善は、「目的はなんだったっけ?」の章で整理してきた、業務の「見える化」・「一元管理」だと考えます。

業務改善として進める「ムダとり」

では、「見える化」と「一元管理」を確立して、業務改善ができる道具とはどのようなものでしょう。

道具、すなわちシステムが得意とすることは、「計算」すること・「整理」すること・「選別」することです。これは、人間が最も不得手とする部分と考えます。
皆さんが日ごろ業務を行っている中で散見され、業務改善されるべきポイントも、この部分ではないでしょうか。

生産管理業務を担当されているお客様の例を挙げてみます。
製造部門の生産計画・指示をおこなう業務です。
お話をお聞きすると、毎日の業務は以下のような状況になっていました。

【1】前日の製造部門の日報を確認して、遅れ進み・歩留りを自分のExcelに修正
【2】営業部門の受注状況(出荷進捗含む)を確認して、自分のExcelに修正
【3】購買部門の入荷状況を確認し、自分のExcelに修正
【4】現場の在庫状況を確認し、自分のExcelと比較し、修正
【5】その間に発生する当日の問合せと変動要素に対応し、自分のExcelに修正
【6】夕方(残業時間)になり、自分のExcelを確認し、イレギュラー状況をチェック
【7】自分のExcelに計画追加・立案し、新規・追加の生産指示をおこなう(かなりエイ・ヤー)

そして、また同じ明日がやってくる。
毎日毎日夜遅くまで忙しいのに、一向に収益性は改善しない。
このお客様に限らず、同じような状況をよくお見かけします。

さて、【1】~【7】の中で、生産管理と呼べる部分はいくつありますでしょうか?
答は【7】一つです。
それも、この【7】は、「物の買い方・作り方を計画(予定)することにより、収益向上を図る」という真の目的を実行する為に、いろいろな買い方・作り方を検討・比較し、より収益性の高い判断をおこなう行為であり、ある意味さまざまな計画立案をシミュレーションすることが必要だと考えます。
しかし、上記のお客様においては、この計画立案・指示は、「(かなりエイ・ヤー)」と表現させていただいたように、遅くまで残業している中で時間に追われた、単純作業的な計画立案になっています。

ここに関する問題点は、「自分のExcel」を利用して行うデータの分散管理にあります。
この分散管理が、【1】~【6】の行為を生んでいます。
そして、この【1】~【6】までの内、【1】~【5】は「計算」と「整理」、【6】は「選別」という、人間の最も不得手な行為に費やしていると言えます。

生産管理業務において、道具を活用して業務改善を行ううえでは、この【1】~【6】の「ムダ」を取り、【7】の「必要な手間」に変換(=リストラ)していくことが重要です。
この「ムダとり」をおこない、「必要な手間」にリストラしていく中で、整理してきた製造業のさまざまな特性と道具の特性を理解して、道具を選択することが必要となります。
その道具を使うことで「ムダとり」を行い、「見える化」・「一元管理」を確立して分散管理をなくすことが、生産管理システムを活用する業務改善です。

「ムダとり」をする道具は、その業務の特性によりそれぞれ違ってくることは、これまでのコラムの中で、ご理解いただけると思います。

皆さんがお使いの道具は、業務改善の目標・業務の特性に照らして、本当に合っているでしょうか?

正しい仕事の「シェア」

「その道具は本当に合っていますか?」をテーマに、製造業の特性や「ムダとり」について整理をしてきました。

最後に、「ムダとり」をおこなううえで、最も必要となる点を整理したいと考えます。
それは、正しい仕事の「シェア」です。
たとえ道具が業務改善の目標・業務の特性に合致しているとしても、道具は道具です。
そうです。道具は「使い方」に、その本質があります。

システムは、「計算」、「整理」、「選別」を得手としています。
きちんとしたルール(マスター)が設定されている前提において、
「計算」:人間は間違えますが、システムは間違えません。
「整理」:人間がおこなうと非常に時間がかかりますが、システムは一瞬で整理します。
「選別」:人間は見落とし・見間違いを起こしますが、システムは正確に選別します。

前述のお客様のように、人間の不得手な行為を、システムと正しく役割分担(=「シェア」)することが必要不可欠です。もう一つは、「見える化」・「一元管理」を進めるうえで、業務をおこなうメンバーとの役割分担(シェア)です。

私はよく、お客様をご支援する中で「1 write(ワンライト)」という表現を使います。
システムを活用するということは、同じことを分散・転記(2度書き)せず、正しい役割分担のもとに一番早く、一番正確に報告できるメンバーが「1 write(ワンライト)」をおこない、「計算」、「整理」、「選別」をシステムに「シェア」して、「見える化」と「一元管理」を確立し、情報活用するところから業務を「シェア」しあえる環境を業務改善して確立することだと考えています。
この正しい仕事の「シェア」が確立されることで、「ムダとり」がされ、本来の目的である収益改善に向けた「必要な手間」をかけられる業務改善としてのリストラが達成されます。

「今の業務をシステムに乗せる」、「システムに合わせて業務をおこなう」等の言葉をよくお聞きします。
生産管理システムを活用する、すなわち、正しい仕事の「シェア」をおこなうことは、そんなに単純なことではありません。

この正しい仕事の「シェア」を確立するための、システムの運用・稼働に向けた取り組みについて、次回以降、皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。

次回は4月21日(木)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ

須永 浩昌

制御技術系の製造業に入社し、技術設計・営業・製造(生産管理)に携わる。その後、生産管理システム系のソリューションベンダーに転籍。主に繰り返し型の加工業に特化した生産管理システムの開発・営業・支援に携わる。数多くの企業と共に生産管理システムによる業務改善・稼働実績を持ち、現在でも生産管理パートナーの創造に取り組んでいる。

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