第5回 目的はなんだったっけ【4】

システムを動かすことが目的になっていませんか?

何度かにわたり、お客様が生産管理システムをご導入・立ち上げをされるうえで、目的の重要性をお話ししてきました。
きっと大半の方々から、「そんなことは言われなくてもわかっているよ」とのお言葉が聞こえてきそうです。そう、皆さんは企業の活動として、企業の一員として、企業の目的に対して生産管理システムを導入・立ち上げするプロジェクトの活動をされているわけですから、そんなこと言われなくても当たり前ですよね。私が皆さんにお話しするのは釈迦に説法なのかもしれません。

きっと、そのプロジェクト活動の目的は十分に理解されているはず。
それなのに、なぜか多くのお客様で、掲げられた目標に対して生産管理システムが満足に稼働されていない現実が存在します。これは、生産管理システムの導入・立ち上げをお手伝いしている私が覚える違和感です。ご一緒させていただいていると、理解されているはずの目的と実際の活動におけるギャップが存在しているのではないかと感じるのです。
もしかして、日常業務の中でプロジェクト活動をされているうちに、目的が他のものとすり替わっていませんか?

そもそも、さまざまな表現で掲げられ、こだわるべき生産管理システムを活用する目的ですが、企業の目的ですので総じて勝つこと=収益改善が継続的におこなわれることが求められると思います。そしてシステムを活用しておこなわれる活動の目標は、日常業務において情報の「見える化」、一元管理の確立により達成されるべき、ムダとり=業務改善であるはず。

それなのに、お手伝いをしているとよくあるこんな状況。
「システムを動かすことが目的になってしまっていませんか?」

活動の目標は、あくまでも企業が目的として掲げる勝つこと=収益を上げることに向けて、情報を活用できること、業務改善できるようにシステムを日常的に活用できることです。
だからこそ、目標に向けてシステムを活用するための日常的活動・意識が重要になります。

私はお客様とご一緒していて、よくこんなお話をさせていただくことがあります。
「キャッチボールすることが目標になってしまっていませんか?」

実際、そのお客様でシステムは稼働しています。
生産管理のシステムにおいては、受注・出荷・売上、発注・受入・仕入、生産指示・実績(日報)と言われるさまざまな日常の入力活動をされています。つまり、日常の中でシステムを運用している稼働ユーザー様にあたります。

でも、運用状況を確認していくと、実は在庫の精度が悪く、生産計画に情報活用ができていない。
よって、生産計画はシステム外でExcel管理(分散管理)になってしまっているとのこと。
この他にも、さまざまな集計をシステム内の情報とは別にExcel集計(分散管理)し、外部システムに対する情報も、生産管理システムの情報ではなく、伝票を集計(分散管理)して入力しています。あれ? これはシステムが稼働していると言えるでしょうか? そもそも日常でシステムを入力・運用する目的はなんでしたっけ?

「見える化」をすることで、一元管理をして、ムダを取り、業務改善をして、一元管理情報を企業目的に向けて活用することが、日常の運用目標・活動目標ではなかったでしょうか?

スポーツにおいて、試合に勝つためにおこなわれる日常のトレーニングを見ていてよく思うことがあります。
チームの目的は勝つこと、一番を目指すこと。
一昔前に「一番じゃなければいけないのですか? 二番ではダメですか?」といった流行の言葉がありましたが、結果として一番を取るのは一人(チームスポーツであれば一チーム、企業では一企業)なのかもしれません。でも、目的は一番になること=勝つこと、勝ち続けることに他なりません。勝つチーム・結果を出すチームと、結果を出せないチームには、日常活動=トレーニングにおいて大きな差があるように感じます。
そもそも、トレーニングとそれに向かう意識・モチベーションに最も重要なものが「目的」であることは明確だと思います。そう、勝つためにトレーニングしているのです。勝ちにこだわるチームのトレーニングは、常に試合のため(勝つため)のトレーニングになっていると思います。野球のキャッチボールや、サッカーのパス練習や鳥カゴ。やっていることは同じでも、勝ちにこだわるチームは練習に対する意識に明確な違いを感じます。

勝ちにこだわるチームのトレーニングは、どんな厳しい相手と試合になっても、イレギュラーなことがおこっても、常にいつものトレーニングでおこなっていることが、平準的にできるように、ミスをしない、そんなトレーニングです。だから、キャッチボール一つをとっても、常に強く・正確なキャッチボールを繰り返します。
トレーニングにおいてキャッチボールをすることは、その行為自体が目的なのではなく、繰り返しおこなうことで正確な送球・キャッチがミスなく試合でできることが目的なのです。

結果の出せないチームの練習は、トレーニングにおいて日々繰り返しキャッチボールをすることが目的となっているように思います。そのようなチームのキャッチボールは、いつまでたっても正確性(精度)を欠き、いつも後逸したり、隣とクロスしたり、届かなかったり……あれ? なんでキャッチボールしているんだっけ? サッカーのパス練習も同じで、強く、早く、そして正確なパスをしない。だから、受ける側のトラップの練習にもならない。ミスをしても補正されないから、一向に平常精度がアップしないばかりか、そのいい加減さがそのまま試合で出て、そのミスから失点、敗退する結末に。これは本末転倒では?
試合で頑張っても、常にトレーニングでできている以上のことはできません。
偶然と奇跡でたまたま勝てることはあっても、常に勝つ、勝ち続けることはできません。ミラクル任せは、プロのスポーツチーム(企業)とは言えません。

「キャッチボールすることが目的になってしまっていませんか?」

そう、日々システムを運用される中で、入力すること、運用することが活動目標になっていないかを、常にお客様と共に、一緒にお手伝いする中で考えていきたいと思っています。
我々お手伝いする側においても、システムを動かしていただくことが目的ではないからです。

試合に勝つ(収益改善できる)、トレーニング(システム運用)を常にお客様と一緒に模索していきたいと考えております。
何のために、どんなキャッチボールをするかを一緒に考えていきましょう。

次回は9月17日(木)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 本部SI統括部 製造SPグループ

須永 浩昌

制御技術系の製造業に入社し、技術設計・営業・製造(生産管理)に携わる。その後、生産管理システム系のソリューションベンダーに転籍。主に繰り返し型の加工業に特化した生産管理システムの開発・営業・支援に携わる。数多くの企業と共に生産管理システムによる業務改善・稼働実績を持ち、現在でも生産管理パートナーの創造に取り組んでいる。

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