第8回 “求められる能力”の水準が上がる時代~AIという補助輪の価値とは?~
『中小企業白書2025』では、企業が求める人材像の変化が明確に示されています。現代では、課題発見力、ITリテラシー、コミュニケーション力、改善提案力、マルチタスク対応など、より広く深いスキルが“標準”として求められるようになっています。
“求められる能力”の水準が上がる時代~AIという補助輪の価値とは?~
「求められる能力」が、昔より高くなっている!?
『中小企業白書2025』では、企業が求める人材像の変化が明確に示されています。かつては、定型業務やマニュアルどおりの作業をこなすことが「求められる能力」でした。産業革命の時代までさかのぼって想像してみると、企業において求められる人材とは、「時間を守る」「決められた時間作業に従事する」「指示されたことをしっかり守る」といった存在だったはずです。
しかし現代では、課題発見力、ITリテラシー、コミュニケーション力、改善提案力、マルチタスク対応など、より広く深いスキルが“標準”として求められるようになっています。
現場で働く中で、私自身も「昔なら十分だったことが、今では“足りない”とされる」場面に直面した経験があります(年功序列が崩れていく背景にもつながっているように感じます)。
自立性と問題解決力が求められる時代
言われたことをこなすだけではなく、自分で考え、動く力が重視されるようになっています。「指示待ち」ではなく、「提案できる人」「改善できる人」が評価される時代です。これは企業にとっては成長のチャンスですが、現場ではプレッシャーにもなり得ます。実際、「そういったことが得意な人」と「そういったことが苦手な人」の“差”が広がっていると感じることがあります。
本来もっと大切にされるべき誠実さや人間性といった側面よりも、「○○ができる」といったスキル面が重視される場面が増えているように思います。
AIは“差”を埋めるツールになり得る
私は、AIはこの“差”を埋めるための味方になれるツールだと感じています。例えば、ChatGPTのような生成AIは、文章作成、情報整理、アイデア出しなど、業務のあらゆる場面でサポートしてくれます。分析結果のレポート作成まで担ってくれるほど、生成AIの発達は目覚ましいものがあります。これは、自分で走らなくても長距離を移動できる「車」のような存在です。
レポート作成が苦手でも、スピーチが苦手でも、そういった苦手な部分をAIが担ってくれることで、「いい仕事」が埋もれてしまう事態を防いでくれます。AIを使うことで、苦手な業務もこなせるようになり、得意な人との差を縮めることができる。
つまり、AIは“能力の補助輪”として機能するのです。
AIに対する抵抗感を乗り越える価値がある
もちろん、AIに対して抵抗を感じる人もいると思います。
- 使い方が分からない
- 間違った情報が出てきそう(実際に出てきます!)
- なんとなく怖い(私も怖いです!)
- 情報が流出しそう
こうした不安は自然なものです。しかし、現場で使ってみると「こんなに助かるのか」と驚くことも多いです。
最近では、セキュリティ対策が施されたツールや、オンプレミスで使用できるAIエンジンの提供も始まっています。「AIをオンプレミスで構築」と聞くと、10年前なら億単位の投資が必要でしたが、今では中小企業向けサービスの開発も進み、1,000万円程度で実現可能となっています。
AIは、従業員の業務遂行能力を引き上げる重要なツールです。使わないのはもったいない。
最後に
“普通の能力”の水準が上がる時代に、AIはそのハードルを下げてくれる存在です。『中小企業白書2025』が示すように企業の成長には人材の力が欠かせません。その力を引き出すためにAIという補助輪を使うことは、決して逃げではなく、前向きな選択だと私は思います。
担当者のつぶやき
AIが支えてくれるからこそ、できることがある
- 私はExcelのマクロを組むことができません
- 統計検定を持っておらず、専門的な勉強もしていません
- 文章を書くことが大の苦手です
- Web運用の担当者ですが、HTMLの記述ができません
ちょっと大げさかもしれませんが、実際にできないことだらけです。けれど、今ではAIが全部支援してくれます。マクロも組みますし、データ分析、レポート作成、HTMLの記述まで行います。
時間を費やしてスキルを身につけた方から見れば、不快感を覚える方もいるかもしれません。ただ、組織として遂行できる業務の幅が増えることは、とても面白いことだと思います。
……でも、学生の宿題をAIで処理するのは反対です。
自分は使うのに子供には使わせない――これは難しい問題ですね……。