第170回 医療DXと医療AI その11~医薬品、新薬開発~

前回のテーマが「検査」でした。今回は「医薬品」です。医薬品の開発費用は数千億円に及ぶこともあります。開発費用が高額になる理由は、非常に手間がかかることにあります。新薬の開発は病気の原因に効く化合物を見つけることから始まります。このような影響もあり、年々医薬品の価格が高騰しています。

医療DXと医療AI その11~医薬品、新薬開発~

前回のテーマが「検査」でしたので、今回は「医薬品」です。医薬品の開発費用は数千億円に及ぶこともあります。開発費用が高額になる理由は、非常に手間がかかることにあります。新薬の開発は病気の原因に効く化合物を見つけることから始まります。アマゾンの奥地の植物や土壌、深海水などから抽出したり、次に化合物と病気の組み合わせを探したりしていきます。このような影響もあり、年々医薬品の価格が高騰しています。

医薬品が製品化する確率は極めて低い

日本では、国民皆保険制度や高額療養費制度のおかげで、患者自身の負担額は自身の生活ができなくなるほどの金額ではありませんが、それでも高額な医薬品が続々出てきています。そもそも、その高額な開発コストを投資して医薬品の製品化に至るかといったら、全くそのような保証はありません。むしろ、コストをかけても製品化できなかったものの方が多いのではないでしょうか。無数の失敗がほとんどの世界です。

医薬品開発に要する期間と成功確率

出典:「医薬品産業ビジョン2021資料編」(厚生労働省・PDF)

AIを活用した新薬開発で効率化を図る

そこで、AIを使った新薬開発が行われています。これを「AI創薬」といいます。産業技術総合研究所によると、「AI創薬とは、AI(人工知能)を用いて新しい医薬品の開発を効率化し、加速させることです。AIは膨大な量のデータを処理することを得意としており、疾患治療のための標的探索や、医薬品の候補となる分子の探索・デザイン、その分子の体内での効果や安定性の予測などを行うことができると期待されています」と定義されています。

AIによる新薬開発を少し解説すると、最初に人間の体内に存在する無数のタンパク質を検証することから始めます。病気の原因物質を特定するのです。しかもAIによる作業ですので、非常に短時間で特定してくれます。次に(特定した)原因物質に結合する可能性がある化合物を絞り込み、可能性のない化合物を排除します。この作業は効率をよくするために必要なステップです。このステップもAIが自動で行います。
ここまででも大きく開発時間もコストも削減されています。そして、いよいよ臨床試験にパスした新薬を国に承認申請を提出するのですが、さまざまな角度の膨大な資料を添付して申請する必要があります。この場面でもAIが資料作成を補完してくれます。

AI創薬によって3割以上のコスト軽減が確認されたという報告もあります。ある製薬会社は、AIを用いることにより一部の工程ではあるものの、ほぼ半分に短縮したと明らかにしています。

AI創薬にはまだ解決すべき課題もある

新薬開発までの時間の短縮やコスト削減の結果、救われる命が増え、患者の自己負担も高額にならないことになります。医薬品の価格が下がれば発展途上国などの患者にも販売しやすくなります。さらに製薬会社は利益確保ができたおかげで余力が出て、例えば希少疾患の新薬開発に着手する可能性も出てきます。

ただし、AI創薬にも課題はあります。一般的にいわれているのが、個人情報保護の問題です。AI創薬のためには、大量のデータをAIに学習させなければなりません。医療データは個人情報保護法の中でもセンシティブ情報と位置付けられ、特に取り扱いに注意しなければならない情報です。現在は、匿名化した医療情報の医療ビッグデータの活用が行われています。さらに人材の課題もあります。AI創薬には、AIと医薬品開発との両方の知識が必要です。この両方の分野に精通した人材が非常に少ないため、このような人材育成にも力を注いでいく必要があります。

皆さんはどう思いますか?

次回は3月11日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
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