第168回 医療DXと医療AI その9~介護~
「介護保険制度」は2000年4月に施行され、25年を超えました。介護職員の人手不足は深刻な問題で、その対応策として要介護、要支援の状態になるべくならないように「介護予防」を行っていくことと、それに加えて、介護については「地域包括ケアシステム」と連動することを考えなければなりません。
医療DXと医療AI その9~介護~
「介護保険制度」は2000年4月に施行され、25年を超えました。2000年の要介護、要支援者の数は218万人でしたが、2024年度は717万人となり3倍強の人数となっています。また介護職員の人手不足も深刻な問題で、2025年には約43万人、2035年には約79万人の介護人出不足が見込まれています。
人手不足の対応策として要介護、要支援の状態になるべくならないように、なるとしてもなるべく先延ばしになるように「介護予防」を行います。加えて、介護については、「地域包括ケアシステム」と連動することを考えなければなりません。

介護周辺の分野との情報共有による医療と介護との連携、介護施設同士の連携、薬剤師などとの地域連携が重要です。このような連携の強化によってシームレスなサービスの提供が実現し、介護サービスの利用者のみならず、介護にかかわる家族や介護に携わる全ての人のQOL(生活の質)の向上が可能になります。
介護の世界の具体的なDX、AIの活用例
1. 介護ロボット
入浴介助や、利用者の移乗などの力仕事を代替してくれます。ロボットには介護者自身の力をサポートするタイプと、利用者を持ち上げて移動させるタイプがあります。
2. 見守り
居室内での活動状況を感知し、動いていない、いつもより活動量が少ないなどの情報を介護者に通知します。この通知を受けて、介護者は訪室し、安否確認などを行います。活動量の計測は、カメラによる見守りもありますが、介護ベッドのIoT化、電灯へセンサーを設置するなど、さまざまな方法が開発されています。
3. 介護関係事務作業支援
介護は非常に事務作業が多いです。その事務作業をAIなどに代替させます。介護プランの作成などは意外に作成時間がかかるものですから、代替により、作成時間が大幅に短縮可能になります。
4. 排せつ介助
介護の中でも排せつ介助は心理的にも身体的にも非常に負担が大きい作業です。この心理的負担は介護者だけではなく、被介護者である利用者も「恥ずかしい」と感じる人が多く、強く機械化が待たれる領域でもありました。現在では、排尿のタイミングを予測するデバイスが開発されています。尿意の鈍い利用者や排尿トラブルが多くなってきた利用者などに(泌尿器系の疾患を持つ高齢者以外にも利用可能)装着してもらいます。排尿のタイミングはスマートフォンなどに通知されるため、介護者、ご家族などが利用者に排せつを促すことができます。
5. コミュニケーションロボット
介護施設などを訪問すると、しーんとしていることが多い気がします。食堂などで、多くの人が食事していても会話などはあまりせず、静かに黙々と食べている風景も見たことがあります。会話などコミュニケーションは介護予防にもつながりますので、ペットなど動物と触れ合うことなどが推奨されていますが、この動物の代わりにロボットが会話をしてくれます。人型や動物型、ぬいぐるみ型などがあります、顔認証能力もありますので、顔を覚えてくれますし、簡単な会話もできます。クイズや手足を使った体操などレクリエーションを実施する機能を持ったものもあります。国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」(AMED)によると、コミュニケーションロボットを利用した場合、被験者のほぼ3割以上にセルフケア能力や運動能力の機能改善が見られたという報告もあります。
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次回は1月14日(水)更新予定です。
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