第54回 AI業務改善を成功させる「2人のキーパーソン」――「AIに詳しい人」ではなく「AIで業務改善を進められる人」を育てる
AIを使って業務改善を進めるプロジェクトにおいて、メンバーに求めたい「業務の勘所」と「AIの勘所」とは何か。実際のプロジェクトを人材育成の場とし、「AIに詳しい人」を「AIで業務改善を進められる人」へ育て、ノウハウを社内に残す進め方を解説します。
AI業務改善を成功させる「2人のキーパーソン」――「AIに詳しい人」ではなく「AIで業務改善を進められる人」を育てる
最近、「AIを活用した業務改善」に関するコンサルティングや研修の依頼が続いています。AIを導入するだけでは、もちろん、業務改善や生産性向上の実現は難しいでしょう。「業務の棚卸し・標準化・改善」と「AIの活用」とを合わせて行う必要があります。今回のコラムでは、「AIを活用した業務改善」プロジェクトを社内で立ち上げる場合に、ぜひ参加してほしい2人の人材と、私が意識しているプロジェクトの進め方について解説します。
1人目:「業務の勘所」を知っている人
1人目は、社内の業務をよく知っている人です。ただし、特定の業務について誰よりも細かく知っているスペシャリストという意味ではありません。
「この仕事は何のために行っているのか」「どこが重要なのか」「どこで問題が起きやすいのか」「前後の業務とどうつながっているのか」といった業務の勘所が分かる人です。細かな実務については、改善対象となる各部門・各業務の担当者にサブメンバーとして必要な場面で参加してもらいます。
コアメンバーに求めたいのは、細部まで知り尽くしていることよりも、業務を俯瞰(ふかん)できることです。
2人目:「AIの勘所」を知っている人
もう1人は、業務改善にAIをどう活用できるかを考えられる人です。これもAIについて誰よりも詳しい人という意味ではありません。
AIを活用した業務改善には、大きく二つの側面があります。
一つは、業務改善を進めるプロセスにAIを使うことです。例えば、現場へのヒアリング内容を整理する、業務を分解・可視化する、問題点を洗い出す、改善案を考える。こうした場面で、AIは有力なパートナーになります。
もう一つは、改善する業務そのものにAIを適用することです。
「この確認作業にはAIが使えそうだ」「ここはAIに一次処理をさせ、人が最終判断すればよい」といった方法を考えます。一方で、「これはAIを使うより、この作業自体をなくした方がよい」と判断することも必要です。
AIありきではなく、業務改善全体の中で「どこに、どうAIを使うと効果的か」を考えられること。これが私の考える「AIの勘所」です。
「AIに詳しい人」と「AIで業務改善できる人」とは違う
社内でAIに詳しい人を探すと、IT・システム部門の人が候補になることも多いでしょう。もちろん、AI技術やシステム連携、セキュリティなどの専門知識は重要です。しかし、AIの理論や技術に詳しいことと、AIを使って業務改善を進められることとは、必ずしも同じではありません。
実際の業務にAIを適用するには、AIの知識だけでなく、業務の目的や流れを理解し、改善の視点から考える力が必要になるからです。
プロジェクトそのものを人材育成の場にする
もっとも、「AIの勘所」を持つ人が最初から社内にいるケースは、まだそれほど多くありません。しかし、プロジェクトを進めていると、そのような力を持つ人材が徐々に育っていきます。
現在進めているプロジェクトでも、AIに詳しいメンバーに現場へのヒアリングから参加してもらいました。業務を分解する。問題点を探す。業務のどこにAIを組み込むかを考えながら改善案を練る。こうした経験を重ねるにつれて、AIの活用方法を考えるだけでなく、業務の目的や流れそのものを見直す視点が身についていきます。AIの専門知識だけを学ぶのではなく、実際の業務改善に参加するからこそ身につく力です。
コンサルタントが答えを出し続けない
私が業務改善のコンサルティングで意識していることは、外部のコンサルタントとしての私が改善案を考えて提示することをできるだけ控えるということです。
プロジェクトの初期では、私が業務の棚卸しや分解の仕方、問題発見や改善の考え方を示します。そこから、社内のメンバーと一緒に考え、問いを投げかけながら、業務改善のナレッジやノウハウを少しずつ移管していきます。そして、プロジェクトが進むにつれて、私が考える割合を減らし、社内メンバーが考える割合を増やしていく、という流れです。
いわば、「伴走」から「移管」、そして「内製化」へと進めていくわけです。
よく引用される言葉に「人に魚を与えるより、魚の釣り方を教えよ」というものがあります。これは、コンサルティングや育成の場では「答えをそのまま教えるのではなく、自分で考える力を養う」と置き換えられるでしょう。
まとめ
AI業務改善のプロジェクトでは、外部のコンサルタントと、「業務の勘所」を知るメンバーと「AIの勘所」を知るメンバーとがコアとなり、必要に応じて各部門の業務担当者にサブメンバーとして加わってもらう。私は、このようなチームが理想だと考えています。
ただし、最初から全ての人材がそろっていることは、あまりありません。
特にAI人材については、実際の業務改善を経験し、業務の見方や改善手法を身につけることで、「AIに詳しい人」から「AIを使って業務改善を進められる人」へ育っていくことができます。私は、そのような人を「AI業務改善プロフェッショナル」と呼んでいます。
業務を改善すると同時に、人も育てる。
そして、外部コンサルタントがいなくなった後も、社内で次のAI業務改善を進められる人とノウハウを残す。目の前の業務を改善することに加えて、そこまでをプロジェクトの成果にしたいと考えています。
