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第15回 「働き方改革」と「業務の進め方改革」
安倍内閣が長時間労働解消などを目的に「働き方改革」を推進しています。去る2月24日にはプレミアムフライデーがスタートしました。それらが効果を生み出すには「業務の進め方改革」が必須となります。今回のコラムでは「働き方改革」と「業務の進め方改革」について考えていきます。
「働き方改革」と「業務の進め方改革」
安倍内閣が日本企業の長年の課題である長時間労働解消などを目的に「働き方改革」を推進しています。その実現には、「業務の進め方改革」つまり、当コラムで述べてきた「業務改善」が必要です。今回のコラムでは「働き方改革」と「業務の進め方改革」について考えていきます。
「働き方改革」の取り組み状況
HR総研が2016年10月に行った「『働き方改革』への取り組み実態調査」から、「働き方改革」についての企業の取り組み状況を見てみましょう。62%の企業が「取り組んでいる」と回答し、「取り組みを検討中・予定」が14%で合わせて76%、4社に3社は何らかの取り組み、もしくは取り組みの検討・予定をしています。
続いて、取り組んでいる企業の具体的なテーマを見ていきましょう。(下図を参照)
上位から、1位は「労働時間の短縮(ノー残業デー、朝型勤務、深夜残業禁止など)」で81%、2位は「休暇の取得推進(時間単位有給休暇、有給休暇取得促進、フォロー体制整備など)」で68%、3位は「育児・介護支援(休暇・休業制度の充実、取得奨励など)」で59%となっています。去る2月24日に初めて実施されたプレミアムフライデーはカテゴリーとしては「労働時間の短縮」に含まれるでしょう。
そして、52%の企業が「仕事の進め方の見直し(業務プロセス改善、ITツール導入、会議時間短縮など)」と回答しており、当コラムのメインテーマである「業務改善」に取り組んでいる企業が半数を超えています。
図:働き方改革の取り組みテーマ
出所:「働き方改革」への取り組み実態調査(注1)
では「働き方改革」を取り組んでいる企業では、効果を出せているのでしょうか。「取り組んでいる」と回答した企業の中で、11%が「大きな効果が出ている」、58%が「少し効果が出ている」と回答しています。効果の内容では「長時間労働が抑制できた」が70%ということです。
労働力が同じならば、生産性を高めなければ「働き方改革」は実現できない
このように効果を出している企業では、さまざま様々な取り組みをして業務の生産性を高めているのでしょう。労働力が変わらないとすれば、生産性を高めなければ労働時間を短縮することはできません。労働生産性を“1人あたりの付加価値”と考えればシンプルな自明のことです。ちなみに、日本の労働生産性を国際比較すると低く、OECD加盟国では35カ国中22位、主要先進7カ国では最下位となっています。*注2:「労働生産性の国際比較 2016 年版」
生産性を高めずに労働時間だけを短縮しようとすると、一時的に効果が出せたとしても必ずどこかに歪みが出ます。人手不足に悩んでいる多くの中小企業では特にそうでしょう。そして、その歪みは組織内の「弱い立場」の人に向きます。
残業が禁止されたから、サービス残業が増えてしまったというような皮肉な話を聞くこともあります。これでは本末転倒の話ですね。
御社で、「働き方改革」に取り組むならば、当コラムで述べてきた「業務改善」を粘り強く続けてください。「全社として取り組む業務改革」「部門、個人で取り組む業務改善」「労働環境の改善」「社内の風土改革」などを進めていけば、生産性は必ず上がります。
政府が進める「働き方改革」が、各企業での「業務改善(業務の進め方改革)」を促すきっかけとなり、その先にある“一億総活躍社会”が実現することを切に願います。
最後に余談です。
先日、ある知人がこんなことを言っていました。
「全社で労働時間の削減の通達があったため、わが社の改善プロジェクトはいったん停止となってしまいました」
お互いに苦笑するしかありませんでした。なかなか難しいものです。
次回は4月20日(木)更新予定です。
引用(2017年3月16日現在)
注1:
「労働生産性の国際比較 2016 年版」公益財団法人 日本生産性本部ウェブサイト;PDF[943KB]
注2:
[調査概要]
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査対象:上場および未上場企業人事責任者・担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2016年10月5日~10月20日
有効回答:252件(1001名以上:77件、301~1000名:65件、300名以下:110件)
HR総研:「働き方改革」への取り組み実態調査[1]全般