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第14回 言語化した「業務改善の目的、意義」をメンバーに注入する方法とは
前回は、業務改善の目的をリーダーが「自らの言葉」に言語化するプロセスを解説しました。今回は、その言葉をメンバーに伝える3つのポイントを説明します。正しく伝えることで、メンバーの業務改善への「モチベーション」を高めることができます。
言語化した「業務改善の目的、意義」をメンバーに注入する方法とは
前回のコラムでは、業務改善の目的や意義をリーダーが言語化するプロセスを解説しました。メンバーの本気度、モチベーションを高めるには、一般論や借り物の言葉ではない「自らの言葉」を生み出すことが必要なのです。
言語化した後、それをメンバーに正しく伝えなければなりません。伝え方の適否、巧拙が、業務改善の成否を大きく左右すると言っても過言ではありません。
単なる周知、伝達、連絡のように伝えるだけでは、右の耳から左の耳へ抜けて、心にも響かず頭にも残りません。正しく伝えることで、メンバーの「本気度」、「モチベーション」を高めることができるのです。
「言葉」を伝える3つのポイント
業務改善の目的、意義を伝える際のポイントは1「タイミング」、2「フェイストゥーフェイス」、3「しつこさ」の3つです。
1.タイミング(最初が肝心)
言葉を伝えるコミュニケーションはタイミングが大切ですが、特に「最初」が肝心です。「業務改善活動スタート時」、「プロジェクトのキックオフミーティング」、「研修の冒頭」など、アクションやイベントの最初に「目的、意義」を共有し、モチベーションを高め、ベクトルを合わせます。
途中での「マンネリ」、「停滞」が発生した時や、小さな成功が現れた時も、タイミングよく言葉を伝えることが大切です。
2.フェイストゥーフェイス
全体の会議やミーティング、朝礼、日々の職場など、できるだけフェイストゥーフェイスで言葉を伝える機会を増やします。フェイストゥーフェイスのコミュニケーションは、伝えるだけでなく双方向のコミュニケーションになります。受け手の表情や反応などを見れば、どれだけ理解し納得できているか、やる気を持てているかを感じることができます。また、メンバーの意見、質問などは軌道修正が必要な場合の重要な情報となります。
3.しつこさ
言葉はしつこく、繰り返して発信し続けます。業務改善には推進を阻み、停滞を生む場面が何度も出てきます。1で述べた「最初のタイミング」で高めたモチベーションを維持、向上させるために、しつこく発信し続けます。
上記2の「フェイストゥーフェイス」に加えて、メール、資料の配布、掲示物などさまざまな媒体、手段を使って伝えていきます。最近、再び発行する企業が増えてきている「社内報」も良いツールかもしれません。
(事例) 研修冒頭で経営トップが「業務改善の目的」を伝える大きな効果
私は業務改善の研修をお手伝いする際、研修の冒頭で責任者の方に「目的、背景、意義」などを語ってもらうことにしています。改善の目的を「リーダーの言葉」で伝える絶好の機会であるとともに、研修効果を大きく高めることができるからです。
今回のコラムでは、あるコールセンターのスーパーバイザー15名を対象とした「業務改善スキル研修」(全4回)の1回目のプログラムを例に紹介します。
研修の前に、社長が「今のタイミングで業務改善を行う目的、背景」、「本日の研修の位置づけ」、「受講者に学んでほしいこと」、「皆に期待すること」を経営トップとして自らの言葉で語られました。社長の“本気”のメッセージが冒頭にあると、受講者の意識、態度が変わり、研修効果が高まります。
受講者が積極的に参加した研修が夕方まで続きました。
研修の最後は、受講者15名が一人ひとり「研修受講の感想」を述べた後、「学んだことを活かして明日から何をするか」を宣誓します。
最後に、コールセンター長(担当役員)が、部門責任者の立場で、業務改善の「目的、意義」、「我々が行うべきこと」、「みんなに期待すること」を述べられました。研修スタートと時期を同じくし発足した「改善プロジェクト」の役割とメンバーについても説明し、プロジェクトへの全面協力を要請されました。
(事例)M社コールセンターの業務改善研修(全4回)初日のプログラム
- 社長からのメッセージ
- 「今、全社で業務改善に取り組む目的、背景」
「当研修で社員(メンバーに)習得して欲しいこと」、「研修後に実践して欲しい」 - 研修(午前)
1.業務改善の基本
- 業務改善とは
- 業務改善の視点
- 業務改善の手順
2.問題点の洗い出し
- 問題と現象の違い
- 問題点を洗い出す支店
レクチャーと個人ワーク、ペアワーク
- 昼食
- 研修(午後)
3.業務改善の手法
4.個人の業務改善と。組織的業務改善
レクチャーとグループワーク
5.質疑応答とまとめ
- 各受講者から
- 「研修の感想」、「明日からの宣誓」2分×15人
- コールセンター長からのメッセージ
- 業務改善の「目的、意義」、「我々が行うべきこと」、「みんなに期待すること」
- 事務局より事務連絡
- 事後課題提出の説明と、次回研修への事務連絡
「社長のメッセージ」→「研修」→「メンバーの感想、宣誓」→「コールセンター長のメッセージ」とストーリーとして流れた研修となりました。社長、部門責任者(コールセンター長)、事務局(人事部)、講師の四者が十分に協議し、企画を練った成果だと思います。
おわりに
上記の事例で紹介した企業の社長は研修冒頭で語ることを「入魂」と言いました。言語化した「業務改善の目的、意義」という“魂”をメンバーに“注入”するという意味で、まさに相応しい表現ではないでしょうか。
次回は3月16日(木)更新予定です。
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