第13回 改善の目的・ゴールは言語化されているか?

前回のコラムで述べたように、改善には「本気度」が必要です。メンバーの本気度・モチベーションを高めるのは、リーダーの言葉です。一般論や借り物の言葉ではない「自らの言葉」として改善の目的・意義を言語化するプロセスを解説します。

改善の目的・ゴールは言語化されているか?

前回のコラム(第12回 業務改善の成否は当事者の「本気度」「熱量」が決める)で、業務改善が順調に進まない大きな理由の一つは、当事者の「本気度」が低いことだ、と書きました。「本気度」は言い換えれば「モチベーション」であり、それが業務改善へのコミットメントを生みます。

モチベーションの源泉はさまざまあるでしょうが、業務改善において重要なのは「目的・意義の理解」です。理解と言っても、「頭」で理解するだけではなく、「腑に落ちる」「腹落ちする」ような理解と言えるでしょう。そのために、リーダー(管理者、ときには、経営トップ)は一般論や借り物の言葉ではなく、自らの言葉を持たなければなりません。

今回は、「業務改善の目的・意義」を言語化するプロセスを解説していきます。

「業務改善の目的・意義」最初は誰もが漠然としている……

私は月に何回か、「(間接部門の)業務改善」の相談やお問い合わせをいただきます。

相談や問い合わせの時点では、改善の必要性を漠然と感じながらも、「改善の目的」「現状の問題」「改善の進め方」などを具体的にイメージされている方は多くありません。 

お会いして最初に、業務改善に取り組もうとされた「きっかけ」や「背景」をじっくりと聞きます。
きっかけは、業種や職種ごとにさまざまですが、以下のようなものに集約されます。

  • 「ポカミス」「クレーム」「トラブル」が一向に減らない
  • 残業時間が多い。残業が多い人と少ない人が固定化している
  • 人が定着しない
  • 上司、社長から業務改善をやれ! と指示された(←実はこれが結構多いです)

その後も、あまり口をはさまず、「聞く」「聴く」ことを続けます。部門や社内の問題、悩み、時にはグチのようなものがいろいろと出てきます。しかし、この時点でも「改善の目的」「真の問題点」はあまり具体的になってはいません。

徐々に明確になっていくプロセス

途中から「訊く」ことを加えながら会話を進めます。私の意見や経験してきた事例を交えながらディスカッションをしていきます。成功事例ばかりではありませんが、さまざまな業種・業態・部門の事例を紹介していきながら話を進めます。
事例を聞き、思わず「それそれ! 当社も全く同じ状況です」とおっしゃる方もいます。

ディスカッションを進めていると、少しずつ問題点が明らかになってきます。課題が明確になり、考えられる幾つかの打ち手が浮かび上がってきます。

私が業務改善のフリーディスカッションをするとき、以下のようなシートを使うことがあります。
業務改善の構造を簡単に示したものです。

業務改善で求める「成果」は何なのか、そのためには「思考」「スキル」「モチベーション」の何を高めるべきか、を考えていきます。話を進めていくと、漠然としていたことが少しずつ具体的になっていきます。
モヤモヤとした悩みが少しずつ晴れてきたのか、表情も明るくスッキリとされてくることが多いです。業務改善の目的、意義が少し言語化されてきたと言えます。

コンサルタントとして嬉しい瞬間の一つです。

言語化プロセスが改善活動の成否を決め、リーダー自身の「本気度」を高める

業務改善の企画・推進をリードする方が、一人だけで考えて、言語化することは容易ではありません。
部下・同僚・経営トップと意見交換をしたり、時にはコンサルタントをディスカッション・パートナーとして使ったりして、ブレインストーミング(注)をするように発散的に話し合った後に整理していくと良いでしょう。

このプロセスをきちんと踏むことで、業務改善の「言語化」が進みますし、その後の改善活動がスムーズになります。そして、リーダー自身の「本気度」「熱量」を強化するのです。
モチベーションの高いメンバーは、業務改善の目的・意義を理解しているだけでなく、納得しているのです。

人事部の業務改善を言語化する例を示します。今回解説したプロセスやシートとあわせて社内でディスカッションする際の参考にしていただけたら幸いです。

【ご参考】業務改善を言語化した例

  1. 目的
    煩雑な「手続きルーティン業務」「手配、調整業務」「トラブル、ミス対応」を減らし、「人事の戦略業務」の比率を高める。
    (今後、当部で取り組む戦略業務)「新卒・中途採用力の強化」「教育研修制度の見直し」
  2. 現状の問題点
    「部内の役割分担の錯綜」「仕事の属人化、ブラックボックス化」
  3. 改善のゴール
    部内業務の棚卸しと可視化(2カ月)→その後、半年かけて業務改善を実施
  4. 部署メンバーに期待すること
    ・業務改善が今年度の最重要課題であることを認識すること
    ・「改善」自体が、業務の一部であることを理解すること
    ・研修や社内勉強会を通じて、業務改善のスキルを習得すること
    ・強い当事者意識で業務の改善を行うとともに、改善プロジェクトチームに積極的な協力をすること

(注)ブレインストーミング(Brainstorming)法…集団でアイデアを出し合うことによって相互交錯の連鎖反応や発想の誘発を期待する技法

次回は3月2日(木)更新予定です。

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この記事の著者

ワークデザイン研究所/石山社会保険労務管理事務所

太期 健三郎

ワークデザイン研究所 代表
石山社会保険労務管理事務所 パートナー・コンサルタント

経営コンサルタント。
管理間接部門の業務改善、HRM(人材マネジメント)の二本の専門領域を持つことを強みとする。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)、株式会社ミスミ、株式会社グロービスに勤務後、2008年にワークデザイン研究所を設立。
MURCでは人事コンサルティング、ミスミではコールセンターの業務改善を行った後、三枝匡社長(当時)の直轄タスクフォースで営業改革を推進する。グロービスではコンプライアンスおよびリスクマネジメントを統括、推進。
また、2013年~2015年にはクライアント企業の食品メーカーの内部改革者として人事部長・経営改革室長を兼務する。
「患者様の声をよく聴き、丁寧に診断・治療する“中小企業のかかりつけ医”」を信条としている。
ワークデザイン研究所
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