第16回 ミスの再発防止から始める業務改善! ~ミスを無くせば、業務コストは1割減る~

業務改善というと、「たいへんそうだ!」「何から始めればよいか分からない」と思われる方もいらっしゃるでしょう。そんなときは、仕事の「ミス削減」から取り組まれてはいかがでしょう。実は管理部門の仕事のうち10~15%はミスのやり直し、後始末だと言われています。ミスを減らせば生産性はグンと高まります。

ミスの再発防止から始める業務改善! ~ミスを無くせば、業務コストは1割減る~

業務改善というと、「業務の棚卸し」「標準化」「マニュアル作成」……と手間がかかり大変そうだと思う方も多いでしょう。実際、本腰を入れて組織的に取り組むならば、時間も労力もかかる難事業です。また、何から改善を始めれば良いか分からないという方もいらっしゃると思います。

そのような方々には、「業務ミスの削減」から始めてみることをお勧めします。

「間違え」「ミス」について少し考えてみましょう。

「鉛筆で紙に字を書く」という作業を思い浮かべてください。

普通に書けば、(1)「書く」の1工程で終わりです。しかし、間違えてしまったら、(1)「書く」→(2)「消しゴムで消す」→(3)「書く」の3工程となります。工程が2つ増えて、鉛筆の芯と消しゴムが余分に消費されます。鉛筆ではなくペンならば、紙を一枚余計に使うことになります。

「ケーキを焼く」という仕事ではミスの影響はさらに甚大です。

「廃棄する工程」「容器・調理器具を洗う工程」「作り直す工程」が発生し、小麦粉、卵、砂糖、バターなどの材料が無駄になります。

「間違える」「ミスをする」ことは、「やらなくていい無駄な仕事」を新たに発生させることなのです。一つの仕事の処理時間を長くするのではなく、何の付加価値も生まない余計な仕事を、わざわざ作っているのです。

改善には、品質、スピード、効率の向上、コスト削減などさまざまな目的、ゴールがあります。

「ミスを無くす」ことは改善のゴールが極めて明瞭です。冒頭の例で言えば「間違えずに文字を書く」、ただそれだけです。

それに比べて、「きれいに書く」(品質、出来栄え)、「速く書く」(スピード)、「楽に書く」(効率)というゴールはどうでしょう? どこまでのレベルを追い求めるのか判断基準があいまいです。

仕事の10~15%は「ミスのやり直し」「後始末」

ご自分の仕事、部署内での仕事のミスを思い浮かべてください。どれだけ余計な仕事を生んでいるでしょう。

コピーミス、帳票の書き損じ、メールの誤送信、配布資料の間違え、会議ダブルブッキング……、等々。どれも正しく行えば一度で済むことですが、間違えれば余計な手間がかかります。

実は、管理部門の仕事の中の10~15%くらいは、本来はやる必要のない「ミスのやり直し」「後始末」と言われています。

業務改善の手始めに「業務ミスの再発防止」に取り組まれてみてはいかがでしょう。

一つ注意すべき、ミス防止は、「仕組み」を作り、「実行」するということです。「次回から注意します」「チェックを徹底します!」というのは、仕組みではありません。それでは絶対にミスは繰り返されます。

業務ミス再発防止は、以下のプロセスで考えると良いでしょう。

  1. 業務ミスの洗い出し
  2. 改善(再発防止策立案)の優先順位付け
  3. 「改善が容易」で「改善効果が大きいor現れやすい」業務から実施

優先順位付けは、「ミスによる影響度」「ミスの発生頻度」「改善の難易度≒改善に要するコスト」などを軸にしたマトリックスに業務をプロットして考えます。(下図は「ミスによる影響度」と「改善の難易度」の二軸によるマトリックス表)

4月は給与計算ミスに要注意!

さて、新年度がスタートしました。新入社員を迎え、定期異動が行われる時期です。4月は年度が替わり給与計算ミスが発生しやすいタイミングでもあります。異動、身上異動などさまざまな「変化」への対応がモレてしまうことがあるからです。

例を挙げれば、定期異動による勤務地、居住地、通勤経路、手当などの変更。扶養家族の異動(配偶者の就業開始・終了、子女の入学・卒業・独立など)、産休・育休からの復帰などです。

容易な業務改善でコツをつかんだ後、ぜひ、給与計算ミスの防止に取り組んでみてください。

最後に、業務ミス削減の効能をもう一つ。

業務ミスを減らすと、自己嫌悪の情や上司からの叱責が無くなり、ストレスが軽減されます。精神衛生上良いのです。その結果、他の仕事の生産性を高めることにもつながるでしょう。

次回は5月11日(木)更新予定です。

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この記事の著者

ワークデザイン研究所/石山社会保険労務管理事務所

太期 健三郎

ワークデザイン研究所 代表
石山社会保険労務管理事務所 パートナー・コンサルタント

経営コンサルタント。
管理間接部門の業務改善、HRM(人材マネジメント)の二本の専門領域を持つことを強みとする。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング(MURC)、株式会社ミスミ、株式会社グロービスに勤務後、2008年にワークデザイン研究所を設立。
MURCでは人事コンサルティング、ミスミではコールセンターの業務改善を行った後、三枝匡社長(当時)の直轄タスクフォースで営業改革を推進する。グロービスではコンプライアンスおよびリスクマネジメントを統括、推進。
また、2013年~2015年にはクライアント企業の食品メーカーの内部改革者として人事部長・経営改革室長を兼務する。
「患者様の声をよく聴き、丁寧に診断・治療する“中小企業のかかりつけ医”」を信条としている。
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